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モーダル小嶋のTOKYO男子めし 第45回

590円が630円になっていました:

松屋のごろごろ煮込みチキンカレーが40円値上げしたことで動揺しているのは自分だけかもしれない

2021年05月06日 17時00分更新

文● モーダル小嶋 編集●ASCII

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「ごろごろ煮込みチキンカレー」
松屋
4月27日発売
630円
https://www.matsuyafoods.co.jp/matsuya/news_lp/210427.html

たかが40円、されど40円

 たしか「ナニワ金融道」だったと思いますが、「大きい買い物をするときは値段の差に敏感になるのに、家のように(一生に一度レベルの)高額なものを買うとなると、逆にあまり考えなくなってしまう」という人間の心理が、マンガの中でうまく描かれていたことがあります。

 これはアスキー編集部でもよくあることで、日用品などとなると50円〜100円の差でも敏感になるけれど、デジタルのガジェットとなると数千円高くても、すぐ手元に届けばいいやろ! みたいな発想で、ほいほいとカートに詰め込む人がいます。

 それはさておき、松屋は「ごろごろ煮込みチキンカレー」を4月27日から販売しています。並630円、大盛730円。

 松屋のカレーシリーズで人気の通称「ごろチキ」が期間限定で復活。根強いファンも多いという松屋特製オリジナルカレーソースを使用し、鉄板でジューシーに焼き上げたチキンをごろごろ入れて仕上げたカレー。

 「チキンを入れてゴロゴロ感のあるカレーを作ってほしい」という松屋創業者である松屋フーズホールディングスの会長のひと言がきっかけで開発されたそうです。2016年の初登場から5周年だとか(※初登場時の名称は「ごろごろチキンカレー」)。

 今回の登場は2020年4月に登場してからおよそ1年ぶり(関連記事)。なお、昨年登場の際は並590円、大690円だったため、40円値上げされています。

 ミニ牛皿が割安で付けられるごろチキ限定のセットもあります。ミニ牛皿の牛肉をちょい足しできる「ミニ牛皿セット」、生野菜も楽しめる「生野菜セット」はいずれも並690円、大盛790円。なお、カレーソース単品は並510円、大盛550円。

こちらはミニ牛皿セット

 筆者はごろごろ煮込みチキンカレーをことのほか愛好しておりまして、過去に何回か記事にしています(参考例:「松屋『ごろごろ煮込みチキンカレー』との長いお別れ」)。聞くところによれば、アスキーとまったく関係ない新聞社の人が「ASCII.jpに松屋のカレーで変わった文章を書かれる人がいらっしゃいますよね?」と編集部員に話しかけてきたこともあったそうです。恐縮です。

またお会いしましたね

 今回のごろごろ煮込みチキンカレーは、ゴールデンウイーク前に登場したこともあり、遠出はしにくい時節柄、テイクアウトなどで1日1杯ペースで食べていた人もいるでしょう。筆者のことなんですが。

 それはそれとして、ごろごろ煮込みチキンカレーの何がすばらしいか。

 スパイスがしっかり効いたキレのある味のカレーソースに、チキンがしっかり“ごろごろ”入っている。これは当たり前のようで、とても重要なことです。カレーがちゃんとしている、チキンの量がちゃんとしている。それができているメニュー、意外と少ないものです。素朴でありながら、偉大。

 しかも、コンビニ弁当や定食店のランチと大差ない価格。さらに、全国展開しているチェーンで、注文すれば数分で出てくる。だから、いつでもどこでも楽しめる。この圧倒的なサステナビリティ! 持続可能な開発目標は松屋にあったわけです。

このチキンのサイズで救われた人も多いと聞きます

 だから、「もっとおいしいカレーがある」とか、「もっと本格的なカレーがいい」とか、そういう話はあまり意味がない。松屋のメニューとして存在することが大事。

 カレーの名店に行って1200円を出せば、ごろごろ煮込みチキンカレーより“おいしい”ものは食べられるかもしれないけど、そこは問題ではないのです。それなりのものがすぐに出てくる、しかも590円で。そこに大きな価値があったのです。

 そういったわけで、それが値上げすると知ったときに、やはり動揺はあった。ちなみに松屋フーズに値上げの理由を問い合わせたのですが、返信はいただけておりません。

値上げを気にしてるのは「自分」だけ……ってコト!?

“ごろごろ”と銘打ったチキンが、ほんとうにごろごろ入っています。文句のつけようがない

 ごろごろ煮込みチキンカレーが40円値上げしたことに動揺したのですが、しかし、よく考えますと、「それほど騒ぐことなのか」という気もしてくる。400円値上げして590円が990円になったら「えっ……」となりますが、40円値上げして630円だしなあ。

 あるいは、価格を100倍して、5万9000円の商品が6万3000円になったと考えるなら、けっこうなことだと思います。差額4000円ですから。しかし、たかが40円ではありませんか、食事でそこまで躊躇することでしょうか……と言われると、「気にしているのは自分だけなのかな」と考えてしまうような。

プラス60円でミニ牛皿を付けられます

 ちなみに、ごろごろ煮込みチキンカレー限定のセットとして、プラス60円でミニ牛皿か生野菜が付けられます。後者は食べ慣れている人も多いですが、ミニ牛皿はチキンカレーを「カレギュウ」にできるのでおもしろい。

 とは言うものの、なにしろチキンが大きいので、ミニ牛皿では牛肉の量が少なく、いまいちバランスが取れていない気がします。あくまで終盤の味変的に使うためのアイテムかと。

カレギュウにできますが、ちょっと量が少ないかな

 最近、松屋の限定メニューは、過去に登場したものが復活しても、値上がりしていることが少なくない。その流れから、「ごろごろ煮込みチキンカレーよ、お前もか」とカエサルみたいに言いたくなりましたが、実のところ、この嘆きは、このメニューに思い入れがある人だけのものかもしれません。

 好きなものや得意ジャンルがある人は、それらに詳しくなってくると、愛好している物の“差異”がやたらと気になってくることがあります。

 クラシック音楽を例に取ると、20世紀に活躍した指揮者のヴィルヘルム・フルトヴェングラーの録音など、21世紀になっても続々と「最新リマスター」音源が出てきて(ほんの一部をのぞいて大半がモノラル録音)、自分にはそれらの違いがわかったりわからなかったりするのですが、マニアには細かな差も聴き取れるそうな。

 あるいは、自作PCの世界もそうですよね。たくさんの種類があり、ある人はコスパにこだわりつつ性能を落とさないように組みますし、ある人は約1670万色に発光させるわけですが、そういう人たちにはパーツのわずかな違いも一目瞭然、あちらのショップよりこちらのショップのほうが安いよ、ということが頭に叩き込まれているわけです。

不変の味噌汁。変わらないことに価値がある(かもしれない)

 そういったわけで、ごろごろ煮込みチキンカレーが590円から630円になったことで動揺しているのは、その差異をことさら気にしてしまう愛好者の自分だけではないか、という不安もあるのです。

 世間の人たちは、「松屋でたまに売ってる、600円ぐらいの、チキンが入ったカレー」ぐらいの認識なのではないかしら。「40円高くなったの? そんなもんじゃない?」と言われたら、そうかもしれないし……。

40円の値上がりについてあなたはどう思いますか

 まあ、しつこいようですが、値上げしたことは確かですけれど、40円だからなあ。20回頼んだら20×40=800円の差額ですが、普通の人は松屋のメニューを20回も食べませんよね……。食べて数回の人にとっては、どうでもいいことなのでは……。

 40円の値上げについてうじうじ言いましたが、630円になったとて、ごろごろ煮込みチキンカレーが、松屋の限定メニューの中でも畢生の傑作であることに間違いはありません。今のうちに、たくさん味わっておきましょう。


モーダル小嶋

 

1986年生まれ。担当分野は「なるべく広く」のオールドルーキー。編集部では若手ともベテランともいえない微妙な位置。一人めし連載「モーダル小嶋のTOKYO男子めし」もよろしくお願い申し上げます。

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