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次世代量子計算のカギとなる「マヨラナ粒子」を観測=東大など

2024年03月21日 06時36分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京大学、京都大学、東北大学、東京工業大学、韓国科学技術院の共同研究チームは、環境ノイズに強い「トポロジカル量子コンピューター」実現の鍵となる「マヨラナ粒子」の存在を証明する決定的な証拠を得たとする研究を発表した。トポロジカル量子コンピューターは、従来の量子コンピューターとは異なる物理系を用いて、量子計算を実行する次世代型の量子コンピューターであり、周囲の環境の変化に強く、本質的にエラーを起こしにくいとされている。

東京大学、京都大学、東北大学、東京工業大学、韓国科学技術院の共同研究チームは、環境ノイズに強い「トポロジカル量子コンピューター」実現の鍵となる「マヨラナ粒子」の存在を証明する決定的な証拠を得たとする研究を発表した。トポロジカル量子コンピューターは、従来の量子コンピューターとは異なる物理系を用いて、量子計算を実行する次世代型の量子コンピューターであり、周囲の環境の変化に強く、本質的にエラーを起こしにくいとされている。 マヨラナ粒子は、粒子と反粒子が同一となる性質を持つ素粒子であり、1937年に理論的に提案された。素粒子磁場中でのマヨラナ粒子は、「非可換エニオン」という新奇な粒子を形成し得ることが分かっており、この非可換エニオンは、トポロジカル量子コンピューターを実現するうえでカギになると期待されている。研究チームは今回、磁場をある特定の方向に向けるとマヨラナ粒子固有の特別な状態が実現することを明らかにした。同チームによるとこれは、マヨラナ粒子の存在に関する決定的な証拠であるという。 同チームは2018年に、磁性絶縁体α-RuCl3(塩化ルテニウム)において「半整数熱量子ホール効果」を観測し、マヨラナ粒子が存在するという報告をした。しかし、この熱ホール効果は試料ごとに異なる結果を示すことや、異なる解釈を提案するグループも現れたことから論争となっており、別の観点からマヨラナ粒子の存在を示す決定的な証拠を得ることが課題となっていた。 今回、実際の物質中において、マヨラナ粒子の存在を決定づけるとする研究結果が得られたことで、磁性絶縁体α-RuCl3がトポロジカル量子コンピューター実現のためのプラットフォームになり得る可能性が出てきた。研究論文は、米国科学誌サイエンス・アドバンシス(Science Advances)に2024年3月13日付けでオンライン掲載された

(中條)

3月21日14時20分更新:タイトルの誤字を修正しました。

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