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130億光年先のダークマターの質量を初めて測定=東大など

2023年09月12日 06時13分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京大学と愛媛大学の共同研究チームは、約130億年前の初期宇宙において活動的なブラックホールを包みこむダークマター(光を放たず、重力のみ作用すると考えられている正体不明の物質)の質量を初めて測定することに成功。ブラックホールが活動的となるダークマターの質量は宇宙の歴史の大半でほとんど変化しないことを明らかにした。

東京大学と愛媛大学の共同研究チームは、約130億年前の初期宇宙において活動的なブラックホールを包みこむダークマター(光を放たず、重力のみ作用すると考えられている正体不明の物質)の質量を初めて測定することに成功。ブラックホールが活動的となるダークマターの質量は宇宙の歴史の大半でほとんど変化しないことを明らかにした。 ほぼすべての銀河の中心には超大質量ブラックホールが存在し、その活動性が高まると、ブラックホールにガスや星が高温になって落ち込むことで非常に明るく輝く天体、クェーサーが発現するとされている。遠方のクェーサーは初期宇宙を調査するための重要な観測対象となっているが、どのくらいの質量のダークマターハロー(ダークマターが自身の重力で集まった塊)を持っているかは、今まで謎のままであった。 研究チームは今回、国立天文台の「すばる望遠鏡」による広範囲かつ高感度の大規模観測データの中から、遠方の暗いクェーサーを探査するプロジェクト「シェルQs(SHELLQs)」で発見されたクェーサーのデータを使用。クェーサー107個の空間分布からダークマターハローの質量を評価して5×1012太陽質量という結果を得た。 さらに、この値を他の時代の測定結果と比較したところ、クェーサーの存在するダークマターハローの質量は時代によらず、ほとんど一定であることがわかった。一般に、一つのダークマターハローは時間とともにより多くのダークマターを集めて成長するため、その質量は時間とともに増加する。今回の研究結果から、クェーサーが発現するために必要なダークマターハローの質量は一定であり、ブラックホールが活動的になる普遍的なメカニズムが存在する可能性が示唆されるという。 研究論文は、アストロフィジカル・ジャーナル(Astrophysical Journal)に2023年9月8日付で掲載された

(中條)

 

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