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臓器に貼り付けてエクソソームを回収する木質由来シート

2023年11月13日 07時27分更新

文● MIT Technology Review Japan

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名古屋大学、大阪大学、東京工業大学、国立がん研究センターの研究グループは、臓器に数秒間貼り付けることで、エクソソームを回収できる木質由来のシート「EVシート(EV:Extracellular Vesicle:細胞外小胞)」を開発した。エクソソームを含むEVは、疾患に応じて内包する生理活性分子が変化するため、有望な疾患バイオマーカーとして期待されているが、ごく微量の体液からエクソソームを回収して解析することは極めて困難とされていた。

名古屋大学、大阪大学、東京工業大学、国立がん研究センターの研究グループは、臓器に数秒間貼り付けることで、エクソソームを回収できる木質由来のシート「EVシート(EV:Extracellular Vesicle:細胞外小胞)」を開発した。エクソソームを含むEVは、疾患に応じて内包する生理活性分子が変化するため、有望な疾患バイオマーカーとして期待されているが、ごく微量の体液からエクソソームを回収して解析することは極めて困難とされていた。 研究グループは木材由来の新素材であるセルロースナノファイバーを材料に、紙すき技術と溶媒置換技術を応用してEVシートを開発した。このシートはEV捕捉に適したナノ細孔構造を持ち、乾燥によって閉孔する特性によって、EVを効率よく回収、保存できる。 完成したシートを卵巣がん患者の内臓に貼り付けて回収し、吸収したEVから次世代シーケンサーを利用してマイクロRNAの情報を解析した。卵巣がんが進行すると腹水が貯留し、腹水中をがん細胞やEVが動き回って転移する。マイクロRNAを解析したところ、これまでまとめて解析されていた腹水中のEVが、採取する場所によって変化することが明らかになった。 また、腹水全体が含有するマイクロRNAと、腫瘍表面上に存在するマイクロRNAが異なるものであることも分かった。今回見つかったマイクロRNAのうちいくつかが、腫瘍切除後に低下することから、診断や治療薬選択に役立つ新しいバイオマーカーとなる可能性があることも判明した。 研究成果は11月8日、ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)にオンライン掲載された。研究グループは今後、がんに限らず、さまざまな疾患を対象に、EVシートの医療応用を進めていくとしている。

(笹田)

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