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医薬品の特許切れで窮地の第一三共「幻のウルトラC」

2018年08月07日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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「パテントクリフ(特許の崖)」に苦しむ第一三共
(写真はイメージです)Photo:PIXTA

「パテントクリフ(特許の崖)」に苦しむ国内製薬大手、第一三共からウルトラCはやはり出なかった。

 眞鍋淳社長COO(最高執行責任者)は4月の通期決算会見で「収益を支える重要な施策を検討中」と語り、中山讓治会長CEO(最高経営責任者)も「中長期に成長を加速する打ち手」になると説明。勝負に出るかのようににおわせていた。

 結局、7月末に発表されたのは、特許が切れた新薬(長期収載品)41製品を医薬品卸大手のアルフレッサ ホールディングスに84億円(棚卸し資産を除く)で売却するというもの。崖下から這い上がるレベルの一手ではなかった。

 新薬開発メーカーは一定期間にわたり特許で守られた新薬で稼ぐ。特許が切れた後は他社の後発品(ジェネリック医薬品)が参入し、一気に売り上げを奪われる。大型製品を持つ会社ほど特許切れが業績に与えるダメージは大きく、特許の崖と呼ばれる。

 第一三共の場合、高血圧症治療薬「オルメテック(一般名オルメサルタン)」が世界で2841億円(2016年3月期)を売り上げていたが、16年以降に主要市場で相次いで特許が切れた。

 近年の業績は上図の通り。中期経営計画(21年3月期までの5カ年)では「オルメサルタンによるパテントクリフがあっても18年3月期の営業利益1000億円」としたが、実績は763億円にとどまり、目標に程遠いものだった。

 振り返れば08年に後発品の世界大手であるインドのランバクシーを約5000億円で買収し、後発品の世界市場で稼ぐ戦略を打ち出した。ところが買収後にずさんな生産管理体制が露呈し頓挫。それでも「多様な医療ニーズに応える」を企業理念とし、新薬、ワクチン、大衆薬、後発品を4本柱としてきたが、今回、自社の特許切れ品までも切り離すことを決めた。

第2弾で大衆薬売却?

 武田薬品工業、アステラス製薬など競合大手は「選択と集中」を掲げて新薬部門に資源を集中している。薬価(医療用医薬品の公定価格)制度改革による圧力も相まって、そこでは長期収載品の切り離しが定石になりつつある。

 ウルトラCをにおわせた第一三共の策は、ふたを開けてみれば、他社にかなり遅れて定石に従ったもの。齋寿明副社長CFO(最高財務責任者)は「ありとあらゆる手を打つ中の一環」「第2四半期決算までにいろいろ検討」と、第2弾以降に含みを持たせてはいる。

 社内外では大衆薬などの事業売却があるかと固唾をのむ者がいる一方、「強がっているだけでは」という冷めた声も聞こえる。

 がん領域の新薬開発では次の大型製品が出てくる可能性もあるが、業績貢献は当面先の話。それまで崖底に居続ければ干上がりかねない。見上げる崖の上は高くて遠い。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 土本匡孝)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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