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麻倉怜士のハイレゾ真剣勝負 第30回

坂本龍一のBTTB20周年リマスター盤なども

麻倉推薦:ヒラリー・ハーンのバッハは素晴らしいのひとこと、MQA音源も増加

2018年10月06日 12時30分更新

文● 麻倉怜士 編集●HK(ASCII)

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 評論家・麻倉怜士先生による、今月もぜひ聴いておきたい“ハイレゾ音源”集。おすすめの曲には「特薦」「推薦」のマークもつけています。音楽の秋に合った優秀録音をまとめました。e-onkyo musicなどハイレゾ配信サイトをチェックして、ぜひ体験してみてください!!

『ヒラリー・ハーン・プレイズ・バッハ』
ヒラリー・ハーン

特選

 ヒラリー・ハーンのCDデビュー(ソニー・ミュージック)は1997年、バッハの無伴奏作品(ソナタ第3番、パルティータ第2番&第3番)だった。それから20年後、『無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ』全曲を録音した。

 素晴らしい。透明度が高く、輪郭が明晰で音的、もしくは音楽的内実がきわめて緻密に描かれる。センターに美しく定位したヴァイオリンの響きが剛毅だ。ひじょうに強い音の意志が感じられ、細かく音場空間に飛び散る音の粒子のひとつひとつに強靭な音楽的意志がこもっているようだ。直接音と間接音のバランスも絶妙。明瞭でクリヤーにして、ソノリティもたいへん豊か。まさにヒラリー・ハーンの畢生(ひっせい)の名演であり、ハイレゾ録音の現在の地平を確認することができる名録音だ。2017年6月、ニューヨーク州バート大学リチャード・B・フィッシャーセンターで録音。

FLAC:88.2kHz/24bit
Decca、e-onkyo music

『THE GAMES -East Meets West 2018-』
向谷 実

特選

 カシオペアの元キーボーディストというより、最近では電車の発車メロディ、シミュレーターソフト、ホームドア開発……など、鉄道方面での活躍が著しい向谷実。本業の音楽家としての本領を発揮したアルバムだ。ドン・グルーシン(キーボード)、アーニー・ワッツ(サックス)、エリック・ミヤシロ(トランペット)……と、東と西のそうそうたるフュージョンアーティスト10名が一堂にロサンゼルスに会し、会心のパフォーマンスを繰り広げる。

 楽曲と演奏のクオリティもひじょうに高いが、録音クオリティも絶品。ひじょうに明瞭度が高く、スピードも速い。音の立ち上がり、立ち下がりがクイックで、音場は常に透明だ。各楽器の質感にも優れ、音の重なりも混濁せずに、その都度のソロのフューチャー感もとてもいい。最新ハイレゾ録音の素晴らしさを堪能できるアルバムだ。

FLAC:96kHz/24bit、WAV:96kHz/24bit
JVC、e-onkyo music

『小山豊 meets 島裕介 ~和ジャズ~ vol.2』
小山豊 meets 島裕介

特選

 ジャズはあらゆる種類の音楽とコラボレーションする。それは「邦楽」とも、だ。本アルバムで、津軽三味線とジャズトランペットがまさに「meets」した。津軽三味線小山流の三代目小山豊と、トランペットの島裕介の協演の2作目。vol.1は2016年10月にリリースされ、人気が高く、続編を望む声に応えた。「枯葉」「My Favorite Things」「Caravan」などの泰西名曲、「もみじ」「ドンパン節」「この道」などの日本名曲、そしてオリジナル曲まで幅広く収録。三味線と和太鼓とトランペットの協演というと水と油のような感じだか、新しい形の融合が楽しい。

「枯葉」は三味線の前奏から始まり、トランペットが哀愁の旋律を吹く。そのバックにはジャラジャラと三味線が奏でる。三味線のオブリガードをへて、ジャズ的なトランペットソロに至る。この間、違和感がまったくなく、トランペットソロの熱血さに、日本音階の三味線ソロが対抗する部分はとてもスリリングだ。三味線による枯葉のメロディも味わいが濃い。紅葉が風に舞ってひらひらと落ちるイメージだ。

FLAC:96kHz/24bit、WAV:96kHz/24bit
等々力ジャズレコーズ、e-onkyo music

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