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ベータマックスからPS5まで! ソニー製品栄枯盛衰物語 第6回

光からの使者「コンパクトディスク」の登場は音楽市場を大きく変えた

2022年08月29日 12時00分更新

文● 君国泰将 編集● ASCII

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「CD? なにそれ?」と言われる時代になった

 皆さんCDって知ってますか? ASCII.jpの大半は知っているかと思いますが。この前、中学生の娘に「CDって何?」って聞かれました。TWICEの特典付きCDの“特典”が欲しかったらしいのですが、そもそもCDという媒体をよくわからなかったようで、その事実に衝撃を受けました。

最近あまり見なくなった光学メディア

 最近ではアレクサに音楽流してって言ったら音楽が流れるし、スマホでもストリーミングなどで音楽が聴ける環境が当たり前になってますからね……。

CDはソニーグループの総力を結集してできた

 さて、CDというのはコンパクトディスクの略で、デジタル情報を記録する12cmの円盤のことです。音楽を聴く媒体として、それより以前はいわゆるアナログレコードがありまして、1982年ごろにCDが登場し、音楽媒体の世代交代がありました。

 そのCD、もともとはソニーとフィリップスが共同開発したものでした。どうしてこのサイズが決まったかというと、ベートーベンの「第九」を代表するクラシック音楽の演奏時間は、75分あればほとんどの曲が収録できるという理由から、そのデジタル音声を収録できる直径12cm(最大収録時間:74分42秒)と決まったそうです。そのほか、サンプリング周波数44.1kz、量子化ビット数も16ビットという定義がこの当時に決まったのでした。

 CDはレコードに比べるとはるかに小さいし、原音により近い良い音を繰り返し聴けるということがレコードの利便性を圧倒しているのは明らかでした。キラキラと光るCDをはじめて買った時のドキドキは今でも忘れられません。

 ただ、LPレコードのジャケットのほうが大きくて、買ったときの感動(所有欲)は小さくなったなーと感じていました。

据え置き機だけじゃなく
ポータブルプレイヤーも発表したソニー

 ソニーは、初のCDプレーヤー「CDP-101」を1982年に発売。価格は16万8000円。名称をつけたのは、かつてのオーディオ事業部長の出井伸之氏だったそうです。同時に、CBS・ソニーから世界初のCDソフトを50タイトル発売。記念すべき最初のCDソフトはビリー・ジョエルの「ニューヨーク52番街」でした。

ソニー初のCDプレーヤー「CDP-101」(1982年)

 CDという新しい規格は、ハードウェア(ソニーの各事業部)とソフトウェア(CBS・ソニー)が連携し、まさにソニーグループが一致団結して作り上げた規格といって良いでしょう。そしてその2年後には、持ち歩けるタイプの「D-50」を発売。エッジのきいたシャープなデザインで、そのままCDケースの4枚重ねたサイズ感でした(13.4cm四方の正方形で厚さ36.9mm)。

 液晶ディスプレーが付いていて、演奏番号や時間、残り曲数を表示してくれてちゃんと情報を把握できる事が新時代の到来を感じさせました。ただ、本体の重量は590gとお世辞にも軽いとは言えず、分厚いショルダーベルトを付属しているのでこれを肩からぶら下げて使うというスタイルだったのです。それでも、たったの2年という短期間でポータブルタイプを作る事にも驚きですが、CDプレーヤーと機能的にはほぼ同じままで価格は破格の4万9800円というから衝撃でした。

 据え置き型CDプレーヤーの約3分の1という価格で、しかも持ち運んで聴けるという魅力で爆発的に売れることとなり、結果としてCDソフトも一挙に普及しはじめるのでした。

CDプレイヤー発売から2年後に登場したポータブルCDプレイヤー「D-50」(1984年)

 その後も充電池を内蔵したり、リモコン対応、チューナー搭載、アンプ内蔵、テンキーやオートエディット機能を備え進化を遂げていきます。当時、このポータブルタイプの名称は、カセットタイプのウォークマンと双璧をなす「ディスクマン」というネーミングが付いていましたが、1997年から「CDウォークマン」に名称変更しています。

 カセットテープは、あくまでもレコードやラジオから録音したものなのに対して、CDは音源がメディアそのもので音質は比べものにならないほど良く、しかもワンボタンで選局してすぐに聴けて、小型で軽量、半永久的に使えるという、アナログレコードからすれば夢のようなアイテムでした。

 カセットタイプのウォークマンが全盛のころに、サイズの大きいCDそのものを持ち運んで聴いているという、ちょっとした優越感みたいなものがこの頃にはありました(今で言うマウントでしょうか)。ただ、CDにも弱点がありました。それは音飛び問題です。特に初期のころはよく音飛びしていた事を覚えています。しかしそれも、音をいったん溜め込むことで音飛びを防ぐ機能が実装され、15周年を記念して発売されたCDウォークマン「D-E01」には、音を飛ばないようにする究極の音飛びガード機能「G-PROTECTION」という機能そなえるなど、進化の手を緩めることはありませんでした。

CDウォークマン15周年特別モデル「D-E01」。フタを開けずにディスク交換ができた

レコードとCD、どっちが音が良い論争も今は昔
メインストリームはサブスクリプションへ

 技術の変わり目にはよくあるあるの事例として、アナログレコードとCDはどっちが音がいいのか?論争も起こりましたね。アナログレコードには、CDには収録されていない周波数帯域の音が記録されているとか、あたたかみがあるとか。

 CD登場時にまだ小学生だった自分にとっては、そんなことよりもアナログレコードを再生するのに針を折ってしまったとか、LP版とEP版の回転数を変えるのを忘れてとんでもない音が流れたとか、大変な経験を沢山したので、単純にCDを入れればA面とB面をひっくり返すこともなく聴けることのほうがはるかにステイタスだったように思います。それでも、8cmのシングルCDにアダプターをくっつけるのは相当な苦痛でしたけど。

 デジタルの音のクリアさや単純に小さいという利便性もあわさって広く定番化していったCDも、ハイレゾーディオの登場やサブスクリプションというさらなる高音質とノンメディアという新たな時代の流れに淘汰されつつあります。

 結局、娘がCDを知り得たきっかけも、CDそのものではなくて特典グッズだったというところに悲哀を感じざるを得ません。そういえば、音質を追求するためのスーパーオーディオCDとかBlu-spec CDといった規格や、コピーコントロールCDなんていう黒歴史もあった事を思い出しましたが、それはまた別の機会に。

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筆者紹介───君国泰将

ソニー(とガンダム)をこよなく愛し、ソニーに生きる男・君国泰将氏

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