2018年7月11日~13日、東京ビッグサイトで開催された「働き方改革EXPO 2018」では、リモートワークブームの中、オフィスの価値を再定義するさまざまな商材を披露していた。「健康」「コラボレーション」「テレワークとオフィスの使い分け」などをテーマにした各社の展示を見ていこう。
コクヨの最新オフィスチェアが提案する「健康」の価値
昨今の働き方改革の動きの中、多くの企業がリモートワークのために、在宅勤務やサテライトオフィスの導入を進んでいる。その一方で、当たり前のようにあったオフィスはなぜ必要なのかの再定義が必要になっている。特にオフィス向けの家具や什器を作ってきたメーカーからすると、新しいオフィスの価値を提案しなければならないという危機感が伺えた。
コクヨのブースで展示されていたのは、「ing(イング)」というオフィスチェア。見た目としては、ごく普通のオフィスチェアなのだが、座るとびっくり。さまざまな角度に動かせるのだが、バランスボールと違って安定感がある。PC作業のために前のめりにもなれるし、リラックスするために伸びることもできる、絶妙な座り心地だ。
こうしたオフィスチェアが生まれた背景は、オフィスに求める価値が「エコ」から「健康(Well-Being)」に移ってきているからだ。ingも「単に座りすぎがよくないのではなく、体を動かさないことがよくない」という調査から、自由に動ける椅子を作ったという。椅子が揺れることで、体が動き、4時間で1.5kmのウォーキング効果が得られるほか、おのずと脳が活性化するというレポートも用意されていた。
実際に、会場ではピラティスのトレーナーがingに座りながらのエクササイズを体験する催しもあり、多くの来場者が参加していた。「リモートワークすると運動不足になる という悩みはいろいろなところで聞くので、快適に働くためのツールとして1つの提案になるかもしれない。
ITを違和感なく取り込むイトーキ、テレワークを試行したプラス
イトーキは、オフィスの価値に「コラボレーション」を据える。たとえば、卓上型のホワイトボード「inova」はアイデアをアウトプットするサポートツールという位置づけで、ふらっと書き込んだボードを専用のトレイに保存しておき、複数枚の内容をあとでまとめるといった利用が可能になっている。また、「『会うこと』のリデザイン」というプロジェクトでは、コーヒーを淹れたり、料理をしながら、ブレストするといったシチュエーションを想定し、書き込めるボードやオフィス用のシンクなどを試作している。
とはいえ、同社もアナログにこだわっているわけではない。たとえば、手描きが可能なデジタルホワイトボードや、無線LANのアンテナ部分をシート化し、机に埋め込める「LANsheet Light」などの商品もある。また、会議室の音声を収集し、テキストとしてキーワードを抽出してくれる「ミーティングロガー」というアプリも用意している。ITをオフィスの中に違和感なく溶け込ませ、デジタルネイティブな働き方に対応したオフィスを見せていこうという同社の戦略が見て取れる展示だった。
また、プラスのファニチャーカンパニーでは社員がテレワークにチャレンジし、改めてオフィスの役割を考え直したという。その結果、「プライベートの時間が充実した」(40%)、「労働時間の短縮になった」(36%)といったメリットがあったが、デメリットとして「複合機が使えない」(60%)、「社員間のコミュニケーションが減少した」(40%)なども挙げられたという。
また、オフィスでやりたいことは「社内コミュニケーション」が84%とトップになり、アイデア出しや意識合わせ、雑談などをやりやすい環境がオフィスに求められていることがわかったという。その上で、オフィスでは「コミュニケーションから新たな発想を生む仕事」、テレワークでは「生まれたアイデアを集中してまとめる自己完結型の仕事」が向いていると調査は結論づけている。今後、こうした調査結果が製品に反映されていくことになるだろう。
その他、会場にはスタンディングデスクや集中用ブース、コラボレーション用のホワイトパネルなど、さまざまなオフィス製品が展示されていた。各社とも働き方改革の中で生まれた「オフィスとはなにか?」の試行錯誤を今後も続けていくとのこと。ITとは異なる観点で働きやすいオフィスを実現するユニークな商材が、今後どんどん登場してくることを期待したい。