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中性子星内部の相対論的クォークを記述する理論を構築=東北大

2024年04月12日 06時47分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東北大学の研究チームは、中性子星の観測で示唆される「圧縮に伴う物質の激しい硬化」を、クォークに対する「パウリ原理」という量子論的効果と、相対論的な運動エネルギーという基本的な2つの原理に基づき説明することに成功した。

東北大学の研究チームは、中性子星の観測で示唆される「圧縮に伴う物質の激しい硬化」を、クォークに対する「パウリ原理」という量子論的効果と、相対論的な運動エネルギーという基本的な2つの原理に基づき説明することに成功した。 中性子星は、わずか半径10kmの星に地球の30万倍の質量が詰まっているとされる超高密度天体である。これほどの超高密度物質は地上の実験室では実現不可能であり、多数の原子核を含む系を圧縮していくと、多数の陽子・中性子を含む核物質になり、最終的にクォーク物質ができるという予想を検証するための「宇宙の実験室」として注目されている。 近年の中性子星観測によれば、従来の予想に反して、核物質からクォーク物質へと変化するにつれ物質が急激に硬くなっていることがわかったという。研究チームは今回、この謎を解くべく、核物質からクォーク物質まで統一的に記述する理論を構築。物質の急激な硬化の機構を説明した。鍵となるのは、2つの同種類のフェルミ粒子は同じ量子状態をとれないとする「パウリの排他律」とクォークの相対論的運動であり、前者がクォーク物質への変化を駆動し、それを通じてクォークの相対論的圧力が解放され、物質を硬くし、中性子星の重力崩壊を防いでいるという。 今回の成果は、これまでのハドロン(陽子、中性子、中間子など強い相互作用で結びついた複合粒子)に関する物理学と中性子星内部の高密度物質に関する知見をつなぐものであり、重力波観測などの天体観測や原子核物理の実験に新しい動機を与えると期待される。研究論文は、米国物理学会が発行するフィジカル・レビュー・レターズ(Physical Review Letters)のオンライン版に2024年3月11日付けで掲載された

(中條)

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