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「製品知識」に加えて「実践力」の強化も支援、非IT企業も含む幅広いパートナー獲得を目指す

「エコシステムは最大の差別化要素」セールスフォースがパートナー拡大戦略を紹介

2022年06月17日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 セールスフォース・ジャパンは2022年6月15日、日本国内におけるSalesforceエコシステムの拡大戦略を打ち出す「アライアンス戦略発表会」を開催した。

 現在、国内における同社商談の70%にパートナーが関わっており、コンサルティングパートナーを通じたビジネス金額は前年比24%増、AppExchangeパートナーによるビジネス金額は前年比54%増になっているという。

 今回の発表会では、「Salesforce Customer 360」事業を展開するうえで、パートナーが顧客を理解し、課題を発見する「実践力」を備えるための教育プログラムや資格制度を強化すること、AppExchangeパートナーに対する支援を強化すること、Salesforce地域パートナープログラムを推進すること、戦略的OEMアライアンスの国内展開を推進することなどが紹介された。

セールスフォース・ジャパンのアライアンス事業概況

セールスフォース・ジャパン 専務執行役員 アライアンス事業統括本部 統括本部長の浦野敦資氏、同 執行役員 AppExchange事業&アライアンス推進本部兼韓国アライアンス担当の池谷充弘氏、同 アライアンス事業統括本部パートナーエコシステム本部 本部長の原田考多氏

国内のコンサルティングパートナーは3年間で3倍に拡大

 米Salesforce.com 共同CEOのブレット・テイラー氏は、「Salesforceのテクノロジーを真似することはできても、Salesforceのエコシステムを真似することは難しい。これがわれわれの最も強力な差別化要素だ」と述べて、パートナーエコシステムを重視する姿勢を強調している。

 IDCの予測によると、セールスフォースと同社パートナーのエコシステムが実現する「Salesforceエコノミー」は、2021~2026年の期間に全世界で933万人、日本単独で44万人の新規雇用を生み、全世界で1兆600億ドル、日本単独で974億ドルの新規事業収益を創出するという。

 セールスフォース・ジャパン 専務執行役員 アライアンス事業統括本部 統括本部長の浦野敦資氏は、「セールスフォース・ジャパンが日本で1ドルのビジネスを創出すると、パートナーエコシステムに6.5ドルの収益がもたらされる」と語る。その背景には複数のCustomer 360製品を組み合わせて導入する「クロスクラウド」需要の増加があり、パートナービジネスの拡大がCustomer 360事業の拡大につながるという。

複数のSalesfoce製品を導入する「クロスクラウド需要」が高まっており、パートナーの役割がより重要に

 国内のSalesforceエコシステムを形成するパートナーは、再販やインプリメンテーションの「コンサルティングパートナー」(約460社)と、OEMやISVといった「AppExchangeパートナー」(約200社)に大別される。いずれも増加を続けるが、なかでもコンサルティングパートナーは「3年間で3倍」の勢いだという。「パートナー同士が連携したり、協業したりすることで、日本市場においても巨大なエコシステムを形成している」(浦野氏)。

Salesforceパートナーは「Salesforce市場の拡大」「カスタマーサクセスの実現」「ベストプラクティスの提供」という3つの役割を果たしている

 また同社 執行役員 AppExchange事業&アライアンス推進本部の池谷充弘氏は、今後はIT業界やスタートアップだけにとどまらず非IT企業ともパートナーシップを結び、Salesforceプラットフォームを活用したDX推進を行いたいとした。

複数クラウド導入需要の拡大に合わせ「製品知識」「実践力」強化を支援

 今年度のエコシステム拡大戦略として浦野氏は、「パートナーのビジネス成長の支援」と「パートナーエコシステムの拡大・強化」という2点を掲げた。

 まず「パートナーのビジネス成長の支援」では、クロスクラウドの需要拡大に合わせて「製品知識」と「実践力」の2本柱で支援を拡充していく。

「製品知識」と「実践力」の2本柱でパートナー支援を拡充していく

 具体的には、パートナー向けの学習プラットフォーム「Partner Learning Camp」を現在の74講座から2023年1月末までに150講座に拡大するほか、昨年度は延べ3395人が参加した製品ハンズオンセミナーをオンデマンド化していく。さらに、従来の資格制度で範囲外となっていたTableauやMuleSoft、Slackなどの製品や機能に対する新たな資格試験を日本語化する。加えて、新資格制度である「Accredited Professional」により、最新製品の体系的学習とスキルの対外的証明を可能にするという。

 「複数のクラウドサービスの資格を持つ認定者は、この1年間で46%も増えている。日本語環境での資格試験を増やすことで、クロスクラウドに対する体系的な学習を支援することができる」(浦野氏)

 なお現在、国内のパートナー企業における認定資格者数は約1万人で、3年前の3700人から2.7倍に増加している。同社 アライアンス事業統括本部パートナーエコシステム本部 本部長の原田考多氏は、2019年にスタートした「DXアクセラレーションプログラム」において、パートナーのキャリアチェンジ/リスキル支援、学生向け教育支援、非IT人材育成・就業支援プログラム「Pathfinder」などに取り組んできたことを紹介。Pathfinderでは、これまで49人が認定アドミニストレータ資格を取得する成果を生んでおり、2022年5月の募集規模を前回の10倍である1000人に拡大するとしている。

過去3年間の取り組みにより、パートナーの認定資格者は1万人に拡大。学生や非IT人材の資格取得も支援している

デロイトトーマツと共同で取り組む非IT人材の育成・就業支援プログラム「Pathfinder」。募集規模を10倍に拡大する

 一方、今年度から注力する「実践力」については、Salesforceのプロジェクトマネージャーに必要な要素を定義してトレーニングを拡充し、カスタマーサクセスに向けたナレッジ展開を強化する。「カスタマーサクセスグループ内に“パートナーサクセス”をミッションとする組織を新設。プロフェッショナルチームに蓄積しされているノウハウをパートナー向けに公開していく基盤が整った」(原田氏)。

 具体的には、ダッシュボードワークショップやカスタマージャーニーワークショップといった実践的なワークショップを実施し、カスタマーサクセスのナレッジ展開を強化していく。

 さらに、製品や業界に対するパートナーのスキルと実績を可視化する「Navigator Program」も本格展開する。これは、パートナーの有する知識、経験、品質の測定結果に基づき3つのグレードに分類するもの。国内におけるNavigator獲得パートナー企業数は57社で、440製品が認定されており、最高グレードの「Expert」製品は9製品(2022年5月時点)。海外では1万2000以上の製品がNavigatorを獲得しており、パートナーの専門性を訴求し、それに基づく提案が進められているという。なお、AppExchange上のコンサルティングパートナータブから、Navigatorに基づくパートナー検索が可能だ。

「Navigator Program」の概要

非IT企業のOEM/ISVパートナー化支援も進める

 もうひとつの「パートナーエコシステムの拡大・強化」では、より多くの企業に対するDX支援展開を目的として、「新たな協業スキームを通じた新規需要の創出」「戦略的OEMアライアンス」「地域エコシステムの活性化と地域間連携の強化」に取り組む。

 このうち「戦略的OEMアライアンス」では、自動車メーカーのフォードにおけるSalesforce OEM外販事例を紹介した。フォードの商用車部門が展開するSaaS「VIIZR」は、Salesforceプラットフォーム上に構築されたもので、商用車の顧客である配管工事業や電気工事業、ケータリングサービス業、造園業などの中小企業向けに、フィールドサービス管理環境を提供している。

 「VIIZRは、非IT企業であるフォードが中堅中小企業に最適化したSaaSを提供するものであり、商用車に加えてSaaSを提供することでプラットフォーマーへのシフトチェンジを図った事例。日本でも、自社ノウハウや業界ノウハウを活用したアプリケーションの開発が進んでおり、陣屋やウチダレック、クロスエイジなどが、非IT企業でありながらもローコード/ノーコードのメリットを生かし、Salesforceプラットフォームを活用したSaaS事業を展開している」(池谷氏)

Salesforceプラットフォーム上に構築したアプリを外販するOEMアライアンスも拡充していく

 こうしたOEM/ISVパートナーへの支援策として、製品開発の戦略支援による「製品力強化」、マーケティング支援やAppExchange特化イベントを通じた「マーケティング強化」、商談を深化させたり、ハンドリングするためのSales Playセッションを通じた「営業力強化」に取り組む。パートナーの見込み顧客獲得機会として、イベントや共催ウェビナーを開催するほか、営業強化トレーニングも進めるとしている。

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