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生成AIの現場利用は本格化へ ― Microsoft Ignite Japanレポート

業務に合わせた副操縦士「Copilot for Microsoft 365」の実力は

2023年12月20日 08時00分更新

文● 阿久津良和 編集● 福澤/TECH.ASCII.jp

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 日本マイクロソフトは、2023年12月13日、「Microsoft Ignite Japan」を開催。同年11月にMicrosoftが開催した「Microsoft Ignite」の発表内容を踏まえたソリューション紹介にとどまらず、大阪会場では日本独自のミニステージやハンズオンも展開された。

 同イベントの「Copilot for Microsoft 365で実現する未来の働き方とその準備のポイント」と題するセッションに登壇したのは、同社のセールスイネーブルメント&オペレーションズ部門 業務執行役員 モダンワークプレイス GTM 本部 本部長である山田恭平氏。「日本マイクロソフトはあなたのCopilotとして成長を支える」と、基調講演での代表取締役 社長 津坂美樹氏と同様のメッセージを繰り返した。

日本マイクロソフト セールスイネーブルメント&オペレーションズ部門 業務執行役員 モダンワークプレイス GTM 本部 本部長 山田恭平氏

国内40社以上がその効果を試したCopilot for Microsoft 365

 まず、「Copilot for Microsoft 365」のアーリーアクセスプログラムに参加した12カ国1万8100名を対象とした業務での使用感に関する調査結果が紹介され、、「Copilotが業務に不可欠(77%)」「生産性向上を実感(70%)」「仕事の質が改善(68%)」「時間を節約して重要な仕事に集中できる(67%)」という評価が得られたという。

 また、同調査でCopilotの生産性向上の定量化を図ったところ、「欠席した会議の遅れをキャッチアップする速度(3.8倍)」「顧客の課題解決にかかる時間を短縮(12%)」「情報の検索や文書作成、要約などのタスクを短縮(29%)」「営業担当者が一週間に節約した平均時間(90分)」といった結果も得られている。

 山田氏は、「働き方は百人百様。業務内容に合わせてCopilotは優秀なエージェントとして働く」とMicrosoft 365 Appsから呼び出すCopilotの有用性を強調する。アーリーアクセスプログラムには、国内からも40社以上が参加し、各アプリケーションの生成AI機能を試した。山田氏は個人的意見と前置きしながら、「この会社に17年在籍しているが、Satya NadellaがCEOに就任して大きく変わった」と述べ、業務支援するCopilotがMicrosoftのミッションと合致していると所感を述べた。

Copilot for Microsoft 365アーリーアクセスプログラムに参加した主な日本企業

 また、山田氏は、Microsoft Teamsのユーザー数が「全世界で3.2億人以上」(山田氏)に達したと説明。Copilotとの連携や独自機能の開発時に使用するフレームワークである「Copilot Stack」に触れつつ、「我々はAI時代のためにTeamsを再構築した。2倍速く、リソースは50%削減。合理化されたUXを採用し、次世代AIを体験する起点」(山田氏)になると、フレームワークを刷新した「新しいTeams」を紹介した。

 他にも「Copilot in Windows」が、2025年10月14日にサポート終了を迎える予定のWindows 10にも搭載されることも紹介。Windows 10に関しては、「デバイスを交換できない事情は理解しているので、ESU(拡張セキュリティ更新プログラム: 最長3年間の有償サポート)を用意する」(山田氏)としている。価格は後日発表となるが、Windows 365やAzure Virtual DesktopのWindows 10に対しては、ESUは無償で提供される。

Windows 10用ESUも提供する

Copilotはあくまで副操縦士、業務の各場面で操縦士を支援

 本題であるCopilot for Microsoft 365だが、日本語環境でのMicrosoft TeamsにおけるCopilotの使用例として、AIによるタスク生成やチャプターの自動生成などにより、未参加のオンライン会議の内容を後から確認できるインテリジェントリキャップ機能が紹介された。デモ動画ではCopilot in Teamsが、会議の主な話題をリストアップし、「白熱した議論は」との問いに、会議内容の要約を箇条書きで列挙していた。

 山田氏も「朝から晩まで打ち合わせで埋まり、参加できないミーティングも少なくないが、録画データを視聴するのも骨が折れる作業。だが、インテリジェントリキャップがあれば、動画を視聴せずとも会議の内容を把握できる。また、Copilotで議論内容を知り、タスク生成でアクションアイテムも取りこぼさない。私自身も毎日使っている」と利便性を強調した。

Copilot in Teamsが生成した「白熱した議論」

 Copilot in Wordのデモ動画は基調講演と同じだったため割愛するが、Copilot in PowerPointのデモも目を見張るものがあった。WordファイルのURLをCopilotのプロンプトに入力すると、ドキュメントのアウトラインを確認してから、PowerPointスライドを自動生成する。同時にスピーカーノートも作成するため、以前のようにスライド作成に時間を費やす必要がなくなる。

 動画ではスライド全体のフォントを一括更新する場面も披露。毎日のようにスライドを作成するユーザーを助ける機能となるのは確実だ。山田氏は「Copilotは副操縦士。オートパイロットではない。プレゼンテーションを想定して、必要な場面でCopilotが支援する」と述べ、最終工程は人の手が介在すると補足した。他にもCopilot in OutlookやCopilot in Excelの動画も英語環境で紹介された。

Copilot in PowerPointが生成したPowerPointスライド

 また、Copilot for Microsoft 365に限らず生成AIが作り出したデータの業務利用は難しい。利用者が気付かずに他者の著作権を侵害している可能性を否定できないからだ。

 Microsoftは知的財産権侵害のリスクを懸念する顧客に対して「Copilot Copyright Commitment」を提供している。既存サービスをCopilotおよびMicrosoft Copilotに拡大し、第三者が当該サービスで生成した内容を著作権侵害で訴えた場合、条件下で生成したものであればMicrosoftが訴訟結果で生じた不利な判決や和解で課された金額を支払うというものだ。

 山田氏は「AIを取り巻く環境は多様な考え方がある。それでも責任を持って技術を発展させるという自身と覚悟の表れ」と私見を述べている。生成AIの現場利用が本格化する兆しを見せたセッションだった。

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