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リチウム金属電極の実用化で新手法、電解液の条件を特定=東大ら

2022年11月03日 06時41分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京大学と名古屋工業大学の研究グループは、負極にリチウム金属を使用した新型電池の実用化につながる電解液の設計手法を考案した。リチウムイオン電池では負極に炭素が使用されているが、より効率的なリチウム金属に置き換えた新しい電池の研究が進んでいる。ただ、リチウム金属と電解液との間に発生する副反応が原因で安定作動が難しく、実用化には至っていない。

東京大学と名古屋工業大学の研究グループは、負極にリチウム金属を使用した新型電池の実用化につながる電解液の設計手法を考案した。リチウムイオン電池では負極に炭素が使用されているが、より効率的なリチウム金属に置き換えた新しい電池の研究が進んでいる。ただ、リチウム金属と電解液との間に発生する副反応が原因で安定作動が難しく、実用化には至っていない。 研究グループは、保護被膜形成によって副反応を抑制する従来の手法ではなく、リチウム金属の反応活性そのものを弱めるための電解液設計に取り組んだ。電解液の種類によってリチウム金属の反応活性が異なる点に着目。74種類の電解液を対象に、分子動力学計算や量子化学計算などを駆使してそれぞれの電解液の特徴量を抽出し、機械学習を利用して電解液のリチウム金属に対する反応活性への影響度を評価した。 その結果、リチウムイオンが高密度に存在すること、リチウムとアニオンが近接する構造を採ること、上記2条件を満たすクラスター領域が存在すること、の3条件が重要であることが分かった。3条件に合致する複数の新規電解液において、実用レベルに迫る99%以上のクーロン効率(充電時に蓄えられるリチウムイオン・電子の量に対する、放電時に放出されるリチウムイオン・電子の量の比率)を記録したという。 研究成果は10月27日、ネイチャー・エナジー(Nature Energy)誌にオンライン掲載された。研究グループによると、リチウム硫黄電池、リチウム空気電池、全固体電池など、さまざまな高性能次世代電池に応用できる可能性があるという。

(笹田)

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