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NTTSportict、スポーツの試合をAIが自動撮影で編集する「STADIUM TUBE」

2022年10月26日 06時00分更新

文● 中田ボンベ@dcp 編集●ASCII STARTUP編集部

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 新型コロナの影響もあり、スポーツの在り方が変わっていく中、特に重要視されているのができるだけ人の手を介しない仕組みが注目されている。そこで試合の模様を自動で撮影する、AIがコーチングしてくれるなどのサービスが登場。今回紹介する株式会社NTTSportictの「STADIUM TUBE」は、AIが自動で試合を撮影、編集してくれるサービスだ。

モデルによってはLIVE配信も可能

 STADIUM TUBEは、コートに設置するだけで自動で試合を撮影し、編集してくれるスポーツ映像ソリューションだ。イスラエルのPixellot社が開発したカメラ機器とAIシステムを搭載しており、まずカメラを用いてコート上の状況をパノラマで撮影し、対象スポーツのルールを学習したAIが映像を確認。人の動きやボールの位置などを基に自動で編集を行なうという具合だ。「オートプロダクション」というモードを使えば、プロのカメラマンが撮影しているかのような自然なカメラワークも実現できる。

▼実際の撮影映像はこちら( サッカーデモ映像)

https://youtu.be/XKOsr7AUKm8

 編集した映像は、STADIUM TUBEの配信プラットフォームに自動でアップロードされる。広告動画を自動挿入したり、NTTSportictを介して映像販売を行なったりするオプションも用意。現在は常設モデルを5種類。可搬モデルを1種類展開しているが、常設モデルではLIVE配信も可能。あらかじめ試合開始時間を予約しておけば、その時間にカメラが起動し、専用の配信プラットフォームで自動配信される仕組みだ。LIVE配信が終わった後は「過去映像」としてアーカイブされ、いつでも見られるようになる。

新規事業の開拓にも役立つソリューション

 STADIUM TUBEの魅力は、やはり「一連のプロセスを無人で行ってくれること」だ。従来の試合撮影はカメラマンを用意する必要があり、編集や配信プラットフォームへのアップロードも人の手が必要だ。しかし、「STADIUM TUBE」を利用することで、これらの作業を現地に行かずに行うことができる。また、カメラ操作やweb配信といった知識を持たなくても利用可能な点も大きな特徴だ。

 コストをかけずに誰でも簡単に試合の模様が配信できることで、マイナースポーツの試合や、地域の小規模なリーグ戦、練習試合など、「中継が難しい試合」も手軽に発信できるようになる。実際に、「地域のスポーツ試合を撮影したいがコスト面で折り合わずに断念していた」という地方の放送局が、STADIUM TUBEを利用して試合配信を行っているという。

 NTTSportictによると、「従来の配信システムと違いコストがかからないため、新規事業の開拓にも役立つと評価してもらっている」とのことで、STADIUM TUBEを活用した新しいサービスの誕生にも期待できる。

教育機関での活躍も期待

「STADIUM TUBE」は試合の撮影・配信だけでなく、「コーチング」でも利用できる。特に「STADIUM TUBE Coachingモデル」では、アーカイブから自由視点視聴、分析ツールを利用可能なモードがあり、映像の中から自由に抽出し、動きなどを分析することができる。すでにプロスポーツチームはもちろん、学校などの教育機関で使われている。

 例えば、東福岡高校では「STADIUM TUBE Coaching」を導入して活用。他には、スペインのレアル・マドリード公認の晴海のスクールが、撮影した動画をダウンロードし、プレー解析に利用しているという。

 また、2022年7月には、サッカー、フットサル場「MIFA Football Park 福岡」に「STADIUM TUBE」が導入。同施設のサッカースクールでAIカメラを活用したコーチングサービスが開始された。試合映像を基にしたコーチングはもちろん、練習や試合の模様を保護者に配信し、「活動報告」としても活用されている。

 活動報告という意味では、学校の部活動での利用も今後増える可能性がある。新型コロナの影響で保護者の見学が制限されているが、やはり子供の試合が見たいという声は多い。とはいえ、撮影に人を割いたり、配信の知識を持つ顧問やコーチがどこにでもいるわけがないのが現状だ。しかし、STADIUM TUBEを使えば、簡単に練習や試合の模様を保護者に発信できるようになる。特に地方を中心に人手不足に悩む学校が多いが、「STADIUM TUBE」はそうした課題解決にも貢献できるはずだ。

 NTTSportictによると、現在は、サッカー、バスケットボール、ラグビー、アメリカンフットボール、バレーボールなど14競技の撮影に対応。また、常設型のAIカメラは約50の施設とメディアに導入されているとのこと。今後さらに導入数が増えると目されているが、スポーツ施設に必ず1台設置されているような未来が来る可能性もあるだろう。

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