フィードパス株式会社は、2月7日、Webメールを基盤とした企業向けのコラボレーションツール「feedpath Zebra」を発表した。米ジンブラの「Zimbra Collaboration Suite」をベースにしたもので、フィードパスは中堅中小企業向けにSaaSモデルで提供する(既報=関連記事)。 Ajaxやマッシュアップを取り込んだ「次世代のグループウェア」といわれるZimbraを、フィードパスが投入した狙いは何か。フィードパス取締役CTOの後藤康成氏と事業推進本部の葛山哲司氏に詳しく聞いた。
「光っていたテクノロジーベンチャー」ジンブラ社との出会い
――まず今回、フィードパス株式会社(以下、フィードパス社)が「feedpath Zebra」のリリースに至った経緯を教えてください。
葛山哲司氏(以下、葛山氏):住友商事の中に、米国のベンチャー企業への投資とその商権を日本で展開するビジネスに取り組んでいるセクションがあります。もともと私はそこに在籍していて、2005年の夏に米国のベンチャーキャピタリストを通して米ジンブラ社と知り合い、興味を持ちました。その後、日本でのマーケティングを進めるにあたって、切り口としてはグループウェアの市場を狙っていけると考え、日本でのリーディングカンパニーとしてサイボウズを思い浮かべました。
実は以前から、サイボウズグループと住友商事グループは資本関係があり、コンタクトが取りやすかったんですね。そこで昨年の2月ごろ、Zimbraの取り扱いについて相談したところ、サイボウズグループでWeb2.0系のサービスを手がけるフィードパス社を紹介してもらいました。その後、とんとん拍子でローカライズへと進み、今回のリリースに漕ぎ着けた――というのが大まかな流れです。
――フィードパス社としては、設立当初はこの製品を取り扱う予定ではなかった?
後藤康成氏(以下、後藤氏):企業向けのブログツール「ブログエンジン」を手がける旧ブログエンジンと個人向けネットサービス「feedpath.jp」を手がけるサイボウズのネット事業が一緒になってフィードパス社が誕生したのが昨年の4月です。少なくとも当時の事業計画には、Zebraの名前は入っていませんでした。ただ、ベースとなるZimbra自体は僕も以前から知っていましたし、日本での展開には興味を持っていました。
――Zimbraに興味を持たれたポイントは何でしょうか。
後藤氏:最初にZimbraを知ったのは2005年の10月ごろだったと思いますが、当初からZimbraは非常に光って見えた。“Web2.0”という考え方が日本に浸透してくる中で、まさにキーワードの渦中にいた米国のテクノロジーベンチャーがジンブラ社だったんです。中でもメールソリューションというところが一番大きな目を惹いた点でした。
というのは、ご存知のようにWebメーラはこれまでにも星の数ほどあったんですが、実際に使ってみるとほとんど使いものにならない。クライアントアプリ、たとえばOutlookなどと比べると圧倒的に操作性が悪いし、少なくともビジネスで積極的に使っていく気にはならなかったわけです。 ところが、Zimbraのデモを見ると、いわゆるWebメーラなのにクライアントアプリと同等の操作性を実現している。技術的にも“Ajax”(Asynchronous JavaScript + XML)を使っていたり、“マッシュアップ”という考え方を取り込んでいたりして、1人のエンジニアとして非常に興味が湧きましたね。
そこまでは純粋にエンジニアとしての興味だったわけですけど、実際にビジネスとして関わることになって話を聞くと、彼らがZimbraを実際に商売にしている現実を目の当たりにしました。そして、日本でも積極的に取り組むことを決めたのです。
葛山氏:Zimbraのビジネスモデルも斬新だと感じましたね。オープンソースという切り口をビジネスに取り込み、マーケティングの手段としてうまく使っている。また、サブスクリプションモデルをもポイントです。一般的なソフトは1ライセンスの売り切りで終わりですが、Zimbraは年間1アカウントあたりの課金形態をとっています。
オープンソースをマーケティング手法として使っていて、かつサブスクリプションモデル。そして、企業向けのWeb2.0であること。この3つは、当時のアメリカのベンチャー投資の世界では注目のキーワードだったんです。
――製品そのものが魅力的であり、ビジネスモデルもユニークだったと。
葛山氏:ええ。そして実際に成功しているというのが大きいですね。今でもそうですが、Web2.0ではコンシューマ向けで実績を上げている会社はありますが、企業向けではなかなか成功者がいない。ジンブラ社はアメリカでの数少ない成功した企業だといっていいと思います。