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心筋DNA損傷の程度から心不全患者の治療効果を予測=東大など

2023年11月12日 08時38分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京大学と奈良県立医科大学などの共同研究チームは、心不全患者の心筋生検組織を用いてDNA損傷の程度を評価する方法を開発。心不全の原因疾患に関係なく、心臓収縮機能の低下した心不全患者においては、DNA損傷の程度に比例して治療応答性(薬による効果)や生命予後(病状の経過)が悪化することを明らかにした。

東京大学と奈良県立医科大学などの共同研究チームは、心不全患者の心筋生検組織を用いてDNA損傷の程度を評価する方法を開発。心不全の原因疾患に関係なく、心臓収縮機能の低下した心不全患者においては、DNA損傷の程度に比例して治療応答性(薬による効果)や生命予後(病状の経過)が悪化することを明らかにした。 研究グループは過去の研究において、マウスが心不全になると心筋細胞の核の中にあるDNAにキズが生じ、それが心筋細胞の不全化を誘導することを発見。さらに、DNA損傷がヒトにおいても心不全の病態を規定する重要な因子であり、58例の拡張型心筋症患者の心筋生検組織でDNA損傷の指標を評価することで、患者の治療応答性を高い精度で予測できることを報告していた。 今回は同様の評価法を用いて、多岐にわたる各疾患によって引き起こされる心臓収縮機能が低下した心不全全般の患者175人を対象に、DNA損傷評価の有用性を検討。その結果、過去の報告同様、治療応答性がよくない患者は、治療導入前の心筋生検組織におけるDNA損傷の程度が有意に強いことが分かった。さらに、組織内のDNA損傷核の存在率に基づいて患者をDNA損傷「強陽性群」、同「弱陽性群」に分類すると、高い精度で生命予後を予測できた。 今回の研究成果は心不全領域における個別化医療・精密医療の実践に直結するのみならず、DNA損傷が多岐にわたる原因疾患によって生じる心不全の共通した病態であることを示しており、今後の心不全研究に役立つ。研究論文は、米国心臓病学会誌(Journal of the American College of Cardiology:JACC)に2023年11月6日付けでオンライン掲載された

(中條)

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