上位モデルも下位モデルも両方自社でやってこそだったはず
インドでも中国メーカーが席巻するかに注目
それにしても日本のスマートフォンはなぜ海外でダメだったのか、うまくいかなかったのか、というのをあらためてインドで考えさせられた。
高付加価値で生き残れと言わんばかりに、日本のメーカーが取ったのが、上位機種だけメーカー自身がつくり、それ以外を海外に外注してコストダウンするというもの。そうすると技術力が低下して、上位機種を作るためのノウハウも、外注に滞りなく作ってもらうためのノウハウもなくなってしまう。部品メーカーへの大量発注もできなくなってしまう。値段は高くなるわ、付加価値がなくなってくるわでジリ貧になってしまうわけだ。日本の人件費が高い、安い製品は外注で、と言われていたが、どうしてそんな論調になってしまって、こういう結果を予想しなかったのかと思う。
また「いいものを作っていれば消費者が自然と買ってくれる」という迷信もあった(今もあるかもしれない)。一般に認知されなければ選択肢にも入らないのに、中国やインドをはじめいろんな国で、いろんなところを街歩きしていても日本のブランドの広告を見ることがものすごく少ない。今だけでなく昔から見ることは少なかったのだ。日本での「いいものさえ作ればうまくいく」論が普及した背景には当時の空気に流れ流されたところがあるのだろうか。
さて、筆者が中国についてこれまでウォッチしてきて思うに、中国は中国企業が確実に勝つ特殊な市場であり、外国企業にとって厳しいのは正直仕方がないと思う。あのサムスンすらシェアは0.7%まで低下したのだ。韓国がTHAADミサイルを配備する騒ぎで、中国人は韓国製品不買に走り、販売店が激減した。サムスンですら中国では雀の涙のようなシェアに落ちてしまったのだ、日本のメーカーがほぼ惨敗するのもわかる。
ただ他の国の市場はそうはいかない。インド人のそれなりの年齢の大人はソニーが大好きであり、その証拠にさまざまなソニー製を名乗る商品が登場した。少なくともインドで偽物が出てくるほどにソニーのファンだった人はいるわけだ。だとしたらソニーも、ソニー以外のメーカーも、こんな製品をリリースしたよ、とアピールして、しっかり市場をとってほしい。スマートフォンで復活は難しくても、ほかのジャンルはまだ頑張れるはずだ。たとえば家電量販店のテレビ売り場で日本のメーカーの製品が売られているが。ここにもシャオミが進出し、コストパフォーマンスで攻めてきている。
2020年は中国企業がインドにスマートフォンで進出し、さらにテレビにも進出する。日本企業が頑張って店の目立つ場所で売られ続けるか、中国メーカーに売り場を占拠されるか。もちろん前者であってほしいが、中国企業のインド進出を注視していきたい。
この連載の記事
-
第204回
トピックス
必死に隠して学校にスマホ持ち込み!? 中国で人気のスマホ隠蔽グッズは水筒に鏡に弁当箱 -
第203回
トピックス
死んだ人をAIを動かすデジタル蘇生が中国で話題! 誰もが「死せる孔明生ける仲達を走らす」時代に!? -
第202回
トピックス
停滞感があった中華スマホだが、生成AIが盛り返しのきっかけになるかも -
第201回
トピックス
ようやく高齢者にスマホが普及し始めた中国 ECで爆買い、そして詐欺のカモにされることも -
第200回
トピックス
世界で台頭する新興中国ガジェットブランド総ざらい 有名になる前に知っておきたい -
第199回
トピックス
中国の寒冷地ではEVは不人気!? スマホは大丈夫? 中国の極寒環境のIT事情 -
第198回
トピックス
世界トップのIoT機器ラインアップを抱えるシャオミ でも来年にはEVに追いやられてしまうかも!? -
第197回
トピックス
中国でiPhoneがピンチ!? すぐには消えないだろうが、脱iPhoneは進むかもしれない -
第196回
トピックス
中国でシェアマッサージチェアが大量導入され、そしてトラブルあれこれ発生 -
第195回
トピックス
中国の真面目版2ちゃんねる「天涯社区」が終了 ネット文化の変化の波に呑まれる -
第194回
トピックス
光るワイヤレスイヤホンから動画ECサイトまで、元アリババの事業部長が取り組む日本での本気ビジネス - この連載の一覧へ