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最新パーツ性能チェック 第426回

1スロット&低消費電力で運用可能な「Radeon PRO W7500/ W7600」を試す

2023年10月11日 13時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●ジサトラハッチ/ASCII

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Photoshopが意外に速い

 ここでは「UL Procyon」を用いた検証を行う。まずはPhotoshopやLightroom Classicを実際に動かす“Photo Editing Benchmark”を動かしてみた。

UL Procyon:Photo Editing Benchmarkのスコアー

 ここで予想外だったのは各GPUの差が思いのほか小さかったのだが、総合スコアー(青色バー)ではRX 7600よりもPRO W7600どころかPRO W7500も勝っていた、という点が興味深い。Lightroom Classicのみを動かすBatch ProcessingのスコアーはどのGPUも僅差で終わっているが、Photoshopをメインに使うImage Retouchingでは、PRO W7600とPRO W6600が良い結果を出している。

 TBPやクロックはRX 7600が高いことを考えると、よりTBPやクロックの低いPRO W7600の方がスコアーが良いのは単純にドライバーとの摺り合わせが良好だからと考えられる。このベンチは比較的ブレが大きいのでたまたまこういう結果に落ち着いたとも考えられるが、Photoshopを多用するのであれば、Radeon PROの導入は一考に値するといえるだろう。

 次に試すのはAIを使った推論処理の時間をスコアー化する“AI Inference benchmark for Windows”だ。実行デバイスはGPUを指定、APIはWindows ML、演算精度はFP32とした。

UL Procyon:AI Inference Benchmark for Windows (Windows ML)のスコアー

 このテストではクロックもTBPも高いRX 7600がトップ、以下3DMarkのスコアーと同傾向の着順となった。

動画エンコード速度は?

 「DaVinci Resolve Studio」を使い動画エンコードのテストもしてみた。ProRes 422HQベースの8K動画(再生時間約2分)を編集し、それを1本の8K動画(VBR 80Mbps)にエンコードする時間を計測した。エンコーダーはAV1を指定している。

DaVinci Resolve Studio:8K AV1のエンコード時間

 PRO W6600の結果がないのは、AV1のハードウェアエンコード対応がRDNA 3以降だから当然だ。エンコード時間そのものはRX 7600がトップで終了したが、PRO W7600とPRO W7500の処理時間に差はない。

 PRO W7500は補助電源なしで動作するのだから、AV1のハードウェアエンコード用アクセラレーター的に運用するのも良いかもしれない。ただVRAMが8GBしかないので、DaVinci Resolve Studio用としては少々厳しいものがありそうだが……。

 「Media Encoder 2023」はまだAV1のエンコードに対応していないものの、GPUを利用してH.264やH.265のエンコードをさせることができる。再生時間約3分の4K動画を「Premiere Pro 2023」上で用意し、それをMedia Encoder 2023上で1本の4K動画に書き出す時間を測定した。ビットレートはVBR 50Mbps、1パスエンコードとし、コーデックはH.265、ハードウェアエンコード(GPU)とした。

Media Encoder 2023:4K H.265のエンコード時間

 トップはRX 7600だが、ほんの数秒遅れでPRO W7600と続いている。DaVinci Resolve StudioとはGPUの使われ方が違うため、Media Encoder 2023ではPRO W7500のパフォーマンスはPRO W7600に比べると大きく劣ってしまうが、TBP 70Wという事を考えると仕方ないところだろう。

消費電力は平均値に注目

 最後に消費電力も検証しておこう。今回は「Powenetics v2」を利用し、システムに接続されたATX/ EPS12V/ PCIeケーブルおよびPCIe x16スロットに流れる電力を直接計測した。3DMarkのTime Spy Graphics Test 2を実行した際の平均値と最大値、さらに99パーセンタイル点の3つの値を求めた。また、アイドル時とはシステム起動10分後の値を示している。

システム全体の消費電力

 PRO W7600とRX 7600の消費電力が近いのはスペック(TBP)的に当然だが、PRO W7500の消費電力が案外大きいようにも見える。PRO W7500のTBPは70Wと低いのに、最大値はPRO W6600と10Wも違わないのは違和感を覚える。

 ただ99パーセンタイル点はPRO W6600よりも約80W下がっているので、PRO W7500は一瞬だけ電力を食う瞬間はあるが、処理全体のスケールで眺めるとほぼスペック通りの動きをしているといえる。

まとめ:CGや写真編集ユーザーなら買い?

 以上でPRO W7600とPRO W7500のレビューは終了だ。単純な速さやコストではRX 7600に負けることもあるが、Indigo BenchmarkやPhotoshop(UL Procyon)のように、プロ向けRadeonだから味わえるアドバンテージもある。CG作成や写真編集用に安定して速い作業環境を作りたいのであれば、Radeon PRO W7000シリーズの導入を検討してみてもよいのではないだろうか。

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