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小惑星リュウグウから始原的な「塩」と有機硫黄分子群を発見

2023年09月28日 06時26分更新

文● MIT Technology Review Japan

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海洋研究開発機構、九州大学、産業技術総合研究所などの研究者で構成する共同研究チームは、小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウから持ち帰ったサンプルを分析し、始原的な「塩(Salt)」と有機硫黄分子群を発見。初生的な有機物から親水性や両親媒性をもつ分子群まで、水-有機物-鉱物反応による化学進化の記録を捉えた。

海洋研究開発機構、九州大学、産業技術総合研究所などの研究者で構成する共同研究チームは、小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウから持ち帰ったサンプルを分析し、始原的な「塩(Salt)」と有機硫黄分子群を発見。初生的な有機物から親水性や両親媒性をもつ分子群まで、水-有機物-鉱物反応による化学進化の記録を捉えた。 研究チームは今回、リュウグウのサンプルの可溶性成分を熱水、有機溶媒、弱酸(ギ酸)、強酸(塩酸)の各溶媒を使って段階的に抽出。得られた成分をイオン・クロマトグラフィーと超高分解能質量分析法により、陽イオン、陰イオン、イオン性有機物について精密な解析をした。 その結果、最も溶解しやすい成分の化学組成を反映する熱水抽出物は、ナトリウムイオンに富むことが判明した。研究チームによると、ナトリウムイオンは、鉱物や有機物の表面電荷を安定化させる電解質として働き、一部は、有機分子などと結合することでナトリウム塩として析出していると考えられるという。 さらに、抽出物からは様々な有機硫黄分子も発見し、分析によって検出された硫黄の分子種は幅広い価数をもつイオン種や析出する無機塩と共存していることがわかった。小惑星リュウグウには元々、還元的な鉄やニッケルの硫化物が存在するが、水質変成を受けることで化学状態が変化し、親水性や両親媒性をもつ様々な硫黄を含む有機分子へと化学進化を遂げたとみている。 小惑星リュウグウは、地球が誕生する以前の太陽系全体の化学組成を保持する始原的な天体の一つである。今回の成果は、地球が誕生する以前の太陽系において物質はどのように存在していたのか、さらには、地球や海、そして生命を構成する物質の起源や進化を探求する上で重要な知見となるという。研究論文は、ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に2023年9月18日付けで掲載された

(中條)

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