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通信事業者/サービスプロバイダーの“デジタルジャーニー”支援、ローカル5G展開も容易に

5G NW/エッジ対応強化、レッドハットCTOが最新版「OpenShift」を語る

2020年02月10日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp 写真● 曽根田元

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 レッドハットでは2020年1月15日、Kubernetes 1.16ベースのコンテナプラットフォーム最新版「Red Hat OpenShift Container Platform 4.3」をリリースした。レッドハットによると、このバージョンから5Gネットワーク/5Gエッジ関連の機能対応が本格的にスタートしたという。さらに今回、このOpenShift 4.3と連携する分散ストレージ「Red Hat OpenShift Container Storage 4」もリリースされている。

 この2つの新リリースと、レッドハットの5Gサービスプロバイダー向け戦略について、 米レッドハットCTOのクリス・ライト(Chris Wright)氏、テレコム(通信事業者)をはじめとするインダストリー担当グローバルVPのダレル・ジョーダン=スミス氏、そして日本法人 サービスプロバイダー担当チーフアーキテクトの杉山秀次氏に話を聞いた。

「Red Hat OpenShift Container Platform」は、Kubernetesベースのコンテナプラットフォーム。さまざまなオープンソーステクノロジーを組み合わせ、CaaS/PaaS/FaaSの機能を提供する

(左から)レッドハット日本法人 サービスプロバイダー担当チーフアーキテクトの杉山秀次氏、米レッドハット CTOのクリス・ライト(Chris Wright)氏、同 Global VP, Vertical Industries & Accountsのダレル・ジョーダン=スミス(Darrell Jordan-Smith)氏

「5Gネットワーク」への適用拡大目指すOpenShift 4の方向性

 まずは最新版OpenShift 4.3の概要と特徴から見ておこう。杉山氏は、5Gネットワークを構成するエッジコンピューティング基盤としてOpenShiftを適用可能にする機能拡張が、このバージョンから本格的にスタートしたと説明する。

 その前提として、OpenShift 3と4ではプラットフォームの目指す方向性に大きな変化があるという。OpenShift 3当時のKubernetesでは、パブリッククラウドやプライベートデータセンター(オンプレミス)での利用を中心に考えて開発されていた。そのため、たとえば単一のコンテナPodに複数のネットワークインタフェースに対応させる仕組みがなかった。

レッドハット日本法人 サービスプロバイダー担当チーフアーキテクトの杉山秀次氏

 「Kubernetes開発をめぐる当時の議論を見ると、クラウドネイティブな世界の人は『トラフィックはアプリケーションレイヤーで分離させればよく、複数ネットワークインタフェースへの対応は不要だ』と主張していた。しかし、そのままではやはり、5Gネットワークの世界に組み入れることができない」(杉山氏)

 現在のOpenShift 4では、通信インフラ環境にもOpenShiftが導入しやすくなるよう、こうした部分の機能拡張を図っている。たとえば、前バージョンのOpenShift 4.2からは「Multus CNI(Container Network Interface)」というネットワーク機能がGA(一般提供開始)となり、単一のPodが複数のネットワークインタフェースを持てる基盤ができた。さらにMultusは、プラグインで多様なネットワーク機能を追加することもできる。

OpenShift 4では「Multus CNI」が組み込まれ、単一のPodが複数のネットワークインタフェースを持てるようになった。SR-IOVプラグインも用意されている

 OpenShift 4.3では、Multusを介してSR-IOV(シングルルートI/O仮想化)にも正式対応(GA)した。ネットワーク処理を物理NIC側にオフロードするSR-IOVに対応したことで、標準のCNIでは対応できなかった高速ネットワーキングも実現する。「たとえばエッジネットワークでマルチキャスト通信を行いたい場合」などに有用だと、杉山氏は説明する。

 ほかにもOpenShift 4.3では、5Gのアクセスネットワーク環境への展開を前提として、OpenShift標準のSDNでIPv6への対応(プレビューリリース)、またPTP(高精度時刻同期プロトコル)への対応も行っている。

5G環境への適用を前提に、IPv6対応やPTP対応などの機能強化も進めている

 杉山氏は、こうした柔軟な機能拡張を可能にしているのがKubernetesの「Operator Framework」だと説明した。このOperatorは、Kubernetes環境上でステートフルなアプリケーションクラスタの展開や運用を自動化する仕組みである。レッドハットではすでにこのフレームワークOpenShift 4に統合しており、「OperatorHub.io」リポジトリを通じてさまざまなアプリケーション環境の導入を自動化している。

 「たとえば、自社内でローカル5Gを展開したいが5Gネットワークについての知識がないというインダストリのユーザーでも、Operatorを使えば5Gネットワーク構築に必要なコンポーネント群を自動的にデプロイしてくれる。そのほかにも、マイクロサービスの基盤をなす『Knative』『Istio』なども、Operatorを通じて効率的に展開できる」(杉山氏)

Kubernetes Operatorの統合により、さまざまなユーザーが簡単に機能を追加/デプロイできる環境が整った

 もうひとつ、OpenShift Container Storage 4も2月6日に発表されている。これはOpenShift環境において、コンテナ化されたアプリケーションに対して永続的かつスケーラブルなファイル/ブロック/オブジェクトストレージを統合的に提供する製品だ。オブジェクトストレージ部分は、レッドハットが買収したNooBaaのテクノロジーを統合しており、開発者はAmazon S3互換APIでアクセスできる。このContainer Storageも、OperatorHubを通じて簡単にOpenShift環境にデプロイできるようになっている。

 杉山氏は、「これまでクラウドの環境ではContainer Storageを提供していたが、これからはエッジコンピューティング環境でも導入が進むだろう」と語った。たとえばAI開発において、どこに/どのようなかたちでデータレイクを構築するのかが課題となるが、新しいOpenShiftとContainer Storageによって“エッジまでデータレイクが着いてくる”ことになると説明している。

「Red Hat OpenShift Container Storage 4(4.2)」の概要。OpenShift上のアプリに永続的なファイル/ブロック/オブジェクトストレージを提供

 「このように、OpenShiftでは上のアプリレイヤーだけでなく、下のインフラレイヤーの変化にも合わせて、多様な環境への展開を可能にしていく」「ユーザーからのフィードバックを受けながら、OpenShift 4のネットワーク系機能は今後もさらに拡張が進んでいくことになる」(杉山氏)

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