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Steam日本進出の裏にいた決済系フィンテック。ユーザーの信頼を得た背景とは?

2023年05月25日 07時00分更新

文● 久我 吉史

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 PC向けゲーム配信プラットフォームであるSteamの屋台骨となっている「決済機能」を支えるフィンテック企業がある。2005年創業の株式会社デジカ(DEGICA)は、カナダ出身、現地の銀行での就業経験のあるモモセ・ジャック・レオン氏(以下、モモセ氏)が代表取締役を務める。SteamやShopifyなどのグローバルでの大規模プラットフォームでなぜデジカのソリューションが採用されたのか。その背景を聞いてみた。

■決済ソリューションKOMOJU(コモジュ)

引用元:KOMOJU(https://ja.komoju.com/
デジカが手掛けるKOMOJUは、クレジットカード決済やQRコード決済などに対応するマルチペイメント型のサービス。オンライン決済ではSteamやShopifyなどのEコマースプラットフォームに実装されている。また決済端末を使った実店舗でのオフライン決済にも対応している

 デジカが展開するKOMOJU(コモジュ)はSteamのほかEコマース用のインフラであるShopifyにも導入されており、それぞれの日本進出にも一役買ったという。モモセ氏の出自が英語圏であることからも、主に海外初の企業の日本進出に強みを持つのがデジカの特徴だ。

■SteamはPCゲームをグローバルでオンライン販売するプラットフォーム

引用元:Steam(https://store.steampowered.com/?l=japanese
SteamはオンラインでPCゲームを中心にダウンロード購入できるプラットフォームで、Valve Corporationという米国の企業が2003年にローンチした。ユーザー同士のコミュニケーションができ、iPhoneやAndrodなどのスマートフォンでもゲームを遊ぶことができる

米国でのドル建て取引が中心だったSteamを、日本に呼び込みたかった

「デジカを創業した当時は、パソコンゲームの販売や、ゲームの開発が主な事業でした。その中でゲーム販売のプラットフォームのSteamが日本に来てほしいと思ったのが、決済サービスの参入にゲーム業界を選んだきっかけです。Steam側はアジアに進出したいという考えを持っており、うまくそのキーパーソンにプッシュできました」(モモセ氏)

 Steamでのデジカのソリューション「KOMOJU」が稼働し始めたのは、2014年のこと。KOMOJUの企画・開発は、2008年ごろから初めていたので、約6年の歳月を経て導入にこぎ着けたというわけだ。それまで米国市場中心で米ドル決済のみだったSteamが、日本円決済に対応し、日本のユーザー数を加速度的に伸ばし始めた時期でもある。

「当時は、Steamに対して、日本のユーザーから信頼を得て、きちんとしたプラットフォームとして提供したいと提案していました。また、日本の大手ゲームパブリッシャー企業も安心してゲームを提供してもらいたいという考えもありました」

■Steamの市場規模

引用元:ゲームエイジ総研(https://www.gameage.jp/release/news/index_006.html
日本の年間の市場規模は約440億円。トップは中国で約1.3兆円。米国は約4000億円である。アジアを筆頭に着々とグローバルでの勢力を拡大している

日本のユーザーから信頼を得た一番の要因は、コンビニ決済

「当時のSteamのインターフェースは当然英語でした。それだけで日本人は怪しそうに思ってしまいますよね。当然、日本語へ対応するわけですが、知名度がまるで低いので、クレジットカード決済でのセキュリティーに疑念や不安を抱く人が多かったです。そこで、コンビニ決済を導入し、数千円程度のゲーム購入で詐欺られたとしても、それだけで終えられるという利用する敷居の低さや利便性を考えました。当然詐欺行為はなく、ゲームが購入できる。これが信頼につながったのだと考えます」

 日本でSteamの地位を確立できたのは、コンビニ決済の敷居の低さや利便性だったので、KOMOJUでコンビニ決済を早くから導入できてよかったとモモセ氏は話す。

「コンビニって、皆さんふらっと立ち寄れますよね。ATMもあるしいろいろなものも買えるし、夜中にポツンと明かりがついていることも含めて、我々にどことなくかもしれないですが、安心感を与えてくれます。この安心感が、決済の敷居を低くしてくれていると思います」

 コンビニでのゲーム購入といえば、2000年代中頃までは、コンビニでプレイステーションソフトなどを購入することができた。惜しくも、コンビニでのゲーム流通を手掛けていたデジキューブは、ゲーム販売がオンライン主体になったため2003年に破産してしまったが、最盛期の同社の2000年3月決算の売上高は約400億円だった。ちょうどSteamが持つ現在の日本の市場規模と同じくらいに、かつてはゲームがコンビニで売れていたのである。

■Steamで対応する日本での決済方法

引用元:Steam
2023年現在では、クレジットカードやコンビニ決済のほか、PayPayなどのQRコード決済にも対応し、多様な決済手段をユーザーに提供することで、Steamになくてはならないソリューションとしての地位を確立した

■Steamでのコンビニ決済イメージ

引用元:Steam
Steamでの決済方法でコンビニ決済と支払うコンビニを選択する。図のようにローソンを選択した場合は、ローソンに設置されている端末Loppiを使ってお客様番号や確認番号を入力し、出力された申込券をレジに持っていき支払うと決済が完了する。音楽ライブのチケットを購入するときなどと同じ手順である

KOMOJUを利用する企業への入金サイクルをいかに速くできるか

 Steamへの提供で決済ソリューションとしての地位を確立したKOMOJU。国内外問わず、その利用企業を増やしていく想定で、特に顧客の決済から企業への入金スピードを如何に速められるかを考えているという。

「KOMOJUを使ってもらいたい主なターゲットは中小企業です。その中でもEコマースでの売り上げが上がり始め、今後成長を加速させていきたいと考える企業に使ってもらいたいです。そのためには入金サイクルを速めなければなりません。売り上げが確定した瞬間に入金できるのが理想形です。例えば、企業用のクレジットカードをデジカで発行し、お店の売り上げが確定した残高を与信枠として支払いに使えるようにするといった施策を考えています」(モモセ氏)

 ビジネスモデル的には、確定した売り上げを現金以外の形で利用できるなどすれば、実質リアルタイムで入金できたことになるので、企業への付加価値となる。

 一方システム視点では、利用企業が増えれば増えるほど入金件数が増え、決済トランザクション数も増していく。KOMOJUのインフラは耐えられるのだろうか。

「システム的にはKOMOJUにさまざまな機能がすでに実装できています。例えばコンビニ決済だと、1秒間に20回といった大量の決済データはさばけないので、コンビニ側のシステムがパンクしないようにKOMOJU側でキャパシティー制御ができるようになっています。また企業ごとに決済代金をKOMOJUから振り込むときには、銀行と連携してスムーズに企業からの出金指示が受けられるようになっています」

越境ECによってEコマースのグローバル化が進む時代にも貢献していく

 経済産業省が2022年8月に公表した「令和3年度電子商取引に関する市場調査報告書」によれば、2026年には4兆8200米ドル(約620兆円)と、日本のGDPの総額を超える勢いで、世界の越境ECの市場が拡大していくという。

■世界の越境EC市場規模の拡大予測

引用元:令和3年度電子商取引に関する市場調査報告書/経済産業省(https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220812005/20220812005-h.pdf?_fsi=XMYTlarq

 デジカでは、「当然ですが海外の決済手段を増やす予定です。例えば、ベトナムでの決済手段を追加して、日本の企業がベトナムにEコマースで物販する際、ベトナムの現地通貨で決済するなどです」と、自社の強みである日本を軸にしたローカライズ化と、クロスボーダーの仕組みで、事業の拡大を目論んでいるという。

 Eコマースを中心に決済の需要がある企業と、そのユーザーとの間に挟まっているので、なかなか日の目を見ることがない決済ソリューションではあるが、着実にその事業規模は拡大している状況だ。デジカがどのような事業成長を遂げるのか。国内の大手決済ソリューションベンダー企業を凌駕する日もそう遠くないかもしれない。

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