このページの本文へ

短期導入と運用省力化、データ入力自動化図る。RPAテクノロジーズやアイ・ピー・エスと

SAPら3社、S/4HANA Cloud+RPAで中堅中小のERP導入を加速

2018年12月11日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 SAPジャパン、RPAテクノロジーズ、アイ・ピー・エスの3社が2018年12月10日、中堅中小企業(年商250億円以下、従業員50~100名規模)におけるERP導入を支援するソリューション「EasyOne Cloud」を発表した。クラウドERPの「SAP S/4HANA Cloud」やBIツール「SAP Analytics Cloud」に、アイ・ピー・エスが開発したSAP対応のRPAロボをパッケージし、ERPへのデータ入力業務を自動化することで、導入の短期化と運用の省力化/省人化を可能にする。

中堅中小企業のERP導入を促すソリューション「EasyOne Cloud」。SAPのクラウドERP/BI、RPAテクノロジーズのRPAツール、SAP対応ロボをパッケージし、提供する

(右から) SAPジャパン 常務執行役員 ゼネラルビジネス統括本部 統括本部長の牛田勉氏、 アイ・ピー・エス 代表取締役社長の渡邉寛氏、 RPAテクノロジーズ 代表取締役社長の大角暢之氏、 SAPジャパン ゼネラルビジネス統括本部 第二営業本部 第一営業部 部長の綱島朝子氏

クラウドERPで短期導入/運用省力化、RPAツールで入力自動化

 EasyOne Cloudソリューションでは、クラウド型で短期導入が可能なSAP S/4HANA Cloudと、ERPへのデータ入力業務を自動化するRPAツール「BizRobo!」およびRPAロボをパッケージ化して、月額制の料金体系で提供する。これにより「導入期間の長さ」「導入コスト」「運用にかかる人手」といった、中堅中小企業においてERP導入障壁となる問題の解消を図る。

 SAPパートナーであり、中堅中小企業へのSAP導入に特化したSIサービスを提供するアイ・ピー・エスの渡邉寛氏は、クラウドERPを組み込んだこのソリューションによって、これまで6カ月以上を要していたERP導入を「およそ9週間(2カ月強)」に短縮できると説明した。

「EasyOne Cloud」導入サービスのタイムライン(イメージ)

 「1997年に(アイ・ピー・エスを)設立した当時、SAP ERPは大企業向けの、数百億円規模の導入プロジェクトが全盛だった。ただし、われわれは当時から『SME(中堅中小企業)でももっと活用できる』と考えていた。クラウド型で(S/4HANA Cloudが)利用できるようになったことは、SMEにとって画期的なことだ」(渡邉氏)

 同ソリューションのもうひとつの特徴が“受託ロボ”だ。これはBizRobo!に、SAP S/4HANA Cloudへのデータ入力自動化のために追加開発したものをパッケージしている。渡邉氏によると、受託ロボはS/4の入力インタフェースをあらかじめ“覚えて”おり(BizRobo!用の部品として用意されており)、顧客が利用している他の業務システムやExcelシートなどからのデータ入力作業を容易に自動化できるという。さらにはERPから特定のデータをExcelシートに抜き出し、自動メール送信するなど、繰り返し発生し手間のかかる業務プロセスを省力化する。

デモ画面。S/4HANA Cloudへのデータ入力自動化だけでなく、ERPから取り出したデータのExcel化やメール送信など、繰り返し行われがちな作業を自動化する

 EasyOne Cloudソリューションの価格(税抜)は、初期費用が980万円から、月額費用は「1ユーザーあたり3万円程度」(渡邉氏)からとなっている。SAPの両クラウドサービス、BizRobo!のライセンス料も含まれる。

レガシーITを抱えた中堅中小企業の課題とSAPへの期待

 SAPジャパンで中堅中小企業向けビジネス(ゼネラルビジネス)を担当する綱島朝子氏はまず、SAPにおいて中堅中小(SME)の顧客企業が増えていることを説明した。現在グローバルで41万3000社の顧客を持つSAPだが、その80%以上がSMEであり、日本市場においても「昨年対比で約2倍」となる4万社のSME顧客を持ち、新規案件数も3倍に増えたという。

 そうした顧客企業の経営者からよく聞かれる課題/ニーズとして、綱島氏は「経営数値の迅速な把握」「M&Aや新規事業、海外展開の早期実現」「上場(IPO)に向けた経営管理基盤の構築」といったものを挙げた。しかし、顧客企業のITはレガシーなものも多く、そうした期待に応えうるものではない。それゆえに、最新のERPをシンプルかつ迅速に導入し、少人数でも戦える仕事の仕方に変えていきたい、という顧客の期待がSAPに寄せられているという。

 そうしたニーズに応える解のひとつが、業務シナリオ/機能が常に拡張され、短期間/低コストで開始でき、運用管理の人手もかからないS/4HANA Cloudだ。ただし、それでもなおデータ入力作業には人手とコストがかかっており、ここをさらに自動化すべく今回のソリューション協業を図ったと綱島氏は説明した。

S/4HANA Cloudによって導入や運用の手間、コストが削減できる。さらにデータ入力も自動化して省力化を図るのが今回の協業ソリューション

 そのほか、SAPジャパンの牛田勉氏は、経済産業省の「デジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた研究会」が発表した「DXレポート」について触れ、同レポートで指摘されている「2025年の崖」(レガシーITを抱えていることによる国際競争力の低下、新規ビジネス推進の遅れ、などの事象)は大企業だけでなく、今後の経済成長を支える中堅中小企業においても「切実な問題」だとした。

 またRPAテクノロジーズの大角暢之氏は、RPAによってSMEにおけるERPの導入障壁を解消することができると説明し、今回のソリューションによって「単に効率化にとどまらず、中堅中小企業においてビジネスモデル自体を進化させられる」と期待を語った。

 なお同ソリューションの導入目標について、アイ・ピー・エスの渡邉氏は「この1年間で、10社以上の顧客に導入いただき、そのうえで『成功』していただくことだ」と語った。またSAP牛田氏も、他の中堅中小企業に良い影響を与えられるように「まずは最低でも10社、顧客における『導入効果』をプレスリリースできることを目標にしたい」と述べた。

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード