◆ボディーは大きいがグングン前に進む
エンジンをかけて、Hybrid Autoモードにセット。走り始めて感じるのは、まごうことなきポルシェであること。すべての操作系で遊びが少なく、ほかのクルマでは得られない精密機器を扱っている感覚。いかなる道でもミシリとせず、剛体という言葉がピッタリの乗り味です。
前出の通り、車幅が広いため慣れるまでは結構ドキドキ。ゆみちぃ部長も「デカい! 幅広すぎますよ」と悪戦苦闘でおっかなビックリです。「本当にタイカンと同じ大きさなのですか?」と尋ねる部長。タイカンに乗った時は、富士スピードウェイのコース内でしたから、白線とか気にしなくてよかったのですが、一般道だとそうはいきません。「カイエンも同じ車幅ですし、マカンも言うて3cmしか車幅変わりませんよ」と伝えると「えぇ? でもこっちの方が車高が低いから……」と言い訳をします。
スポーツ系だから足はガチガチ……。そんな野暮なことをポルシェはしません。高級サルーンらしい、うっとりする乗り心地。ですから長時間乗っていても疲れづらいのが美質。さすが耐久の王者ポルシェです。「それじゃ運転は面白くないの?」というと、そんなわけがなく。さすがに911やケイマンのような「リアマウントエンジンゆえの高い回答性」や「リアタイヤにトラクションをかけた走り」とはいきませんが、時計のような精密機械を彷彿とさせる、ポルシェのドライブフィールを味わえます。
「飛ばさないと面白くないのでは?」というわけではありません。30km/h制限のスクールゾーンのような低速時でもポルシェらしさ、味わいがあるのも魅力。クルマの味わい、みたいなものが希薄になりつつある中で、ポルシェは常に運転の喜びをドライバーに伝えてきます。ゆみちぃ部長の「ほとんどアクセル踏まなくていいんですね」というコメントの通り、ホントに踏まないクルマで、ちょっとアクセルに触れる程度で十分。「運転していて、すごく高級というのが伝わります。それと手ごたえがあります」と、パナメーラを走らせます。
運転支援も試してみましょう。キッチリと車線を監視し、実に快適。特に渋滞時に威力を発揮します。完全停止から30秒以内なら自動発進もしてくれます。
このクルマから感じるのは「大人の余裕」。450PSを超えるパワーはまったくもって影をひそめ、とはいいつつも、アクセルを踏めばどこでもシートと背中が張り付くような加速をみせます。速く走らないと楽しくない、ではなく、ゆったり走っていても楽しめる。そして「なんだよ、ポルシェのクセにチンタラ走るなよ」と喧嘩を売られても、少しアクセルを踏めば、相手の姿が視界から消えていきます。
もっとも、ポルシェに戦いを挑もうと考えること自体、井の中の蛙なのですが。ともあれ「金持ち喧嘩せず」とは、ポルシェのための言葉といえるかもしれません。
電池残量が尽きると、前出したジェネレーターの音や振動で「あぁ……」と思ってしまうところはあるのですが、そういう時は街中でもSportにすることで、少しは緩和。ですが、乗り心地は相応にハード傾向になるため、ここは考えどころです。素直にE-Chargeモードにするか、どこかで普通充電するか……。ともあれ電池がなくなると夢のようなフィールが消えてしまうのは惜しい限り。充電しないモード、というのがあればよいのですが……。
本機が活きるのは夜の首都高やワインディングなのは言うまでもありません。当然、ここはスポーツモードにチェンジ。エンジン主体の走行モードに変わり、図太いターボサウンドが車内に轟きます。クルマの大きさは感じるものの楽しさ満点。スポーツカーに求める刺激を、たっぷりと味あわせてくれるとともに、色濃いポルシェフィールに心が踊ります。ゆみちぃ部長も楽しそうです。
そして、Sport Plusモードは「羊の皮を被った狼」とはこのことか、と言わんばかりの豹変ぶり。ここまで来るとちょっと手におえそうになく、2000万円というプライスもあって、ここは大人しくSportでとどめておいた方が精神的によいかも。ポルシェのスポーツモデル(911など)はリアエンジン、リア駆動ゆえのトラクションのかかり方であったり、旋回性の高さが魅力。それは一方で、危うさをはらんでいます。
パナメーラは、そういったクイックな味わいは求められないものの、FRベースらしい旋回に高度な4WDシステムにより、不安感は皆無に近いのも魅力。バツグンの安定感で、誰もが運転を楽しめる、というのはすごいことです。
気になる燃費ですが、電池残量がある状態なら街乗りで10km/L、高速道路で17km/Lを記録。高速道路で電池残量がなくなると14km/L程度でした。
【まとめ】911じゃなくてもポルシェはポルシェ!
911でなければポルシェにあらず、という方は少なからずいらっしゃいます(編集Sとか)。そういう原理主義的な考えはキライじゃありません。確かに同じ金額なら、アイコニックなモデルに目を奪われるのは仕方ないところです。
ですが、クルマは買ってから想定外の使い方を求められることが多いもの。その中で「よりポルシェらしいスポーティーな走りをワインディングで楽しみながら、実用性をしっかり残したい」という方に、このパナメーラはピッタリの選択肢であり、とても高いレベルでの満足度が得られることは間違いございません。
このクルマと比較する対象は何かないかと記憶をめぐらせてみましょう。2000万円という金額的を考えると、「Mercedes-AMG GT 43 4MATIC+」や「アルピナ B5」でしょうか。ここら辺になってくると、どれを買ってもハズレナシで、もはや比較することすらオコガマシイというもの。その中でパナメーラだけがPHEVになりますので、自宅充電できる環境の方なら、電動車の静粛性とエンジンのパワフルさの両方が楽しめる本モデルは、たいそう魅力に映るでしょう。
逆に充電環境がないという方は、ジェネレーターの振動や音、E-CHARGEモードの燃費のことも考えると、普通のパナメーラ(2WD/1305万円~、4WD/1355万円~)の方が楽しめるような気がします。
その大きさとセダンというスタイリングで、完璧にツボにはハマらなかったものの、公道でのポルシェ体験に、たいそう満足のゆみちぃ部長。「今度はスポーツモデルに乗ってみたいです!」と、まさかの発言。だんだんスポーツカー、欲しくなってきたんじゃないですか? 実に良い傾向です!
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