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再エネで要注目。特許から見るリソースアグリゲーションの動向

連載
知財で読み解くITビジネス by IPTech

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スタートアップと知財の距離を近づける取り組みを特許庁とコラボしているASCIIと、Tech企業をIP(知的財産)で支援するIPTech特許業務法人による本連載では、Techビジネスプレーヤーが知るべき知財のポイントをお届けします。

はじめに

 電力負荷の平準化や再生可能エネルギーの供給過剰の吸収、電力不足時の電力供給の円滑化などへの期待から、電力の需給バランスを調整する「リソースアグリゲーション」が注目されています。本稿では、カーボンニュートラルの実現に向けて、今後、さらなる市場の拡大が予想される再生可能エネルギー事業に関連して、現在注目されているリソースアグリゲーションについて、特許情報から見える動向を解説します。

再生可能エネルギーとともに注目されるリソースアグリゲーション

 2050年におけるカーボンニュートラルな社会の実現を促進するために、2022年7月に、政府よりGX(グリーントランスフォーメーション)実行推進担当大臣が新設される方針が発表されました。

 これに関連して、経済産業省は2021年、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定しました。この戦略では、電力部門の脱炭素化は大前提とされ、再生可能エネルギーを最大限導入する方針が示されています。また、エネルギー基本計画素案によれば、2030年までに再生可能エネルギーの割合を現状の2倍程度にすることが計画されています。図1に経済産業省のエネルギー基本計画素案を示します。

図1:経済産業省のエネルギー基本計画素案(2021年7月) (出典:"脱炭素"の全体感を掴もう!?大変革を起こすスタートアップの最新動向まで? ,STR/VE:https://note.com/strive/n/n273c85ec89c4

 再生可能エネルギーに関連して、国内では、2022年4月からFIP制度と呼ばれる、売電価格に一定の補助額を上乗せする制度がスタートしています。これにより、再生可能エネルギーの自立普及・自由競争が促進されることが期待されています。

 再生可能エネルギーが今後普及すると、発電事業者の需給バランスの調整を行う必要があり、需給管理や市場取引を代行するリソースアグリゲーションが必要となります。

 本稿では、カーボンニュートラルの実現に向けて、今後、更なる市場の拡大が予想される再生可能エネルギー事業に関連して、現在注目されているリソースアグリゲーションについて、特許情報から見える動向を解説します。

リソースアグリゲーションの概要

 資源エネルギー庁は、リソースアグリゲーション(エネルギー・リソース・アグリゲーション)に関する事業について、以下のとおり定義しています。

ERAB(Energy Resource Aggregation Business):一般送配電事業者、小売電気事業者、需要家、再生可能エネルギー発電事業者といった取引先に対し、調整力、供給力、インバランス回避、電力料金削減、出力制御回避等の各種サービスを提供する事業

 昨今、大規模発電所に依存した従来型のエネルギー供給システムが見直され、需要家側のエネルギーリソースを電力システムに活用する仕組みの構築が検討されています。

 例えば、工場や家庭などが有する分散型の小規模なエネルギーリソースを、 IoT技術を活用した高度なエネルギーマネジメントシステムにより集約(アグリゲーション)し 、遠隔・統合制御することで、電力の需給バランスを調整することができます。

 このような、電力の需給バランスを調整するリソースアグリゲーションにより、電力負荷の平準化や再生可能エネルギーの供給過剰の吸収、電力不足時の電力供給の円滑化などが期待されています。

図2 リソースアグリゲーションの概要 (出典:エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネスハンドブック,資源エネルギー庁:https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/vpp_dr/files/erab_handbook.pdf

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