トイレを語る上でスルーできない「素材」問題
もし、トイレそのものを新築により設置、もしくはリフォームによる買い替えを検討しているのであれば、ぜひトイレの素材についても着眼してほしい。TOTO、INAX、パナソニックでそれぞれうたっている素材が異なるのだ。
トイレの素材、イコール陶器だと思っている人もいるかもしれないが、今やその常識は覆されている。
トイレの素材に注目! 有機ガラス系の素材
パナソニックは新素材である有機ガラス系新素材を「アラウーノ」含め全機種で採用している。樹脂、すなわちプラスチックの一種である。陶器に比べて質量も軽いためか、ためしにパナソニックのトイレに指で触れてみると「スコン、スコン」とした軽めの音がする。だが、だからといって強度がもろいわけではない。有機ガラス系の素材が水族館の水槽に使われている例もある。
陶器は硬度が高く、抗菌性があってトイレに適した素材ではあるが、親水性のため水アカが固着しやすいという弱点もある。それを素材をから克服したのがパナソニック。撥水性の樹脂であれば、水を弾いて汚れが付きづらい。
さらに陶器と異なり、ミリレベルの精密な設計、生産が可能というおまけも付いてくる。TOTO、INAXの家庭向けトイレの最上位機種が40万円前後であるのに、パナソニックは30万円前後と価格を抑えられているのも、そのあたりが背景だろう。
だが一方、誤ったお手入れをしてしまうと、素材がいっきに傷んでしまうというおそれもある。例えば、硬いブラシなどで力強く磨いてしまったりすると……。
洗剤を入れておくことで水を流すたびに洗浄効果があるなど“全自動洗浄”機能搭載の機種もある位で、本来であれば積極的にお手入れをさぼってもいいはず。掃除したい欲が出てきた時にやりすぎるてしまうことがコワい。
TOTOは表面コーティングを標準装備 INAXは昨年より新素材
では、衛生陶器の老舗であるTOTO、INAXは水アカが付きやすいという従来通りの陶器を使い続けているかというと、そうでもない。
TOTOは1999年より、セフィオンテクトという特許技術で陶器の表面をナノレベルでツルツルにしている。
凹凸がほぼないため、汚れが付きにくく落ちやすい。また、乾燥した状態だと確かに汚れが付着しやすいということで、上位モデルでは使用前に陶器を水道水で濡らすという克服策を取り入れている。
また、INAXは2016年より新開発の陶器素材「アクアセラミック」を採用している。
あえて陶器表面を“超親水性”にすることで、陶器に付着した汚物の下へ水を入り込ませ、汚れを浮かび上がらせ落としやすくする。また、水アカへの対応として、その原因である陶器表面の水酸基(-OH)を露出しない構造の素材だ。
個人的には、陶器のトイレは指で叩くと「コン、コン」とした硬さや重みを感じられて好きである。自分が死んだあとにも陶器のトイレなら残ってくれるのではないかと……。
好みの問題はさておき、各社素材に関しては汚れの吸着を打破すべく最先端の工夫をこらしている。トイレを購入するではなくても、トイレウォッチングの際にはぜひ着眼してほしい。
トイレかわや版「これ尻たい!」
Q:もっとトイレの歴史を知ってトイレ博士になりたい
ナベコ「小倉にある『TOTOミュージアム』に行ってみましょう。TOTOは2017年に創立100周年を迎える記念事業として、2015年に北九州小倉に博物館をオープン。近代化産業遺産に認定されている貴重な衛生陶器が展示されている他、世界におけるTOTOのトイレ商品も見られるんですって!」
※トイレの写真は2013年に撮影したもの