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Sportip がAI や先端技術で変える運動指導 無人ジムの進化に期待

株式会社Sportip 代表取締役社長 髙久侑也氏インタビュー

連載
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データ取得でさらなる精度向上を

 AIについては筑波大学在学中に活用することを考えた。海外の大学の論文を読み、人間の動きをデータ化する取り組みの可能性と課題も感じた。

「海外のその発表は2015年か16年だったが、自分たちが考えていた人間に代わるAIをつくる、人間の目と脳の代わりができるという実感を得ることができた。ただ、逆に技術的な課題もいろいろと見つかった。技術的な課題が明らかということは、それがクリアされていく道筋が見えたということでもある。自分たちが一刻も早くそこを取り組めばいいのではないかと考えた」

 AIを活用するベースとなるデータを取得するためには、カメラやセンサーを使ってデータを取得することになる。髙久氏はこのカメラやセンサーこそ、人間の目の代わりになるものと考え、データ取得が自分たちのビジネスの重要な鍵となると考えた。そこで起業後は筑波大学をはじめ、さまざまな研究機関や企業などと連携し積極的にデータを取得している。

「自分たちで取得できるデータは自分たちで取得し、自分たちでは取得できないデータは研究機関と連携し取得している。例えば、京都大学大学院医学研究科と実施している共同研究プロジェクトがそのひとつ。Sportip Proを用いて、百人以上の規模の被験者の動作を解析し、怪我の予防につながるよう研究を進めている。データは1000万件以上あるが、さらにデータの精度を高めるためにやれることはなんでもやっていく」

 データを取得するだけではない。取得したデータをもとに活用していくことが、同社が目指す方向でもある。取得したデータをリアルタイムで解析し、活用する。スポーツジムや介護の現場で取得したデータを、即、適切な指導に反映していくことがSportipの目指すビジネスだ。

身体のデータをもとに個人の特性を明らかにし、その人にあった指導やケアのサポートを目指す

「このリアルタイムでデータを処理していくことは、我々が手がける人間の身体分析だけでなく、例えば自動車の自動運転など他の業界でも取り組んでいる技術分野でもある。きちんと先端技術に関する情報を収集しながら実装していきたい。現在は時間がないので実現できないが、その分野で論文が出せるようなレベルでの研究成果も出ているので、論文を発表するといったこともできれば」と自分たちの技術にも強い自信を見せる。

 この自信のベースとなっているのは、髙久氏自身の行動力と情報収集能力、さらにそれを自分たちのソフトウェアに実装していく取り組みを実施してきた手応えがあるからなのだろう。

「かなり細かく、正確なデータが取得できるようになってきている。精細なデータを正確に取得できるようになることで、例えばダイエットの指導の際にも、これまでは体重と体脂肪くらいしかKPIがなかったものが、1カ月前と今日では体型・姿勢・動作にこんな違いがあるといった指導ができるようになる」

 しかも、現在の成果にとどまらず、貪欲にさらなる技術向上を追い求めていこうとしている。常に高みを目指すのはどういう発想から来ているのだろうか。

「会社として重要視しているポイントとして、網羅的に戦略を考え尽くし、それを徹底的に実行すること。わからないことや見えないことに対してはボトムから捉えていって、個別にいくつかのポイントを集める。集めたらそれで満足してしまいがちだが、同時に俯瞰して全体を見て、何か抜け漏れはないか、俯瞰して見えた抜け部分はどこから手をつければいいのか優先度をつけ、最終的には発見した抜け漏れを全部やっていくことを繰り返している。例えばデータ取得についても、身長別、体重別、性別、年齢別で分けるだけではなく、競技別など取得して分析したいデータがまだまだある」

日本発で海外に挑戦、世界中で成功できるジムをつくる

 今後、自分たちでジムを作ることを計画している。手がけるソフトウェアを実践するショールーム的な要素と、実験室としての活用を計画している。

「これまで日本のスポーツジムは、『米国でこんなジムができて、多くの生徒を集めている。その成功モデルを日本に持ってきた』という流れだった。それを日本発で先端のジムを作り、逆に米国に輸出するといったことに挑戦していきたい。それを実践できそうなのが生成AIを使ったスポーツジム。セラピストやトレーナーなしに、生成AIを活用しながらその人に最適な運動をアドバイスするといったジムを作るといったことが可能になりそうだ。これを実現するためには、リアルタイム性が重要で、技術力がないと時間やお金がかかり、実現できない」

 リアルタイムに分析する技術が確立することで、介護施設向けアプリ「リハケア」についても、紙とデジタルが混在する現状を変え、入力の自動化、撮影によって施設入居者の状況を報告し、適切なサポートを行っていくような変化が起こせると考えている。「2030年頃までにSaaSアプリをさらに拡充し、確固たるビジネス基盤を確立したい」と貪欲にさらなるビジネス拡大を進める。

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