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前田知洋の“マジックとスペックのある人生” 第175回

個人でもできる!? 理想のレーザー加工機を探す旅

2022年09月13日 16時00分更新

文● 前田知洋 編集●ASCII

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レーザー加工業者を探すのは、意外に難しい

 筆者はここ数年、ずっと探し求めていた物があります。それはレーザー刻印機です。

 レーザー刻印をよく知らない方でも、AppleのiPhoneやiPadに「メッセージや名前を彫ってくれるサービス」と聞けば、ピンとくるかもしれません。

 筆者は、マジックの道具作りや、マジシャンとして自分のロゴを入れたアメニティ製作など、「レーザー刻印/加工ができれば、新しいマジックができるかも……」と、長年、夢を膨らませておりました。

 思い起こせば、子供の頃から「学習机があれば、勉強するのになあ……」と形から入る物欲人生を過ごしております(汗)。

 当初は「レーザー加工機を自分で所有しなくても」と思いながら、いろいろな加工業者を探してみました。しかし、サービス業者は、自社で用意した素材に加工することがほどんど。こちらが持ち込みでの加工を受けてくれる所は、ほぼありません。

 その理由が、自分でレーザー刻印をするようになってからわかってきたように思います。レーザー加工は、素材ごとにレーザーとの相性があり、似た木材や金属であっても、材料ごとにレーザーの出力や移動速度の調整(ゆっくり動かすと深く掘れる)などが難しいからです。

 つまり、まったく同じ素材でテストを繰り返すことができれば、きれいにレーザー加工ができますが、「持ち込み」で「一点もの」(たとえば、時計の裏ブタなど)への加工は、リスクがあって難しいのでは……。筆者はそう推測しています。

レーザーの種類とレーザー刻印の原理

 アマゾンなど、ショッピングサイトで「レーザー刻印機」「レーザー加工機」で検索すると、それこそ数千円から、40万円を超える製品まで、いろいろあります。

 同じように思えるレーザー加工でも、レーザー出力やレーザー波長の違いなどがあり、初めて購入する筆者のようなレーザー初心者は戸惑うばかりです。

 まずはレーザー加工の原理を少しだけ解説してみます。

レーザー加工機のヘッドの種類

 レーザーで刻印や切断をするためには、レーザーが当たる位置を移動させる必要があります。それには、主に3つの方式があります。

 1つ目は、ヘッドに内蔵されたレーザーの角度を変え、ヘッドは動かさずに光線を変える方式。稼働部分が少なく壊れにくいメリットがあります。その反面、加工範囲が狭くなったり、ヘッドから遠い場所のフォーカスが外れ、レーザー出力が弱まったりするデメリットがあります。

 2つ目は、ベルトとモーターを使い、ヘッド部分を縦横に移動させる方式です。ヘッドから材料までの距離が変わらないことで安定した加工ができます。しかし、加工機の底面のサイズが大きくなるデメリットがあります。

 3つ目は、ヘッドを動かさず、加工する材料を動かして、刻印したり切断したりする方法です。裁縫につかうミシンをイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。10センチ×2メートルのサイズの刻印ができたり、円筒形の全周に加工できたりするタイプもあります。

レーザーの波長の違いにより色が違う

レーザーの種類

ガスレーザーの光源装置(He-Neレーザー)

 また、「レーザー」といっても、さまざまな種類があります。

○UVレーザー(波長約355nm)素材表面の浅い刻印に使われます。発色が良く、熱を発しにくいことから、材料にダメージを与えにくいのが特徴です。

○ブルーレーザー(波長約450nm)Blu-rayにも使われる半導体レーザーの出力を上げ、近年レーザー刻印や加工に使われはじめました。赤色のレーザーが苦手な銅にも加工ができるのも特徴です。

○基本波長レーザー(波長約1,064nm)よく知られるレーザーがこの波長です。レーザーを増幅させ、高出力で金属に深く刻印できるのが特徴。

○CO2レーザー(波長9200〜10800nm)ガスレーザーともよばれ、赤外線領域なことから、肉眼では見えない無色のレーザーです。高出力で金属の切断、穿孔、溶接などにも使われます。また、水にエネルギーを吸収されやすいことから、外科手術に使われるのもこのレーザー。

ガスレーザーの構成。1. レーザー媒質。2. 励起用エネルギー。3. 全反射鏡。4. 出力結合鏡。5. レーザービーム

ハンドヘルド型なら、壁面や自動車のボディにも刻印可能

 さらに一般向け加工機には、ハンドヘルドと呼ばれる、手で持てる加工機もあります。こうしたタイプは、材料に当てて刻印できるのが特徴です。

 たとえば、大きな家具の側面や自動車のボディなどに直接加工できるほか、バッテリーを搭載しているタイプもあるので、屋外での加工もできます。ただし、コンパクトである必要があるため、大きな光源が必要な高出力なガスレーザーではなく、出力が弱めになってしまう難点があります。

無限の選択肢から筆者が選んだのは……

 価格、サイズ、レーザーの種類、レーザー出力やヘッドのスタイルなど、無限の選択肢から、筆者が選んだレーザー加工機は……? 次回「レーザー加工機が家にやってきた」で公開することをご容赦いただき、楽しみにしていただけることを願っております。

 マジックのタネ明かしではありませんが、次回の内容をチラリと申し上げますと「選択に大満足をしつつ、レーザー加工の奥の深さに驚いた」、そんな内容でございます。

 以下のツイートは、2022年9月10〜11日に開催したマジックショーのティザー動画を紹介するものです。この動画に一瞬出てくるレーザー加工機に、どうぞご期待ください。

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、チャールズ英国王もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。

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