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負極に亜鉛を利用する超高速充放電二次電池=山形大など

2024年01月15日 07時34分更新

文● MIT Technology Review Japan

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山形大学と関西学院大学の研究グループは、アノード(負極)に亜鉛を採用し、超高速充放電が可能な二次電池の新しい電極を開発した。亜鉛はリチウムやナトリウムよりも大きな体積エネルギー容量を持ち、大気中や水に触れて発火する恐れもなく、安全に扱える。亜鉛を使用した二次電池の開発は続いているが、容量を維持しながら高速充放電を実現することが困難だった。

山形大学と関西学院大学の研究グループは、アノード(負極)に亜鉛を採用し、超高速充放電が可能な二次電池の新しい電極を開発した。亜鉛はリチウムやナトリウムよりも大きな体積エネルギー容量を持ち、大気中や水に触れて発火する恐れもなく、安全に扱える。亜鉛を使用した二次電池の開発は続いているが、容量を維持しながら高速充放電を実現することが困難だった。 研究グループは今回、カソード(正極)に多孔性配位高分子であるプルシアンブルー類似体ナノ粒子と、単層カーボンナノチューブを組み合わせ、アノードに亜鉛を採用した二次電池の電極を開発した。カソードではナトリウムイオンの脱挿入を利用し、アノードでは亜鉛イオンと金属亜鉛の溶解析出反応を利用する。この電池のため、2種の陽イオンを含む複合イオン電解液を採用した。 一般的な電極は、活物質と炭素粒子径導電助剤、バインダーを混ぜたペーストを電極に塗布して作成するが、この手法では活物質が凝集し、電解質イオンの高速伝導経路を構築できない。そこで、カソードを作成する際にプルシアンブルー類似体ナノ粒子に導電助剤として微量の単層カーボンナノチューブを加え、その分算液を混合・ろ過することでバインダーフリー電極を作製した。この電極では、単層カーボンナノチューブが個々のプルシアンブルー類似体ナノ粒子を連結、電気伝送経路を形成し、プルシアンブルー類似体ナノ粒子を独立して機能させるとともに、個々のナノ粒子間にナノ細孔ができて、電解質溶液を満たすことで、電解質イオンがスムーズに移動できる。実験の結果、1000C(充電または放電時間3.6 秒)で超高速な酸化還元を示し、15 万回の充放電の繰り返し後も電極の構造は壊れることなく電池性能を維持したという。 研究成果はジャーナル・オブ・マテリアルズ、ケミストリー・A(Journal of Materials Chemistry A)誌に掲載された。

(笹田)

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