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老化細胞の蓄積機構の一端を解明、抗老化治療に新戦略=東大など

2022年11月11日 06時50分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京大学と金沢大学などの共同研究チームは、老化や加齢性疾病発症・病態進展に伴い老化細胞が生体内の様々な臓器や組織に蓄積するメカニズムの一端を明らかにし、「抗PD-1抗体」による老化細胞の除去が新たな抗老化治療の有望な戦略になりうることを見い出した。

東京大学金沢大学などの共同研究チームは、老化や加齢性疾病発症・病態進展に伴い老化細胞が生体内の様々な臓器や組織に蓄積するメカニズムの一端を明らかにし、「抗PD-1抗体」による老化細胞の除去が新たな抗老化治療の有望な戦略になりうることを見い出した。 研究チームは今回、以前に同チームが樹立した老化細胞可視化マウスを用いた一細胞レベルでの老化細胞を解析し、老化細胞が、T細胞機能を抑制するタンパク質(免疫チェックポイントタンパク質)である「PD-L1」を不均一に発現していることを発見。PD-L1陽性老化細胞が生体内で加齢とともに蓄積することや、過剰なタンパク質凝集体の形成や強い炎症機能を有していることを明らかにした。 さらに、PD-L1陽性細胞が、体内の免疫応答を担うT細胞による免疫監視に抵抗性を示すことも発見。T細胞の活性化を維持する「免疫チェックポイント阻害剤」の一つである抗PD-1抗体を自然老化マウスや正常脂肪肝炎マウスに投与することで、活性化CD8陽性T細胞の働きによって体内に蓄積した老化細胞の数が大きく減少し、老化に関連するさまざまな表現型が改善されることを示した。 老化細胞の蓄積は、加齢に伴う炎症の主な原因であり、様々な加齢性疾患の素因となると考えられている。今回得られた知見により、不明な点が多かった老化細胞の蓄積機構の基礎的な理解が進むことに加え、現在、がん治療でも使用されている免疫チェックポイント阻害剤の老化病態治療への応用といった新たな展開がもたらされることが期待される。研究論文は、ネイチャー(Nature)誌に2022年11月2日付けでオンライン掲載された

(中條)

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