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前田知洋の“マジックとスペックのある人生” 第86回

駐車場で迷子?T-Connectで自分の車を探してみた

2019年02月26日 12時00分更新

文● 前田知洋

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観客が選んだトランプは当てられますが…

 筆者はフリーランスな職業なので、仕事場がほぼ毎回違うのが悩みです。いつも遅刻せずに車で現場に行き、駐車した場所を覚えておくのも仕事のうち…。しかし、マジックのセリフを忘れないようしたり、選ばれたトランプを何度も当てたりしていると、血糖値もすっかり下がり、ショーが終わる頃には自分の車の場所がわからなくなることも…。小学校の先生の名言「家につくまでが遠足です」というフレーズが何度も頭をよぎります。

 そんなわけで、最近YouTubeやTVのCMでよく見かける「トヨタのコネクティッドサービス」が気になってました。iPhoneやAndroidで自分の車の最新情報にアクセスできる機能です。これなら駐車位置もなんとなくわかりそう。

YouTubeやTVのCMで見かける「トヨタのコネクティッドサービス」

最新の自動車IT技術は…

 筆者がカーナビを初めて使ったのは1991年。その頃のカーナビは「サテライト・クルージング・システム」と呼ばれ、米国の軍用GPS衛星を借りて運用していました。そんな理由から、わざと測定精度に100メートルほど誤差が出るような仕様。なぜなら、敵のミサイル攻撃に使われたら困るもんね。その人為的な誤差を米国がやめたのが2000年です。当時のビル・クリントン大統領がGPS衛星技術のイニシアチブをとるために解放。そんなことから、現在はカーナビやスマホのMapアプリなど、GPSサービスの爆発的な普及につながります。

 とはいっても、GPSがあまり正確じゃないのは、スマホのMapアプリを使ったことがある方ならご存知のはず。筆者も「ホントに駐車位置がわかるの?」と半信半疑でした。高級セダンで知られる、某ドイツ車メーカーの駐車位置検索サービスでさえ、半径1.5キロメートルの範囲であることを回答しているぐらいです。

というわけで、ターミナル駅の巨大駐車場へ、しかし…

 というわけで、まず専用アプリをインストール。忘れがちなのは、自動車のDCM(データ・コミュニケーション・モジュール)の設定も必要なこと。筆者が以前に乗っていたレクサスでも「ロックし忘れだよ!」のメール通知で、よくDMCのお世話になっておりました…トホホ。もちろん、T-Connectに対応する車も別途必要です…。

T-Connect専用アプリ「MyTOYOTA」。執筆時のバージョンは1.2.0

 すべての設定が終わり、向かった先は横浜駅の東口駐車場。すぐ隣のスカイビル駐車場と合わせると1000台ほどが停められます。行くたびに駐車位置をど忘れして迷子になる鬼門の場所です。今回はT-Connectのテストも目的なので、華麗に駐車してエンジンをストップ。車を離れてアプリを起動しました…が、アプリに表示される駐車位置が止めた場所とまったく違います。アプリの再起動などをしてみても、やはり現在の駐車位置は表示されません。そういえば、アプリのダウンロード時にチラ見した評価コメントも悪かったしなぁ…。

 まだまだ、発展途上か…と、落ち込んでいたら、ハッと気がつきました。「ち、地下駐車場だった…(汗)」。地下ならGPS衛星の電波が届くはずもありません。筆者の初歩的なミス。ごめんなさいです。

 「たしか、近くのヨドバシカメラの提携駐車場なら、屋外(自走式パーキング専用ビル)だったはず…」と、気を取り直して移動。このタワービル、コンクリートの屋根はありますが、壁がないのでGPS信号やDCMが使うauの電波は受信するはず。

実力発揮か!?誤差は5メートルくらい?

 アプリを起動してみると、ブルーのチェックマークもはいっているし、ガソリン量などが最新っぽいぞ! これはいける…と「車の現在位置」をタップします。

車のリアルタイム情報がわかるアプリのトップ画面(車両情報保護のため一部画像に加工がしてあります)

アプリでのマップ表示。縮尺が大きく、やや場所がわかる程度(車両情報保護のため画像加工あり)

 駐車位置を示す地図は表示されますが、縮尺が大きすぎ…。と思ったら、画面を上にスワイプするとマップを拡大できるぞ!

地図を上にスワイプして拡大すると、駐車位置は正確(車両情報保護のため画像加工あり)

 駐車位置の誤差は5メートルほどでしょうか。具体的に測ったわけではないので、筆者の体感ですが…。自宅を含めて3つの場所で検索してみましたが、駐車位置はかなり正確。ただし、これはGPS衛星からの信号を受信するコンディション(上空の衛星の数)にもよるはず。そんな誤差が数十メートル~数百メートルに及ぶときは「ハザードランプを1分間点滅させる機能」でアプリが対応しております。

階数表示など、機能拡張に期待

 ただし、GPSの特性として立体型の駐車場では階数が表示できません。その理由は、地表での位置を正確に計算するため、高度の測定を犠牲にしているからといわれています。そのあたりはGPSのウィークポイントなのでしかたありません。ちなみに、登山用のGPS機器に高度が表示されるのは、気圧高度計を併用していたり、ジオイド高データ(自転の影響を受ける平均海面の延長線)をあらかじめ機器内に保持し標高を再計算しているから。近い将来、駐車場所の床面に位置情報などを発信する機器が設置され、DMCと連携をとれるようになることを期待してますが、こればかりは自動車メーカーだけでは何ともならないのが歯がゆいところ…。

 最後にセキュリティに関して。駐車位置の検索やドアロックを解除できるなど、とても便利な反面、他人に悪用されたくない機能です。そのあたりは、毎回長いパスワードを要求するなど、リスクを軽減してます。そこはiPhoneの指紋認証やFace IDと連携がとれると安心がさらに増すはずと、個人的には密かに期待しています。そんなアップデートも願いますが、筆者としてはかなり満足な先進機能。ただし、筆者がCMに登場するようなカワゆいオーナーじゃないことだけが残念ですが…(笑)

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。

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