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コロイドゲルを1粒子レベルで観察、固まる仕組みを解明=東大

2023年05月31日 17時04分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京大学の研究チームは、ミクロン程度の大きさ固体粒子が液体に分散した「コロイド分散系」のゲル化(粘度が増加して固まっていく現象)の過程を、「共焦点レーザ顕微鏡」によって1粒子レベルで観察。液体状態から固体状態が形成される構造形成の素過程に迫ることで、ゲルの固体性がどのような機構で発現するかについて調べ、ゲルとガラスの固体性の発現機構が大きく異なることを明らかにした。

東京大学の研究チームは、ミクロン程度の大きさ固体粒子が液体に分散した「コロイド分散系」のゲル化(粘度が増加して固まっていく現象)の過程を、「共焦点レーザ顕微鏡」によって1粒子レベルで観察。液体状態から固体状態が形成される構造形成の素過程に迫ることで、ゲルの固体性がどのような機構で発現するかについて調べ、ゲルとガラスの固体性の発現機構が大きく異なることを明らかにした。 コロイドのゲル状態とガラス状態は、ともに乱れた粒子構造を持ちながらほとんど固体のように振る舞うという共通点を持つ。そのため、これまでは、ゲルの固体化はガラス化によりもたらされると考えられてきた。しかし、研究チームは、粒子レベルで多孔的な構造を持つゲルと、高密度に充填された構造を持つガラスとを同一視する従来の物理モデルには疑問が残るとして、コロイドのモデル実験系を用いて実験を実施した。 同チームは今回、共焦点顕微鏡を使用して1粒子レベルでゲル化の全過程を初期から追跡し、構造形成のダイナミクスを詳細に解析。その結果、ゲルの固体性は、コロイドが溶媒と相分離する過程で、固さを持つ最小の構造ユニットである四面体構造の形成を起点とした、逐次的で階層的な構造形成によって現れることを発見した。 さらに、この階層的な秩序化は、基本的に自由エネルギーではなく、局所的なポテンシャルエネルギーによって駆動されていることを指摘。相分離によって形成されるゲルと、均質な状態でエントロピーの影響のもと自由エネルギーを下げるように形成されるガラスとでは、固さを持った非晶質秩序の形成機構が根本的に異なることを示した。 コロイドゲル化と固体化のメカニズムを解明した今回の成果は、コロイドゲルの固体性に関する新たな知見を提供し、生体におけるたんぱく質のゲル化の理解に役立つと同時に、食品や化粧品などで望ましい機械的性質や長期安定性を持つコロイドゲルの開発につながることが期待される。研究論文は、ネイチャーフィジックス(Nature Physics)のオンライン速報版に2023年5月22日付けで公開された

(中條)

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