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多点立体電極でオルガノイドの神経活動の長期計測に成功=NTT

2023年05月25日 06時33分更新

文● MIT Technology Review Japan

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NTTの研究チームは、炭素原子のみからつくられるシート状の物質であるグラフェンを立体化する独自技術を用いて、オルガノイド(立体的な細胞塊)の繋がった神経ネットワークから神経活動を計測することに成功。立体化したグラフェンが培養細胞の足場になると同時に電極として機能することで、従来困難だった、複数の細胞塊からの長期的な計測を実現した。

NTTの研究チームは、炭素原子のみからつくられるシート状の物質であるグラフェンを立体化する独自技術を用いて、オルガノイド(立体的な細胞塊)の繋がった神経ネットワークから神経活動を計測することに成功。立体化したグラフェンが培養細胞の足場になると同時に電極として機能することで、従来困難だった、複数の細胞塊からの長期的な計測を実現した。 研究チームはこれまでに、グラフェンを曲げて立体化する独自技術を開発しており、さらに円筒状になったグラフェン内部で神経細胞を育ててオルガノイドを形成することに成功している。今回は、立体化したグラフェンを計測電極として用いることで、グラフェン内部で育てたオルガノイドの活動を計測した。 円筒状の立体電極の内部にオルガノイドが形成されるため、オルガノイドと電極とのペアを簡単に構成でき、接触が安定。平坦な電極上にオルガノイドを培養した場合と比べて、3倍以上の神経活動が計測され、70日間にわたって安定して計測できることを実証した。さらに、オルガノイドの繋がった神経ネットワークは同期と非同期の混ざった神経活動の時空間パターンを示し、日数の経過に伴ってパターンが変化することも明らかにした。 今回の成果は、脳の特徴的な構造を模した培養組織(オルガノイドのネットワーク)において神経機能を可視化することに成功したものであり、発生学や創薬研究を加速するブレイン・オン・ア・チップ(Brain-on-a-chip)の要素技術として活用されることが期待される。研究論文は、米国科学誌アドバンスト・ファンクショナル・マテリアルズ(Advanced Functional Materials)に2023年5月1日付けで掲載された

(中條)

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