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アート/エンターテインメント/アニメ/マンガの代表作が“写美”に集結!

“時かけ”全編が見られる 第10回文化庁メディア芸術祭開催!

2007年02月26日 20時52分更新

文● 千葉英寿

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東京・恵比寿のウェスティンホテル東京で23日、文化庁と(財)画像情報教育振興協会(CG-ARTS協会)が主催する“第10回文化庁メディア芸術祭”の受賞作品贈呈式と祝賀会が開催された。10周年となった今年は、祝賀会に安倍晋三内閣総理大臣が姿を見せた。また、翌24日には、同時開催となるCG-ARTS協会主催の“第12回学生CGコンテスト”の受賞作品贈呈式が行なわれた。今月24日から3月4日までの10日間、同じく恵比寿ガーデンプレイス内の東京都写真美術館において作品を展示する“第10回文化庁メディア芸術祭受賞作品展”が行なわれている。展示会の期間中は、連日上映会やシンポジウム、イベントなども開催され、日本発のアート表現であるメディア芸術の面白さと多様さを実感できる。

池坊保子文部科学副大臣

池坊保子文部科学副大臣は、衆議院議員で華道池坊流家元四十五世池坊専永氏夫人でもある

受賞作品贈呈式には文部科学副大臣の池坊保子(いけのぼうやすこ)氏、文化庁長官の近藤信司氏ら政府関係者、ならびにCG-ARTS協会理事長の永田圭司氏、東京大学大学院教授の浜野保樹を始めとする運営委員/審査委員が列席し、各分野の関係者が一堂に会する中で開催された。贈賞はアート部門/エンターテインメント部門/アニメーション部門/マンガ部門の順に行なわれ、賞はそれぞれ池坊氏より手渡された。また、各部門の主査である、アートディレクターの浅葉克己氏(アート)、ゲームプロデューサーの石原恒和氏(エンターテインメント)、アニメーション監督の富野由悠季氏(アニメーション)、マンガ家のモンキー・パンチ氏(マンガ)から副賞が手渡され、それぞれの大賞受賞者がコメントした。

受賞作品は以下の通り(敬称略)。

【アート部門】

大賞
イマジナリー・ナンバーズ2006(木本圭子)
優秀賞
×マン vibration(岡本高幸)
OLE Coordinate System(藤木 淳)
front(ヨハンナ・ライヒ(Johanna Reich))
MediaFlies(ダニエル・ビシグ(Daniel Bisig))
奨励賞
Sagrada Familia計画(林 俊作)
木本圭子氏

木本圭子氏は「これから科学の側から創り出されるアート表現がどんどん出てくると思います。ぜひ、注目していてください」とコメント

“イマジナリー・ナンバーズ2006”(インスタレーション)・木本圭子(日本) (C)Keiko Kimoto 非線形数理モデルをベースにプログラムされた有機的、生物的ダイナミクスをテーマとした作品。コンピューターテクノロジーと作者のアーティストとしての視線が見事に融合した大変興味深い作品。メディア芸術祭ならでは、と言える受賞だろう


【エンターテインメント部門】

大賞
大神(神谷英樹)
優秀賞
リズム天国(大澤和義)
しゃべる! DSお料理ナビ(土山芳紀)
CORNELIUS“Fit Song”(辻川幸一郎)
日本再発見マップ(入道隆行)
奨励賞
雨刀(勝本雄一朗)
神谷英樹氏

神谷英樹氏は「今回、展示で映像の一部をご覧になれますが、ゲームは触ってナンボのものだと思います。ぜひ、手にして遊んでみてください」とコメントした

“大神”(ゲーム)・神谷英樹(日本) (C) CloverStudio Co., Ltd. 2006 All Rights Reserved. DISTRIBUTED BY CAPCOM CO., LTD. 日本の神話世界をゲームに取り込んだ作品。エンターテインメント性の高さ、グラフィック表現の美しさと独創性がプレイヤーを強く惹き付ける。制作チームのクローバースタジオはすでに解散してしまったが、各クリエイターの今後の仕事が楽しみだ


【アニメーション部門】

大賞
時をかける少女(細田 守)
優秀賞
おはなしの花(久保亜美香/井上精太)
スキマの国のポルタ(荒井良二(原作)/和田敏克(アニメーション))
春のめざめ(アレクサンドル・ペトロフ(Aleksandr Petrov))
ピカピカ(モンノカヅエ+ナガタタケシ)
奨励賞
La grua y la jirafa(The crane and the giraffe)(ヴラディミール・ベッリーニ(Vladimir Bellini))
細田 守監督

細田 守監督。「筒井康隆先生の“時をかける少女”は10代のときに読みました。21世紀を生きる人たちは、何に憧れているのか、知りたいと思いました」とコメントした

“時をかける少女”(長編[劇場公開]) ・細田 守(日本) (C)“時をかける少女”製作委員会 2006 疑う余地のない大賞受賞と言えるだろう。絵に頼りきることなく、優れた演出で、アニメーションというだけでなく、映像作品として心に響く見事な作品


【マンガ部門】

大賞
太陽の黙示録(かわぐちかいじ)
優秀賞
大奥(よしながふみ)
大阪ハムレット(森下裕美)
百鬼夜行抄(今 市子)
よつばと!(あずまきよひこ)
奨励賞
SHI RI TO RI(筑濱カズコ(構成:筑濱健一/作画:筑濱和子))
かわぐちかいじ氏

かわぐちかいじ氏のコメント「なぜもらえたのだろうかと考えていました。マンガを描く時には自分で設定したハードルが超えられたかどうかが大事。受賞をこれからの励みにしてがんばりたいと思います」

“太陽の黙示録”(ストーリーマンガ)・かわぐちかいじ(日本) (C)かわぐちかいじ/小学館 天災によって引き裂かれた極限状態の日本を描いた作品。審査員全員一致で大賞に決定された。ベテラン作家の受賞には、メディア芸術祭の意義を感じる



なお功労賞には、作画監督の大工原 章氏が受賞した。大工原氏は東映動画(株)(現・東映アニメーション(株))の黎明期より“白蛇伝(はくじゃでん)”“少年猿飛佐助”などの原画や、“わんわん忠臣蔵”“アンデルセン物語”などの作画監督を務めて、数多くのヒット作を手がけるとともに、氏の指導を受けた後進のスタッフも数多い。89才と高齢の大工原氏は、病床のため出席がかなわなかったが、「日本のアニメーションの発展に少しでも寄与できたことを思うと大変うれしく思います。後輩のみなさんの活躍を祈念しております」とのメッセージが読み上げられた。

“少年猿飛佐助”

“少年猿飛佐助”1959年 (C)東映アニメーション

最後に池坊文部科学副大臣より挨拶があった。池坊氏は「こんなにワクワクしてこうした授賞式に望んだのは初めてです。孫に見せたらいいだろうと思ったり、亡くなった母が見たら、『世の中変わったわねぇ』、なんて言ったかもしれないと思っていました。受賞者には中学2年の方(アート部門奨励賞の林 俊作さん)がいたり、功労賞には古くからアニメーションに取り組んで来られた方がいらして、こうした素晴らしい先駆者がいらっしゃるからこそ、このメディア芸術があるのだと思います。年齢や性別、民族の隔てなく、心の安らぎや勇気を与えてくれたり、感受性や創造性からどんなメディア芸術が生まれるか楽しみです。文化庁は国を超えてさまざまな方に夢を与えるメディア芸術に取り組む方々をお支えし、一人でも多くの方に楽しんでいただければと思います」と語った。

授賞式の模様

世界36の国と地域からの応募作品1808点の中から選ばれた作家が、世界中から恵比寿のウェスティンホテル東京の授賞式に集まった


東京都写真美術館を中心に、例年恵比寿で行なわれてきた文化庁メディア芸術祭だが、次回(第11回)は今年1月にオープンした国立新美術館で開催される、とアナウンスされた。これにより開催地は、アートとエンタテイメントの集積地としてのイメージが高まる六本木に移ることになる。

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