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99%が水なのに水を弾く固体「ゲル・ゲル相分離材料」

2023年11月02日 06時57分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京大学、理化学研究所、北海道大学の共同研究チームは、含水率99パーセントの均一なゲルが濃厚なゲルと希薄なゲルの2相に分離する「ゲル・ゲル相分離(Gel-Gel Phase Separation、GGPS)」を発見した。さらに、ゲル・ゲル相分離が生じたゲルは高い細胞親和性を持つことがわかり、生体に埋め込むと周囲の細胞が入り込む足場となり組織再生を促す材料としての医療応用が期待される。

東京大学、理化学研究所、北海道大学の共同研究チームは、含水率99パーセントの均一なゲルが濃厚なゲルと希薄なゲルの2相に分離する「ゲル・ゲル相分離(Gel-Gel Phase Separation、GGPS)」を発見した。さらに、ゲル・ゲル相分離が生じたゲルは高い細胞親和性を持つことがわかり、生体に埋め込むと周囲の細胞が入り込む足場となり組織再生を促す材料としての医療応用が期待される。 研究チームは今回、水溶性高分子であるポリエチレングリコール(PEG)の網目が大量の水を保持したPEGハイドロゲルにおいて、新しい相分離現象である「ゲル・ゲル相分離」を見つけた。同チームは、含水率99パーセント程度の大量の水を含む状態でゲルを効率的に作ることでゲル・ゲル相分離を誘起。希薄ゲルの中に100マイクロメートル(1マイクロメートルは10-6メートル)程度の濃厚ゲルの繊維状網目を張り巡らせて、細胞外マトリックス類似のスポンジ構造を持つ「ゲル・ゲル相分離材料」を形成することに成功した。 同チームによると、ゲル・ゲル相分離が生じたゲルはスポンジ状の構造を持ち、水を99%含むにも関わらず油のように水を弾く疎水性を示し、水分量が多いほど水となじみにくくなる。さらに、ゲル・ゲル相分離材料をモデル動物の皮下に埋め込んだところ、周囲から細胞が入り込み、血管を含む脂肪組織が形成されるという、従来のPEGゲルでは全く見られなかった特異な生体組織親和性を示したという。 PEGはドラッグデリバリーや組織工学など多様な医学的用途に広く利用されているが、今回発見されたような疎水性スポンジ構造の自発的な形成過程の観察例はなかった。研究論文は、ネイチャー・マテリアルズ(Nature Materials)のオンライン版に2023年10月30日付けで公開された

(中條)

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