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4年ぶりのリアル開催となった「docomo business Forum '23」基調講演レポート

リミットが外れたドコモビジネス、IoTや地域案件も本気モードへ

2023年10月13日 07時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 2023年10月12日、ドコモビジネスは法人向けイベント「docomo business Forum '23」を開催した。基調講演に登壇したNTTコミュニケーションズ 代表取締役社長 社長執行役員 丸岡 亨氏はドコモビジネスの変遷を振り返るとともに、組織再編や固定・モバイルの統合により拡大が見込まれるIoT、地方案件の可能性について抱負を語った。

NTTコミュニケーションズ 代表取締役社長 社長執行役員 丸岡 亨氏

ドコモビジネスはなぜ生まれ、どこに向かうのか?

 基調講演は、バーチャル会場のデジタルヒューマンのCONN(コン)とNTTコミュニケーションズ 代表取締役社長 社長執行役員 丸岡 亨氏による挨拶からスタート。会場で登壇した丸岡氏は、前身のNTT Communication Forumから4年ぶりとなったリアル会場への復帰をアピールした。

 今回のテーマは「つなげ、ビジネス」。会場でも流されたプロモーションビデオには、綾小路翔や岡崎体育などトンがったキャラクターが登場しているが、これは「彼らが住んでいる街や地域、産業の悩みをICTで解決し、DXを進め、その上でサステイナブルな社会をいっしょに実現していく」という意図があるという。

綾小路翔や岡崎体育などがプロモーションビデオに登場する「つなげ、ビジネス」

 最初に丸岡氏が説明したのは「ドコモビジネスとは?」だ。1985年の民営化で生まれたNTT(日本電信電話)だが、通信サービスの競争の公平性の観点から、1999年に地域通信会社のNTT東日本・NTT西日本、長距離通信・インターネットを担うNTTコミュニケーションズに分割された。そこから20年を経た2019年、買収した南アフリカのディメンションデータを中心にグローバル事業が再編され、NTTコミュニケーションズの海外のデータセンター事業はグローバル通信事業を行なうNTT Ltd.に移管されている。

 しかし、今も業界では大きな変化が絶え間なく起こっている。通信の世界では、固定とモバイルの区分がなくなり、両者の融合が進んだ。一方、競争環境としても、通信からアプリまでそれぞれの領域で激烈なグローバルでの競争が始まり、コロナ禍でリモート前提の世界が当たり前となった。

 こうした中、2022年1月に生まれたのが、NTTコミュニケーションズ、NTTドコモの法人事業、NTTコムウェアから構成される新ブランド「ドコモビジネス」になる。具体的には通信とスマートライフの事業をNTTドコモ、法人事業をNTTコミュニケーションズ、ソフトウェア開発をNTTコムウェアがそれぞれ担当し、「すべてのお客さまのDXをワンストップでサポートする」というのがドコモビジネスの役割だ。

NTTコミュニケーションズの変遷

 昨年の夏にはドコモの法人事業を担当していた社員6000名がNTTコミュニケーションズに移籍し、いっしょにビジネスを展開している。また、対象となるフィールドも大きく拡大。「今までNTTコミュニケーションズは東名阪の大企業をメインに活動してきたが、NTTドコモは大企業に加え、中小のお客さまも対応してきた。各地域ではドコモのブランドが浸透している」と丸岡氏が説明する。

固定とモバイルの統合でソリューションが拡がった「IoT」

 事業の面では、今までの固定のネットワークやクラウド・データセンター、プラットフォームなどに、モバイルネットワークと顧客基盤が加わる。競合となるKDDIやソフトバンクなどに対しては、固定のみというリミットが解除され、モバイルとの統合を進められる点と、なにより9000万におよぶ顧客基盤は大きな強みとなるだろう。

 そして、このインフラやプラットフォーム上に載ってくるのが、ユーザー企業との共創で実現する各種ソリューションだ。共創を促進するべく、大手町本社に構築したOpen Hubには累計で約1500社、3700名が来訪し、約1000件の共創案件を推進しているとのこと。今年は名古屋や大阪のラボとも結んで、距離を超えて共創の機会を構築していく。

共創ソリューションの実績も増えている

 こうした共創ソリューションのキーワードは「SmartWorld」と「IoT」になる。IoTに関しては、やはりドコモのモバイル通信が加わったことで実現可能性が高まり、各業界の課題解決に寄与できるという。従来の保険会社のドライブレコーダー、電力・水道・ガスでのスマートメーター、鉄道や自治体におけるセキュリティカメラなどに加え、コネクテッドカーや運輸、エレベーター、機械警備、業務用タブレットなどがソリューションが拡がっている。

 具体的な共創事例として挙げたのは、コマツ、EARTHBRAIN、ドコモビジネスが展開している建設現場DX。EARTHBRAINの技術を用いると、iPhoneやiPadで撮影した画像から誤差5cmという精度で現場の点群データを作成し、現場の3Dデータ化を実現できるとのこと。また、5Gやdocomo MECというエッジコンピューティング基盤を活用することで、オフィスのコクピットから現場の建設機械を遠隔操作するという実験も進めているという。

コマツ、EARTHBRAIN、ドコモビジネスが展開している建設現場DX

 また、竹中工務店や清水建設とドコモビジネスが取り組む建設現場DXでは、工程管理をデジタル化している。建設業界は、人手不足や作業員の高齢化に悩まされており、時間外労働の上限規制が適用される2024年に向け、作業の効率化や安全な現場を実現するためのデジタル化が急務となっている。これに対して、共創ソリューションの取り組みでは、紙ベースの工程表や日報のデジタル化、見える化などを進めているという。

 農業のスマート化という分野では、メタンガスを減らす取り組みが披露された。温暖化の原因としては二酸化炭素がよく挙がるが、もう1つのメタンガスの発生も原因となっており、日本では水田から発生していることが多い。しかし、水稲栽培で地上がひび割れた状態での「中干し」の期間を長くとると、メタンガスの排出が3割抑えられるという。ドコモビジネスとヤンマーマルシェとの取り組みでは、IoTによってまずは中干し期間を測定し、メタンガス排出を削減したことによるカーボンクレジットを発行し、新たな収入源を得る。また、こうした取り組みを通じて生産した米をグリーン米としてブランド化することも検討しているという。

「中干し」を増やし、メタンガス排出を削減

 カーボンマネジメントに関しては、伊藤忠丸紅鉄鋼とWasteBoxと連携し、鉄鋼製品のサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量を算定、可視化、分析を行なっている。

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