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光触媒を用いた実用的な「還元的環化」反応を開発=北大

2024年03月04日 16時28分更新

文● MIT Technology Review Japan

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北海道大学の研究チームは、光触媒とコバルト触媒を組み合わせることで、アルキン(炭素-炭素三重結合を持つ分子)とアルデヒドをもつ原料を、還元しながら環状化合物に変換(還元的環化)することに成功した。この反応で得られる多様な環状アルコールは医薬品骨格に含まれる普遍的な構造であるため、創薬研究での利用が期待される。

北海道大学の研究チームは、光触媒とコバルト触媒を組み合わせることで、アルキン(炭素-炭素三重結合を持つ分子)とアルデヒドをもつ原料を、還元しながら環状化合物に変換(還元的環化)することに成功した。この反応で得られる多様な環状アルコールは医薬品骨格に含まれる普遍的な構造であるため、創薬研究での利用が期待される。 このタイプの反応には一般的に、空気に不安定な遷移金属触媒が利用されており、反応を触媒的に進行させるためには、過剰量の還元剤なども添加する必要がある。これらの触媒や添加剤は、酸素や湿気を除去した特殊な環境下での取り扱いが必要で、添加剤から廃棄物が生じる問題もあるため、実用的な利用が困難になっている。 研究チームは今回、光触媒、コバルト触媒、トリエチルアミンといった空気下で取り扱い容易な試薬のみを用い、コバルト触媒活性種の再生段階に水を利用するクリーンな光触媒系を確立した。この反応では、トリエチルアミンが持つ電子を光触媒・コバルト触媒へと効率よく伝達させるため、過剰量の添加剤を必要としない。 同チームは今回、LEDの光を利用したが、太陽光を利用する光触媒や発電技術の発展とともに、将来的にさらにクリーンな合成技術へと発展できる可能性があるという。研究論文は、米国化学会誌「ACSカタリシス(ACS Catalysis)」のオンライン版に2024年2月16日付けで公開された

(中條)

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