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アスキースマホ総研・白書 第19回

大画面化? ダブルレンス? 新端末と業界動向を識者と編集部が大予想

2017年に登場するスマホはこうなる! (1/2)

2017年01月11日 13時00分更新

文● 小山安博、石川温 編集部●南田ゴウ/ASCII編集部

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2016年もさまざまなスマートフォンが登場した。2016年発売のスマホのトレンドから、2017年のスマートフォンおよびスマホ業界を大予想。2017年のスマホはこうなる!?

スマホライター小山安博氏が
2017年発売スマホのトレンドを予想

 デジカメやスマートフォン、セキュリティーを中心に国内だけでなく海外取材も精力的にこなすフリーランスジャーナリストが、2017年はどんなスマホが登場するかを大予想!

【2017年スマホ予想1】スマホの処理性能が底上げされ
普及価格帯スマホのシェアが急速に拡大する

 スマートフォンはコモディティー化が進んだことで、中国メーカーを中心に低価格化が進展している、というのはすでに一般化した流れだが、この流れが加速したのが2016年だ。単に「低価格スマホが増えた」というより、十分な機能と性能を備えたスマートフォンが、より安くなってきた、と言ったほうがいいだろう。国内でも、スペックが十分になってきたことで低価格スマホが増加している。

2016年10月発売のASUS「ZenFone 3」はDSDS(デュアルSIM・デュアルスタンバイ)対応で税別3万9800円という普及価格帯スマホの代表格

「HUAWEI P9」は税別5万9800円とハイエンド寄りの価格帯で登場したが、一部では4万円台後半で手に入るほど価格がこなれて一気に人気端末に

 2017年もその流れは変わらない。8~10万円のハイエンド端末、5~8万円の高機能スマホ、3~5万円の普及価格帯スマホ、それ以下の低価格スマホといった価格帯は変わらないだろうが、それぞれの価格帯の製品でスペックがこれまでより一段上がり、一般消費者にとっては、スペックで不満が出にくくなり、ようやく「普及機で十分」と言えるレベルになってきた。

SMフリースマホといえば以前は低価格帯の端末が多いイメージだったが、ASUSの「ZenFone 3 Deluxe ZS570KL」はSnapdragon 821搭載でメモリー6GB、ストレージ256GBとキャリアスマホを超えるスペック。ただし、端末価格も9万6984円とお高めだ。

 MNPによる端末代金補助が減ってきている中、ハイエンド製品よりも機能としては十分な普及機への機種変更の増加も予想できる。それにともない、普及価格帯の端末ラインアップが拡大しそうだ。

【2017年スマホ予想2】スマホのディスプレーはさらに大型化
WQHDから4Kまでさらに高解像度化が進むはず

 ディスプレーの大型化は2017年も継続する流れだ。バッテリー問題で国内販売が見送られたサムスンの「Galaxy Note 7」は5.7型だったが、この6型クラスの製品は増えると見る。Note 7問題で行き場を失った、このサイズを求めるユーザーの受け皿も狙える。パネルの高解像度化も行なわれるだろう。

フリーテルの「SAMURAI 極2」はWQHD解像度の5.7型有機ELディスプレーを搭載

モトローラのDSDS対応SIMフリースマホ「Moto Z」は5.5型WQHD解像度有機ELディスプレーを搭載。ハイエンド端末の解像度はフルHDからWQHDへとスペックアップが進行中

 ドコモの「Xperia Z5 Premium」で先行した4K解像度ディスプレーだが、2017年は採用例が増えるだろう。バッテリー消費が激しいという課題はあるが、バッテリー容量の増加や省電力機構の進展などで一定のめどは立ちそうだ。OSの64bit化にともなうメモリーの大容量化は高解像度ディスプレーの搭載には必須で、4GBクラスを搭載する製品も増えている。ハイエンド端末ではこうした大容量メモリー、大画面、高解像度といったトレンドが出そうだ。

ドコモの独占供給となるソニーモバイルの4Kスマホ「Xperia Z5 Premium」

「Xperia Z5 Premium」で4K表示とフルHD表示を比較

 一時期は「ファブレット」という言葉もあって、大画面スマートフォンを区別していたが、最近はあまり使われなくなっている。PCやタブレットが停滞する中で大画面を必要とするユーザーも多く、スマートフォン1台で済ますには大画面の方がいい、というユーザーも多い。それだけ一般化したということだし、この傾向は今後も変わらないだろう。逆に、小型端末が好みだったり手が小さいユーザーは端末選びに悩むことになりそうだ。

ソニーモバイルは2016年5月に6型フルHD解像度液晶の海外モデル「Xperia XA Ultra」を発表

【2017年スマホ予想2】「スマホのカメラはレンズが2つ」が
一般的になり、コンパクトデジカメに置き換わる

 ファーウェイやLGエレクトロニクスなど、2つのカメラを搭載するスマートフォンが増えてきている。先行するLGやファーウェイに加えて「iPhone 7 Plus」もツインカメラを採用したことで、この流れが決定的になった。

「iPhone 7 Plus」はシリーズ初のデュアルレンズを搭載

ダブルレンズ搭載の「HUAWEI P9」のワイドアパーチャモードで撮影。背景がうまくボケている

 それぞれのレンズの画角を変える「iPhone 7 Plus」やauの「isai Beat」、カラーとモノクロのセンサーの画像を合成して高画質化を狙う「HUAWEI P9」「HUAWEI Mate 9」といった具合に、各社それぞれの工夫を凝らしており、中国ではXiaomiもカメラを2つ搭載している。こうした傾向が強まるだろう。

「HUAWEI P9」はライカブランドのダブルレンズを搭載

「HUAWEI Mate 9」はカラー側1200万画素、モノクロ側2000万画素と「HUAWEI P9」より解像度が向上し、光学式手ぶれ補正に対応した

 大手としてはソニー、サムスンの動向が気になるところ。この2社が追随することになれば、「スマートフォンのメインカメラは2つ」というのが一般化しそうだ。

【2017年スマホ予想2】PCのWindows 10がそのまま動作する
スマートフォンが2017年早々に登場するかも!?

 2016年12月になって発表されたWindows 10のSnapdragon対応も大きなトピックだ。これまで、スマートフォン用にはWindows 10のサブセットであるWindows 10 Mobileが採用されていたが、Windows 10自体がSnapdragonをサポートしたことで、スマートフォンにフルのWindows 10が搭載できるようになった。ARMコアのSnapdragonだが、Win32版ソフトウェアもそのまま動作するエミュレーション技術が導入され、Windows 10の新たな可能性を示す発表だ。

クアルコムが12月8日からから開催のWinHECでお披露目したSnapdragon向けのWindows 10

 2017年早期にも対応する製品が登場するとされており、マイクロソフト自身が「Surface Phone」を発表するという観測も流れている。タブレットやPC向けにSnapdragonを採用する製品が登場する可能性もあるが、Snapdragonはスマートフォン向けSoCとしては独占に近いシェアを確保しており、文字通りの「Windows 10スマートフォン」が登場しそうだ。

HPのWindows 10 Mobileスマホ「HP Elite x3」はWQHD解像度の5.97型ディスプレーを搭載。SIMフリー端末ながらキャリアアグリゲーションとau VoLTEにも対応する

12.5型フルHD液晶を搭載する「ノートドック」(5万3784円)と接続してノートPCのように使うことも可能

 Windows 10 Mobile搭載スマートフォンはいまだにシェア拡大で苦戦しているが、PCと同じOSやソフトウェアが動作し、“Continuum”を使ってPCとしても利用できるスマートフォンは得がたい特徴となる。特にビジネスユーザー向けに、新たな選択肢として普及する可能性もある。グローバルで見ればAndroid、国内で見ればiPhoneがシェアで圧倒しているが、この勢力図に一定の影響を与える可能性もある。パフォーマンスや使い勝手は未知数だし、製品ラインアップがどれだけそろうかもわからないが、期待しておきたい。

トリニティの「NuANS Neo」やマウスコンピューターの「MADOSMA Q601」などWindows Mobile 10搭載スマホは市場に存在するものの、シェアを得ているとは言いがたい



ケータイジャーナリスト石川温氏が
2017年スマホ業界のトレンドを予想

 ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『ケータイ業界52人が語る「戦略」の裏側』(毎日コミュニケーションズ)など、著書多数のスマホ/ケータイジャーナリストが、2017年のスマホ業界の動向を大予想!

【2017年業界予想1】キャリアからMVNOへの移行がさらに進むが
そのぶんMVNOへの逆風も強くなり、サービスの顧客数差が拡大

 MVNOが盛り上がりを見せるなか、2017年は大手キャリアがどのような対抗策を投じてくるかがひとつの見所と言えるだろう。

 当面は、ソフトバンクがY!mobile、au(KDDI)がUQ mobileといったようにサブブランドや子会社でMVNOに互角で渡り合える格安料金で、勝負をしていく構えだろう。自社からの流出を抑えるとともに、ドコモからの流入を獲得したい考えだ。両グループとも、MNOによる豊富な資金と卓越したプロモーション、全国に展開する販売網を強みとして、格安スマホ陣営を一網打尽したいはずだ。しかし、MVNOを後押ししたい総務省から、睨まれる可能性を充分に秘めている。Y!mobile、UQ mobileとも、総務省から邪魔が入らないように立ち振る舞う必要がありそうだ。

イー・アクセス(イー・モバイル)とウィルコムが合併し、2014年8月1日にサービスの提供を開始したY!mobile

UQ mobileは最大13ヵ月間、月1980円で利用できる格安サービスを提供

 一方で、格安スマホ陣営が順風満帆かと言えば、むしろ競争は激しくなり、生き残りをかけた戦いが始まりそうだ。実際、すでに格安スマホ陣営にとって逆風が吹き始めている。

 たとえばここ最近、ネット上だけで契約できるというメリットを逆手にとり、格安スマホが犯罪に利用されるケースが増えてきた。かつてのプリペイドケータイのように犯罪組織に使われてはじめているのだ。総務省としては格安スマホを盛り上げようとしているが、一方で、警察庁としては、本人確認が手薄な格安スマホの契約形態を見過ごすわけにはいかない。MVNOにとっては今後、本人確認の強化など負担が増すことになりそうだ。

10月1日から正式サービスの提供を開始したLINEモバイルは、LINEアカウントを利用して契約やサポートを行なう

 また、最近、MVNO業界で問題視されているのが「顧客の大量流出」だ。通信料金を大盤振る舞いで値引いたキャンペーンを展開すると、一気にユーザーが集まるものの、キャンペーンが終われば、また別のところに一斉に流出してしまうというのが悩みとなっている。

 2年縛りなどがないのがMVNOの魅力であるが、それがアダとなり経営が安定しないというジレンマがある。「顧客をいかに囲い込むか」はMVNOにとって重要な課題となっているようだ。

 MVNOにとって2017年は「いかに安定した経営にしていくか」という試練の年になりそうだ。

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