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戦略策定から導入、運用までをカバーするサービス/ツール群を提供、AIの“バイアス”検知ツールも

ビジネスAI「全社展開」段階の課題とは、IBMが包括支援サービス

2018年10月05日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 日本IBMは2018年10月4日、企業におけるAI/機械学習のビジネス適用拡大を支援する「IBM Services AI Enterprise Knowledge Foundation」の提供を開始した。AI戦略の策定からプロジェクト導入、運用とAI再学習、人材育成などを包括的に支援する5つのサービス群に、「Watson Studio」や「Watson Knowledge Catalog」といったAI運用管理ツール群を組み合わせ、全社横断的なAIのビジネス適用を図る企業への支援ソリューションとして提供する。

 なおAI Enterrise Knowledge Foundationのツール群として、顧客が構築した学習モデルの公平性を数値化し、AIによる意思決定の“バイアス”(判断の偏り)を検出/軽減する新しいツール「Trust and Transparency capabilities」も含まれる。同日の発表会では、このツールのデモも披露された。

「IBM Services AI Enterprise Knowledge Foundation」の全体像。AIのビジネス活用が企業全体に拡大する中で浮き彫りとなってきた、AI戦略策定から運用管理、人材育成などの各種課題を包括的に解決する
日本IBM 取締役専務執行役員 グローバル・ビジネス・サービス事業本部長の山口明夫氏同 執行役員 ワトソン&クラウドプラットフォーム事業部長の吉崎敏文氏同 パートナー グローバル・ビジネス・サービス事業本部 アナリティクス&コグニティブリーダーの武田智和氏

5つのサービスとAIツール/アセットを組み合わせた包括的な支援

 AI Enterprise Knowledge Foundationでは、顧客のニーズに応じて大きく5つの支援サービスが、IBMのグローバル・ビジネス・サービス(GBS)部門から提供される。各サービスの内容は次のとおりだ。

・AIマネジメント支援:企業ビジネスにおけるAI活用戦略の策定からロードマップ作成/管理、ROI(投資対効果)のモニタリング、新規ユースケースなどのPOC(実証実験)実施など
・AIガバナンス支援:社内におけるAI管理プロセスの定義/実行/監視、AIナレッジ(訓練データやモデル、アルゴリズムなど)の管理、ツール/アセットの構築と運用、AIパフォーマンスの監視など
・AIプロジェクト導入支援:新規プロジェクトのためのユースケース評価や創出価値の定義、技術検証支援、本番導入支援など
・AI運用/再学習支援:既存プロジェクトにおけるKPIダッシュボード構築、品質向上のためのAI再学習実施など
・AI人材育成/スキル移管支援:データサイエンティスト育成支援、スキル移管、スキルトレーニングなど

AI Enterprise Knowledge FoundationでIBM GBS部門が提供する5つのサービス群。特に黄色で強調した部分にIBMの強みがあると説明した

 これらのサービス提供と併せて、IBM製品を中心としたAIツール/アセット群も提供する。 たとえばAIの統合開発/分析環境である「Watson Studio」や統合管理基盤「Watson Knowledge Catalog」によって、これまで部門/業務ごとに構築されてきたAIナレッジを全社で統合管理可能にし、開発効率を高めると同時に社内での知見共有や再利用を活性化させる。なお、ここではIBM Watsonだけでなく、オープンソースソフトウェア(OSS)のAIフレームワークなどで構築されたAIナレッジも統合管理可能だ。

 さらに提供するツール群には、AIシステムの稼働パフォーマンスを可視化するダッシュボード「AI Performance Dashboard」や、前述したAIの“バイアス”検出/軽減ツールTrust and Transparency capabilitiesも含まれる。これらのツールは、AIスキルを持つエキスパート以外の経営者や担当者でも容易に現状を把握し、改善できるよう工夫されているという。

AI Enterprise Knowledge Foundationではツール群も提供する。企業全体でAIナレッジを統合管理/共有し再利用の活性化を図る。またAIシステムのパフォーマンス監視ツールもある

 今年9月に米IBMが発表したTrust and Transparency capabilitiesは、AIが意思決定を行う場面で自動的にバイアスを検出したり、AIが判断を下した理由を説明可能にするサービスだ。IBM Researchが開発したテクノロジーを基にしており(OSS版は「AI Fairness 360」として公開)、現在はIBM Cloud上でテクノロジープレビュー版が無償提供されている。WatsonだけでなくTensorFlow、SparkML、AWS SageManker、AzureMLといった、サードパーティの機械学習フレームワーク/AI環境で構築されたモデルにも対応している。

Trust and Transparency capabilitiesの概要。アプリで使われているモデルのバイアス評価や、AIによる判断の理由説明を可能にする

 Trust and Transparency capabilitiesのダッシュボードでは、アプリケーションに組み込まれているさまざまな機械学習/深層学習モデルの「正確性」と「公平性」が数値で表示される。また、それらの指標の経時的な変化もグラフで可視化できるようになっており、モデルの性能が劣化した場合には再学習を促す仕組みとなっている。

 また、公平性指標においては、そのモデルが判断を下すうえで影響を与えたデータ項目(つまり“判断の根拠”)がわかりやすく示せるほか、モデルにバイアスがかかっている可能性があれば検知して再学習を促す。その際、バイアス軽減のためにモデルに再学習させるべきデータはどれかを、Watson Studio/Knowledge Catalogの管理下にあるデータから自動的にサジェストする機能も備えている。

Trust and Transparency capabilitiesのダッシュボード画面例。正確性/公平性の数値化や経時グラフ化、バイアスの検知、判定理由(影響を与えた項目)の説明などを、わかりやすい表示で見ることができる

AI適用領域は部門/業務から「企業全体」へ、そこで生じる課題に対応

 同日の発表会に出席した日本IBM 取締役専務執行役員 GBS事業本部長の山口明夫氏は、企業におけるAI活用が特定の業種からあらゆる業種へ、特定の業務プロセスから企業全体へと拡大しつつあること、単一ベンダーにこだわらず多様なフレームワーク/AI環境を適材適所で採用する「マルチAI」化が始まっていることなどを挙げて、「市場の潮目が大きく変わってきている」ことを指摘する。

 今回のAI Enterprise Knowledge Foundation提供の背景には、そうした企業におけるAI活用の本格化と、それに伴って発生する課題への対応があるという。たとえば、全社で利用できる単一のAI/データ統合プラットフォームを提供することで、社内にあるAIアセットやコードの再利用と開発の効率化を図る。さらには、AI活用や運用(特に再学習)が誰でも簡単に利用できる環境を提供し、AIに対する専門知識を持つ人材の不足にも対応する。そうした仕組みづくりを狙ったソリューションだ。

企業のAI活用において生じつつある課題と、それを解決するために求められる仕組み。今回のAI Enterprise Knowledge Foundationではその提供を狙っている

 さらに同社 執行役員 ワトソン&クラウドプラットフォーム事業部長の吉崎敏文氏は、これまで多数の企業でAI導入を支援してきた経験から気づいたさまざまな課題のひとつとして「AIの判断根拠を知りたい/説明できるようにしたい」というニーズがあったと語る。そのニーズに応えるべく、今回はTrust and Transparency capabilitiesツールが組み込まれた。吉崎氏は「このツールは“第一弾”だ」と述べ、IBMがこれまでの経験で発見した課題を解消するツールやサービスを、これからも順次、AI Enterprise Knowledge Foundationの中に盛り込んでいく方針だと説明した。

同社 武田智和氏はデモを披露した。チャットボットのKPIダッシュボードでエスカレーション率(AIが回答できず有人対応になる率)が高まっていることを発見、原因を分析した結果、ある製品への問い合わせが急増していた。その製品に関する回答の種類を増やすため、訓練データをWatson Studioのカタログで探索、自動分析で算出した優先度に基づいてそのデータを学習させる、というストーリーだ

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