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核融合プラズマのデジタルツインによる予測制御を初実証=京大

2024年01月31日 06時41分更新

文● MIT Technology Review Japan

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京都大学の研究チームは、核融合プラズマのデジタルツインによる予測制御システムを開発。核融合科学研究所に設置した超伝導プラズマ実験装置である大型ヘリカル装置(LHD)において、その制御能力を実証した。

京都大学の研究チームは、核融合プラズマのデジタルツインによる予測制御システムを開発。核融合科学研究所に設置した超伝導プラズマ実験装置である大型ヘリカル装置(LHD)において、その制御能力を実証した。 研究チームは、核融合プラズマの大規模なシミュレーションモデルを観測情報に基づいて最適化し、予測・解析の精度を高めるシステムである「ASTI(アスティ)」の開発を進めている。今回はASTIに、新たに制御の機能を加え、核融合プラズマのデジタルツイン制御を実現。シミュレーションモデルを核融合プラズマの実際の挙動にリアルタイムで適応させることで、モデルの精度が高い状態でプラズマの振る舞いを予測し、その予測に基づいて制御できるようにした。 同チームはさらに、大型ヘリカル装置(LHD)において、リアルタイムで観測される電子の密度・温度分布により予測モデルを最適化しながら、実際のプラズマの電子温度を制御する実験を実施。その結果、モデルの予測精度を向上させながら電子温度を目標温度に近づけることができ、デジタルツインによる核融合プラズマの予測制御を世界で初めて実証することに成功した。 磁場閉じ込め方式による核融合発電を実現するには、核融合プラズマの複雑な挙動を予測して制御する必要があるが、物理モデルの予測精度が不十分なことや未解明な事柄が多いことから挑戦的な課題となっている。今回の手法は、モデルの予測精度を高めた状態で最適な制御を推定できるため、これまでは困難であったプラズマの密度や温度分布の制御をはじめ、プラズマ内部からの熱の逃げやすさといった直接計測していない量の制御にも適用でき、核融合炉制御の基盤技術となることが期待される。 研究論文は、サイエンティフィック・レポーツ(Scientific Reports)に2024年1月17日付けでに掲載された

(中條)

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