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可逆な化学反応ネットワークでの経路選択の原理を解明=東大など

2023年07月21日 06時27分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京大学と京都大学の共同研究チームは、正逆いずれの方向へも進行しうる可逆な化学反応のみから構成される反応ネットワークにおいて、無数の候補の中から、いかにして目的の生成物に向かう反応経路が選択されるのかという、経路選択の原理を解明した。

東京大学と京都大学の共同研究チームは、正逆いずれの方向へも進行しうる可逆な化学反応のみから構成される反応ネットワークにおいて、無数の候補の中から、いかにして目的の生成物に向かう反応経路が選択されるのかという、経路選択の原理を解明した。 研究チームはまず、可逆な反応ネットワークで起こる現象を解明するために、数理モデルによる反応解析を実行。可逆な反応ネットワークにおいても速度論の支配により、一過的な速度論状態(系全体が最低エネルギーの状態に到達しておらず、エネルギーの高い状態にも分子が分布すること)を作り出すことが可能で、可逆反応を増やすことでその寿命を延ばせることがわかった。 同チームは続いて、多数の可逆な素反応が網目状に繋がって枝分かれし、化学結合の組み換えに対応する分子間反応も含む、分子自己集合系をモデル化した複雑な反応ネットワークで数値シミュレーションと解析を実行。その結果、複雑な可逆反応ネットワークでは、ある素反応がその速度定数とは無関係に準不可逆性を発現することがあり、この準不可逆性の発現が経路選択の鍵であることが明らかになった。 タンパク質の折り畳みや分子自己集合など、多数の化学反応が複雑に連結したネットワーク構造は自然界に広く存在する。適応性や頑健性などの機能は、こうしたネットワークにおける複数の反応間の協働に由来すると考えられている。今回の成果は、個々の反応ではなく、それらが連結したネットワークを包括的に理解することで、単純な足し合わせでは表せない非線形現象を解明できることを示すもので、様々な分野への貢献が期待される。研究論文は、ケム(Chem)オンライン版に2023年7月18日付で掲載された

(中條)

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