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“直感”の先の“直覚”へ。皮膚感覚で理解できる“直覚技術”を研究開発するcommissure

連載
このスタートアップに聞きたい

 株式会社commissure(コミシュア)は、自分の身体のように対象を直接理解できる“直覚技術”の実現に向けて、独自の触覚提示技術や身体運動センシング技術を研究開発するスタートアップ。“直覚”とは、自分の身体の動きや直接触れたものの感覚のように、即座に理解できる感覚のことで、メタバース空間でのアバターとの連動、スポーツやリハビリの指導、ロボットや機器の遠隔操縦などへの活用が期待される。共同創業者である、代表取締役CEOの溝橋 正輝氏と、代表取締役CTOの堀江 新氏の2人に直覚技術の概要と事業展開について話を伺った。

代表取締役CEOの溝橋 正輝氏(右)と、代表取締役CTOの堀江 新氏(左)

“直覚”でモノや動きを即座に理解できる「触覚提示技術」とは?

 株式会社commissureは、東京大学先端科学技術研究センター 稲見・門内研究室、JST ERATO稲見自在化身体プロジェクトでの研究成果をもとに2023年1月に設立されたスタートアップだ。創業者の堀江氏は、東京大学大学院で触覚技術を研究し、JST ERATO稲見自在化身体プロジェクトでは特任助教として主導。その技術シーズを社会実装するために溝橋氏とともに株式会社commissureを創業した。

 溝橋氏は、大学卒業後に野村證券株式会社 に入社し、株式会社サイバーエージェント、株式会社セールスフォース・ジャパンを経て、2020年にH.R.I株式会社代表取締役に就任。スタートアップ経営の経験者を探していた堀江氏とは2022年の9月に出会い、大学発のビジネスに興味をもち、創業を決めたそうだ。

 “直覚”とは「自分の体の水準で理解している状態」のこと。物事の理解には、言語などによる「解釈による理解」、説明がいらない「直感的な理解」があるが、「直覚」はさらにその先の理解だと説明する。

 「私たちは、自分の体がどういう姿勢をとっているのか、手先の位置がどこにあるのか、意識した瞬間に知っています。知ろうとしなくても、すでに知っている状態にあるんですよね。この感覚を自分の体の外側にも拡張して、他者やロボットなどほかの対象物の情報を捉えられると、新しい世界が見えてきます」と堀江氏は語る。

 この直覚を実現するのが同社が研究開発する触覚提示技術「Skin-Stretch Distribution」だ。複数の回転素子を皮膚に接触させて協調的に刺激を与えてせん断変形(皮膚の水平方向の変形)の分布を起こす技術で、あたかもモノや人に直接触れているようなリアルな感覚を生み出せるという。ちなみに、類似の触覚提示技術には圧迫刺激や振動刺激もあるが、圧迫に比べてエネルギー効率が良く、振動に比べて刺激強度のレンジ幅が広い、といった優位性があるという。

 小さな回転素子を配列する構造なので、さまざまな形や大きさに応用が利くのも特徴だ。手足など特定の部位に装着するウェアラブル型やベッド型など、用途に応じたデバイスがつくれる。回転素子として使用するアクチュエーターは種類が豊富なので、構成次第で安価なゲームデバイスから、高精度の医療向け製品まで幅広い領域にスケールできそうだ。

 プロトタイプデバイスとして、椅子型の「Chainy(チェイニー)」と、ウェアラブル型の身体運動共有システム「MyoSynth(マイヨシンス)」の2つを開発している。

 Chainyは、背部と臀部にそれぞれ24チャンネルの回転素子を搭載し、これらを協調的に動かすことで、映像コンテンツと連動した触覚刺激が得られる。

 MyoSynthは、皮膚をひねる刺激を分布させることで筋肉の動きに応じた刺激を生成し、運動イメージを伝達する装置だ。スポーツやリハビリでは、トレーナーの動きを真似しようとしても、どの筋肉や関節をどう動かせばいいのかイメージするのは難しい。この装置を使うと、言葉や映像では伝わりにくいトレーナーの体の動きを、自分の体でリアルに体験できる。さらに、回転素子と一体化したセンサーが組み込まれており、指導を受ける側の動きをフィードバックすることでより効率的な指導が可能だ。

理想はハプティクスを知覚しない状態にある


 

 ハプティクスといえば、スマートウォッチをはじめとする振動による伝達などが思い浮かぶのではないだろうか。だが研究領域を見渡すと、振動以外にも圧迫刺激など、さまざまな触覚提示が研究されているという。皮膚へのせん断変形による触覚刺激もその1つだ。

 皮膚は体内で一番大きな臓器とも言われている特殊な領域であり、脳と同様に外胚葉から発達したため、高度な情報処理機能があるという。せん断変形でより少ないエネルギーで強い刺激が提示できるのも、皮膚にも常に張力が働いているおり、間接として伸び縮みなどの味付けがしやすい。服の上からでも精度が高く、電気刺激や光学式のものと比較してもアドバンテージになる。

 市場拡大に向けては、大手企業とのコラボを中心に展開していく計画だ。共同研究から多くのデータが蓄積されるほどに精度も上がる。デバイスの製造開発は大手に任せ、commissureは技術基盤のサブスクリプションモデルでの収益化を考えているとのこと。

 現在は、モビリティ、スポーツ、ヘルスケア、エンタメ系の4領域の企業との連携交渉を進めているそうで、早ければ2024年初頭には、体験型のコンテンツなどに導入される見込みだ。

 例えば、映像コンテンツに合致した触覚刺激提示によって、完全な黒子としてある背景になる状態が理想だという。「何かしら機会が動いている状態はまだまだ運動教示でも同じ。映像で見ている動き、直接感じられるような自分の体が勝手に動く、そのものが流れ込んでくるようなそういったスキルの転移がいつの間にかできるはず」と堀江氏。

 「5倍10倍よくないと人はお金を払わない。革新的なマーケットをつくりたい」と溝橋氏は意気込みを語った。

関連サイト
https://commissure.co.jp/

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