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Ajax採用グループウェアを半年で仕上げる

中国オフショア開発、勝ち組の証言(前編)

2007年04月13日 22時00分更新

文● 松本佳代子

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 世界が“フラット化”する中、欧米のIT企業ではソフトウェア開発を中国やインドなど人件費の安い国にアウトソーシングする“オフショア開発”(offshore development)が当たり前になっている。

 もちろん日本でもここ数年、コスト面などのメリットに魅力を感じて、IT企業がオフショア開発に踏み切るという例が数多くあった。しかしその一方で、日本では企業の大小を問わず失敗、撤退したという話も絶えず、「やはりオフショア開発は困難」というイメージを持っている業界関係者も多い。

 そんな逆風が吹く中、比較的新しいウェブ技術“Ajax”(エイジャックス)を利用したグループウェアを、初めてのオフショア開発で成功させたという例が出てきた。企業の名前は、北海道の札幌に本社を構える(株)アジェンダ。オフショア開発したグループウェアの『GRESSO』(グレッソ)は、5月に発売される予定だ。一般的にオフショア開発を苦手とする日本企業が、初めてでも成功できた理由はどこにあるのだろうか。同社を取材し、3回にわたってその秘訣を探った。



Ajax採用の『GRESSO』とは?


GRESSO

“GRESSO”のメイン画面

 アジェンダは、年賀状作成ソフト『宛名職人』や家計簿ソフト『ミラクル家計簿』などで知られるソフトメーカーだ。社内には、コンシューマ、トラベルシステム、コンテンツ、法人・自治体といった4つの事業部を持っている。

 このうちコンシューマ事業部では先の『宛名職人』などを手掛けていたが、すでに成熟期を過ぎたと言われるコンシューマソフトだけでは、今後の成長が難しくなっていた。そこで社内では、数年前からビジネス向けなど、別の分野に活路を求めることを迫られていたのだ。

 『GRESSO』はその中で構想された、中小企業がターゲットのグループウェアになる。ソフトはウェブブラウザー上で動作し、部署やプロジェクトメンバーで予定表、資料、意見などといったデータを共有したり、電子会議や書類の回覧、会議室などの予約をパソコンで行なえるようになる。

 一見、ほかのグループウェアと同じにも思えるが、一番の違いは、“Google Maps”などで知られる“Ajax”(非同期なJavaScriptとXML)を利用したということ。これによりウェブブラウザーベースのソフトでありながら、デスクトップアプリケーションのような操作性を実現した。

 例えば、あるプロジェクトの会議をしたいときに、メンバーと会議室の予定表から自動的に空き時間を検索し、会議の設定を行なうことができる。あらゆる業界で合理化の進められる中、このソフトで時間を有効活用できるシーンも多いだろう。



3K職場で慢性の人手不足


 アジェンダがこの『GRESSO』を開発するにあたって大きな課題になったのが、今ある開発ラインでは人手が足りないということ。

 アジェンダにオフショア開発を導入するきっかけを作ったトラベルシステム開発部の千葉均氏によれば、現在、実は日本のIT業界は“人手不足”に陥っているという。

 日本ではIT企業は“3K職場”(キツい、厳しい、帰れない)と言われていて、人口の多い東京でもあまり人手が集まりません。地方都市の札幌ではなおさら難しく、われわれが新卒で採用したいと思った学生も、大手や金融系のメーカーに行ってしまう。


 最近では景気も戻ってきて仕事の話も聞くのですが、技術者がいなくて受注できないという状況が何年か続いていました。そんなとき、別の仕事で一緒になった(株)ビジネス・インフィニティの越川社長が中国に行くというので、私もついていきました。それが昨年1月です(千葉氏)。

 ビジネス・インフィニティは、(株)NTTデータを中心に、マイクロソフト(株)、コンパックコンピュータ(株)(現日本ヒューレット・パッカード(株))の3社が共同出資で設立した企業だ。主にe-コマース製品の開発と販売を手掛けており、約4年前から中国のオフショア開発を行なっていた。

 アジェンダの千葉氏は、ビジネス・インフィニティの代表取締役社長、越川修氏と一緒に上海や大連のIT企業を視察し、レベルとポテンシャルの高さを間近に見て、ソフトの開発を間違いなくできると確信したという。

アジェンダ千葉氏

アジェンダの千葉均氏


(次ページに続く)

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