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小島&大谷が語りあう教科書に載ってないDX成功のスパイス

DXを成功させるために必要なのは「ゴール設定」と「コミュニケーション」

2022年12月16日 09時00分更新

文● 指田昌夫 編集●MOVIEW 清水

提供: セゾン情報システムズ

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 セゾン情報システムズ主催のイベント「HULFT DAYS 2022」が、11月8日~10日の3日間開催された。

 その3日目の特別講演で、Still Day One合同会社 代表社員 パラレルマーケターの小島英輝氏が登壇し、角川アスキー総合研究所 TECH.ASCII.jp編集長の大谷イビサ氏と、日本企業がDXを進めるための急所は何か、対談した。

 小島氏は現在、複数の企業のマーケティング、経営を支援するパラレルマーケターとして活動している。2016年までアマゾン ウェブ サービス(AWS)の日本マーケティング統括を務め、日本最大のクラウドユーザーコミュニティーであるJAWS-UGの立ち上げに携わった。アスキー大谷氏は、コミュニティーからテクノロジーを広める活動を通じて小島氏に出会い、変革を起こす人々の取材を通じて、コミュニティーの活動を広めていった。本稿は、この2人の対談の様子をお届けする(以下、敬称略)。

角川アスキー総合研究所 TECH.ASCII.jp編集長 大谷イビサ氏、Still Day One 代表社員 パラレルマーケター 小島英輝氏

日本企業のDXは、遭難しそう!?

大谷:今日は小島さんとDXについて話したいのですが、最初のテーマはずばり「ぶっちゃけ、DXどうですか?」にしてみました。今のITイベントでは、タイトルにDXと付きまくっています。このセッションもそうです(笑)。ですが実際のところ、企業のDXはうまくいっているのでしょうか。

小島:引きはあると思いますよ。ただ、よく言われるとおりで、大事なのはDXの「X」のほうで、先にトランスフォーメーションを考えなければいけません。本来デジタルは先に来ないはずです。

ところが、これが逆転して、ツールを導入することが先にありきで、そこにとどまっているケースを見かけます。たとえば経営者から「DXをなんとかしろ」と言われて、「DX推進室」を作ったけれど、そこから先に進まない。それはそうです。ゴールが設定されていないと、成功しているかどうか測ることもできません。ゴールを知らされず「とりあえず走れ」と言われているようなものです。

大谷:100m走だと思って走り始めたら、途中でマラソンになっているケースも。

小島:山あり谷ありの、トレイルランニングかもしれません(笑)。いずれにしても、見通しが利いていないから準備もできない。準備ができないから成功のしようがない。という悪循環です。

例外的にスタートアップは、目的がはっきりしていますが、企業の歴史が長くなると、「形(かた)」だけが出来上がっていて、何のためにそれをするのかがわからなくなります。今日本で進められている目的なきDXの多くは、デジタル以前の問題で、「遭難」しかかっているものが多いのではないかと危惧しています。

大谷:確かに、私も企業を取材していて、形にはまっていると感じることがあります。DX室の次はCX、ほかの○○Xも必要だと、アイテムだけがどんどん増えていきます。

小島:「形(かた)」だけを増やしていくのでなく、逆にやることを絞っていって、どこまでいったら達成だとわかるようにすることが、いまDXに求められていることだと思います。

いまDXに求められていることは、やることを絞り、達成目標を決めることという小島氏

ヒントは会社の中より外、都市よりも地方にある

大谷:次にお聞きしたいのは、「DXに成功パターンはあるのか」ということです。

小島:残念ながら、DXという未知の挑戦に対して、社内にはお手本がありません。そこで、会社の外にある知恵を借りることをお勧めしています。

ヒントは意外と、地方にあると思います。私はよく地方に行っていろいろな人と会っていますが、地方には興味深い成功事例がたくさんあります。

なぜかというと、地方のほうが人口の減るスピードが速く、市場は縮小しています。それだけ追い込まれているからです。一方、巻き込まなければいけないステークホルダーは限られており、動きは軽い。そのため地方には、ロールモデルになる企業が多く存在しているのです。

大谷:IT業界は、東京と横浜でマーケットの8割という話も聞きますが、意外とそうでもないということですか?

小島:ライセンスの数だけでいうと、そういうこともあるかもしれません。ただ、課題が多い地方のほうが、それを突破しているモデルがあります。自社とは無関係と思わず、分解していくと、改革のヒントになることは多いのはないでしょうか。

大谷:地方には、産業そのものがなくなる危機に直面している業界もあります。それを打開するための知恵を絞り、デジタルを道具として使っている例もあるということでしょうか。

小島:そうです。逆に言うと関東圏の企業は、人口減少などの目に見える危機感の共有がまだ少ないのかもしれませんね。

大谷:不動産DXを成功させた地方の企業を取材して記事にしたことがあります。それを読んだ東京の不動産会社のIT担当者が、「これこそ当社の課題解決策だ」と思って、その企業に直接電話をかけたそうです。

不動産業は地域ごとに活動していて普通は接点がないのですが、DXというキーワードで結びつくことができたと思うと、記事を担当した者としてはうれしい出来事でした。

小島:それは素晴らしいケースですね。いいものは採り入れるという姿勢が、デジタルの場合はとくに必要だと思います。ただし、それを実行するには、情報を仕入れるセンサーが非常に重要です。検索結果を上から読んでいくのでなく、自社に必要な課題の「筋(すじ)」を決めておかないと、情報に溺れてしまいます。

取材記事によって地方と都市部の企業をDXというキーワードで結びつくことができたという大谷氏

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