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ありふれた軟磁性合金を熱処理で次世代熱電変換材料に

2024年04月02日 06時46分更新

文● MIT Technology Review Japan

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物質・材料研究機構(NIMS)と名古屋大学の共同研究チームは、トランスやモーター用の軟磁性材料として広く利用されている鉄基アモルファス合金が、短時間の熱処理だけで、電流と熱流をそれぞれ直交する方向に変換できる“横型”熱電変換材料になることを実証した。同材料は容易に量産化・大面積化が可能で、自在に曲げられるため、電子デバイスの省エネルギー化につながる発電技術や熱センシング技術への応用が期待される。

物質・材料研究機構(NIMS)と名古屋大学の共同研究チームは、トランスやモーター用の軟磁性材料として広く利用されている鉄基アモルファス合金が、短時間の熱処理だけで、電流と熱流をそれぞれ直交する方向に変換できる“横型”熱電変換材料になることを実証した。同材料は容易に量産化・大面積化が可能で、自在に曲げられるため、電子デバイスの省エネルギー化につながる発電技術や熱センシング技術への応用が期待される。 研究チームは今回、85%程度が鉄から構成される磁性アモルファス合金を液体急冷法により作製。これを3分間熱処理するだけで、材料の平均組成を変えることなく、横型熱電効果の一つである異常ネルンスト効果の性能(異常ネルンスト係数)が大幅に向上することを実証した。さらに、最適温度で熱処理した際に得られた異常ネルンスト係数は、これまで知られていた磁性アモルファス合金の中で最高値であり、この性能向上には合金中に生じたナノサイズの銅析出物が重要な役割を担っていることを明らかにした。 磁性材料における横型熱電効果を用いれば、電流と熱流がそれぞれ平行な方向に変換される縦型熱電効果と比較して、熱電変換素子の構造が簡略化されるため、素子の汎用性・耐久性の向上や低コスト化に繋がると期待されている。横型熱電変換のための磁性材料開発の研究においては、電子構造に着目した新物質探索が主流であり、材料中の微細組織に着目した研究はほとんどなかったという。 研究論文は、ネイチャー・コミュニケーション(Nature Communications)に2024年3月27日付けでオンライン掲載された

(中條)

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