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リスクと報酬の意思決定を光で制御、サルで実験

2024年01月11日 07時09分更新

文● MIT Technology Review Japan

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京都大学、奈良先端科学技術大学院大学などの共同研究グループは、報酬とリスクを獲得するバランスの制御に関わる霊長類の戦略的意思決定の脳神経回路機構を解明した。意思決定に関与する主要な脳部位として、中脳の腹側被蓋野から前頭皮質、とりわけ腹外側6野と呼ばれる領域への直接経路が報酬とリスクのバランスを調節する重要回路として機能的役割を担うことを示した研究は世界初だという。

京都大学、奈良先端科学技術大学院大学などの共同研究グループは、報酬とリスクを獲得するバランスの制御に関わる霊長類の戦略的意思決定の脳神経回路機構を解明した。意思決定に関与する主要な脳部位として、中脳の腹側被蓋野から前頭皮質、とりわけ腹外側6野と呼ばれる領域への直接経路が報酬とリスクのバランスを調節する重要回路として機能的役割を担うことを示した研究は世界初だという。 今回の研究では高度な認知課題を遂行しているマカクサルの意思決定を詳細に定量化し、計算論的神経科学の手法によって意思を解読。さらに、最先端の経路選択的な光遺伝学的活動操作により、マカクサルの意思嗜好性を操作することに成功した。光遺伝学的手法とは、光によって活性化されるタンパク分子を特定の細胞に発現させ、その機能を光で操作する技術である。 実験では、「ハイリスク・ハイリターン」と「ローリスク・ローリターン」の経路を二者択一で選ぶゲームをサルにさせて、光遺伝学の技術を用いて神経経路を操作することで、「腹側被蓋野」から「腹外側6野」へ伸びる神経経路がこの選択に関わっていることを確認。「腹外側6野 下端腹側」への刺激によりハイリスク・ハイリターンの選択を好み、「腹外側6野 下端背側」への刺激によりローリスク・ローリターンの選択を好むようになることを明らかにした。さらに、腹外側6野 下端腹側への刺激が蓄積されることで、ハイリスク・ハイリターンの選択を選ぶ傾向がより強まることも見い出した。 今回、霊長類において意思決定に関わる個々の神経回路を特定し、意思決定の外的なコントロールが可能であることを示したことで、様々な精神神経疾患の症状を脳内神経回路ごとの機能として説明できるようになり、それに沿った安全な治療法が開発されることが期待できる。研究論文は、米国科学誌サイエンス(Science)に2024年1月4日付けで掲載された

(中條)

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