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音楽配信のDRMはもともと意味がない

2007年04月04日 17時00分更新

文● 広田稔(編集部)

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左が米アップルのスティーブ・ジョブズCEO、右が英EMIグループのエリック・ニコルCEO。英EMIグループ公式の記者会見画像から

 英EMIグループは2日、DRM(デジタル著作権管理)なしのコンテンツ配信を5月に始めると発表した(参考記事)。

 EMIグループと資本関係にある東芝EMIは、CCCD(コピーコントロールCD)を強力に推進していた企業として知られるが、今回の方針転換の裏にはどんな事情があったのだろうか? 音楽配信に詳しいジャーナリスト、津田大介氏に話を伺った。


 オンライン配信において「DRMフリーが一番良い選択である」ということについては、僕自身昔から言っていたことであるし、個人的には「遅すぎる」という印象がある。


 音楽CDは、長らくコピープロテクトをかけていない状態だった。しかし、デジタルプレーヤーの普及以降、レコード会社はCCCDをリリースする方向に転換した。


 問題はCCCDの“鍵”がろくなものでなかったところにあるのだが、それでもレコード会社はそのままの仕様で強引に売ろうとしたのだ。その結果はどうだったか。消費者の反発を受け、期待していた“売上増”の効果も残せずに、結局“鍵なし”の状態に戻ってしまった。


 CCCDは本来は存在しなかったレコード会社と消費者に大きな溝を作ることになり、さらに不幸なこととしてアーティストとファンの間にも軋轢を生んだ。アーティストは完全に巻き込まれただけであり、そこには、自分たちの経営力のなさを消費者とアーティストに一方的に押しつけるという自分勝手な構造があった。


 CCCDは誰も幸せにしなかった時代の徒花である。“必要悪”ですらなかったのだ。今更CCCDを世界的に広めた張本人であるEMIグループが“DRMフリー配信”と言ったところで、個人的には空しさしか感じない。


 今回、DRMフリー化に至ったひとつの理由には、音楽CDでコピープロテクトをかけていないコンテンツが大量に出回っているのだから、オンライン配信のコンテンツにだけプロテクトをかけてもあまり意味がないという判断がなされたということがあるのだろう。


 もうひとつ、オンライン配信の成長を妨げたくないという狙いもあると思われる。IFPI(国際レコード産業連盟)が今年に出したレポートでも、オンライン配信が成長しているという報告がある。 DRMのフリー化で、この勢いをより加速させる意図があるのかもしれない。


 とはいえ、音楽配信にとって大きな一歩であることは事実だ。DRMフリーがオンライン音楽、そして音楽業界全体に対してどのような結果をもたらすのか、今後の展開に注目したい。



東芝EMIのDRMフリー対応は「検討中」


 ちなみに今回の英EMIグループの発表では、日本国内でDRMフリーのサービスが始まるかどうかについては言及されていない。東芝EMIによれば、「発表を受けて、日本における対応を検討しているところ」という。

NW-E002
AACの再生をサポートするソニー(株)のメモリー型オーディオプレーヤー『NW-E002』

 今回、コンテンツからプロテクトが外れたことで、さまざまな人がその恩恵を受けるだろう。今までiTunes Storeで購入したAACファイルはiPodでしか再生できなかったが、DRMフリー後は、AACをサポートするソニーなどのプレーヤーでも扱えるだろう。また、メーカー側にも制作の手間とコストを削減するメリットをもたらす。

 アップルのスティーブ・ジョブズCEOが、「4大レーベルが承諾するなら、iTunes StoreでDRMなしの音楽だけを売るのに」と提言したのは今年の2月だった(参考記事)。それからおよそ2ヵ月経って、4大レーベルのひとつであるEMIがユーザー側に歩みよるという“大英断”を下したわけだ。

 ユーザーや企業自身のためにも、ユニバーサルミュージック、ソニーBMG、ワーナーといった他の3社も追従し、日本の音楽業界もこの世界的な流れに乗ることを願うばかりだ。



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