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新清士の「メタバース・プレゼンス」 第43回

世界トップ級の画像生成AI「Midjourney」更に強力に。ライバル「Stable Diffusion」との違いもはっきり

2023年11月20日 07時00分更新

文● 新清士 編集●ASCII

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世界トップクラスの人気を誇るMidjourney

 現在、画像生成AIの分野では、Midjourneyの価値が高まっています。Discordへの登録ユーザー数は無償アカウントを含めて1600万人に達しており、アクティブユーザー数も150万人近い状態です。

 昨年7月のサービス開始後、昨年10月には年間売上が50万ドルに達すると見られていましたが、今年3月には2億ドル、今年の終わりまでに3億ドル(約453億円)にまで成長するペースなのではないかと推測されています。クラウド型の有料課金モデルですが、生成できる枚数に上限のない30ドルのスタンダードプランが最も利用されていると考えられています。

 Midjouneyの強さは、Googleトレンドなどを見ると顕著です。昨年以降のブームの中でも、競合の「Stable Diffusion」に2倍近い差をつけて注目を受け続けている状態です。特にアメリカでの画像生成AIの商用利用は、Midjourneyを中心に進んでいるようです。

 米ベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツによる今年5月の調査では、生成AIを利用している欧米圏のゲーム会社のなかでMidjourneyの利用率が71%に達しており、Stable Diffusionを凌駕しているという状況でした。

 すでに多くの課金ユーザーを抱えているうえ、開発チームも50人以下の小さなチームを維持できているとされています。そのためビジネス的には黒字とみられ、現在の企業価値は約100億ドル(約1兆5000億ドル)の評価にも達するとも言われています。

 興味深いことに、同社創業者のデヴィッド・ホルツ氏は、Midjourneyは資金調達をしないという方針を取っており、多くのベンチャーキャピタルなどの投資の申し出を断っているようです。ホルツ氏はVRの分野で使われてきたジェスチャー操作デバイス「Leap Motion」の共同創業者です。Leap Motionもそれなりに成功した企業ですが、販売先が大企業向けのものになるようにしたがい、普及に限界を感じるようになったようです。そのため同社を退職し、もっと一般消費者向けの製品をつくりたいとMidjourneyを創業し、一般ユーザー向けの画像生成AIの作成に取り組みはじめたようです。

昨年7月のMidjourney v1で生成した画像

現在。この1年余りで、すさまじい性能向上が起きた

 Midjourneyでは毎週火曜日の朝5時(日本時間)に、Discord内で「オフィスアワー」というイベントを開いています。開発スタッフがユーザーに対して今後の新機能を説明したり、ユーザーからの質問に答えるというイベントで、今後のアップデートに向けても準備が進められているようです。

 11月には新バージョンのv5.3がリリースされる予定で、これがv5シリーズの最後になるそうですが、このバージョンでもかなり画像の品質がさらに上がるようです。さらに来年早々には、大幅にクオリティを向上させたバージョン6(v6)のリリースが予定されているとのことです。

 さらに、その次の世代のv7では3D機能の取り扱いが可能になると予告されています。そして、動画生成にも力を入れているようです。静止画の品質はMidjourneyで生成するものの品質が高いために、AI生成動画サービスのRunwayのベース画像として使われることが少なくありません。その動画サービスにもMidjourneyが参入を検討しているようです。

 Midjourneyはクラウド型ということもあり、どんなアルゴリズムで制御されているのかわからない部分が多くあり、謎を持つ生成AI企業の1つです。大手との競合が進む中、独自の世界観を維持しつつ、次の焦点とみなされている「パーソナライゼーション、動画化、3D化」などのトレンドに対応しようと、着実に機能強化を進めていこうとしています。

 

筆者紹介:新清士(しんきよし)

1970年生まれ。株式会社AI Frog Interactive代表。デジタルハリウッド大学大学院教授。慶應義塾大学商学部及び環境情報学部卒。ゲームジャーナリストとして活躍後、VRマルチプレイ剣戟アクションゲーム「ソード・オブ・ガルガンチュア」の開発を主導。現在は、新作のインディゲームの開発をしている。著書に『メタバースビジネス覇権戦争』(NHK出版新書)がある。

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