このページの本文へ

リュウグウの酸素濃度・ガス分子種の変遷を解読

2023年07月12日 06時23分更新

文● MIT Technology Review Japan

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

茨城大学、北海道大学、東京工業大学などの共同研究チームは、探査機「はやぶさ2」が回収した小惑星リュウグウの試料の炭酸塩粒子に対して、酸素・炭素の両方の分析を初めて網羅的に実施。リュウグウや隕石の母天体はそれぞれ異なる物質から構成され、独特の環境で進化したと結論づけた。

茨城大学、北海道大学、東京工業大学などの共同研究チームは、探査機「はやぶさ2」が回収した小惑星リュウグウの試料の炭酸塩粒子に対して、酸素・炭素の両方の分析を初めて網羅的に実施。リュウグウや隕石の母天体はそれぞれ異なる物質から構成され、独特の環境で進化したと結論づけた。 研究チームは今回、固体試料の表面にイオンビームを照射して化学組成・同位体比を定量する「二次イオン質量分析計」で、1マイクロメートル(100分の1メートル)まで小さく絞ったビームを照射して分析する技術を独自に開発。リュウグウの試料における炭酸塩鉱物(方解石および苦灰石)に含まれる炭素と酸素の同位体の存在量比を調べた。 すると、方解石では炭素・酸素どちらの同位体比も異なる粒子の間で大きな変動がある一方、苦灰石ではほとんど変動は見られないことがわかった。この分析結果から、方解石はリュウグウにおける変質作用の初期、温度や酸素濃度が上昇中、ガス分子種の割合が変化しているときに形成され、苦灰石は系が平衡状態にあり、より高温で、ガスの中で二酸化炭素の割合が相対的に高い状態で形成されたことが考えられるという。 こうした炭酸塩鉱物の同位体組成は、これまでの隕石研究では報告されておらず、研究チームによると、リュウグウやイヴナ隕石の母天体が形成したときに、二酸化炭素・一酸化炭素・メタンなど揮発性の高い成分が固体(氷)として取り込まれていたことを示唆しているという。研究論文は、ネイチャー・ジオサイエンス(Nature Geoscience)に2023年7月10日付けで掲載された

(中條)

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ