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海洋内部の巨大水塊が台風強度に影響、東大など発見

2023年09月20日 06時51分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京大学、東北、東京海洋大学の共同研究チームは、日本の南(北太平洋亜熱帯域)の海の深さ100~500メートルに広く分布する水温均一な水塊「亜熱帯モード水」の厚さの増減が、海面付近の水温を通じて台風の発達・減衰に影響していることを発見した。

東京大学、東北、東京海洋大学の共同研究チームは、日本の南(北太平洋亜熱帯域)の海の深さ100~500メートルに広く分布する水温均一な水塊「亜熱帯モード水」の厚さの増減が、海面付近の水温を通じて台風の発達・減衰に影響していることを発見した。 研究チームは今回、日本の南の海域(北緯20~35度、東経130~138度、ただし、黒潮の南側のみが対象)で、2010~2021年に「アルゴフロート」が観測した水温・塩分の鉛直プロファイルを解析した。アルゴフロートは、通常は深さ1000メートルを漂流し、10日に1度、深さ2000メートルと海面の間を往復し、水温・塩分の鉛直分布を測定する自動測器である。 その結果、季節を問わず、亜熱帯モード水の厚い場所ほど、亜熱帯モード水より上の海洋表層の水温構造が押し上げられ、同じ深さで見ると水温が低下する傾向を見い出した。また、台風の発達に強く関係すると考えられている夏の海洋表層の貯熱量も、亜熱帯モード水の厚い場所ほど低い傾向を示すことがわかった。 同チームはさらに、気象庁が作成している50年間(1972~2021年)の台風データを解析したところ、亜熱帯モード水が厚いほど、台風の発達率が低下するという傾向を発見。最近(2017~2020年)の3つの台風を対象に数値シミュレーションを実行したところ、亜熱帯モード水が2015年時点のように厚かったならば、それに伴う海面水温低下のため、3つの台風の中心気圧は最大で3~9ヘクトパスカル(hPa)弱まっていたであろうとの知見を得た。 研究チームによると、将来この水塊の縮小が予測されており、地球温暖化に伴う海面水温上昇、台風強化、海洋貧栄養化、生物生産減少がさらに強化されることが示唆されるという。研究論文は2023年9月13日付でサイエンス・アドバンシズ(Science Advances)に掲載された

(中條)

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