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「孤独」で認知症リスク倍増、日本のおじさんが危ない!

2018年05月17日 06時00分更新

文● 福田晃広(ダイヤモンド・オンライン

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昨今の日本では、「孤独のすすめ」「ソロ活」「1人カラオケ」など、孤独をポジティブに捉える論調が目立つ。しかし、米国や英国などの諸外国では、孤独は健康リスクを招く重大な社会的問題との認識が広まっているという。コミュニケーション戦略の専門家であり、『世界一孤独な日本のオジサン』(角川新書)を上梓している岡本純子氏に話を聞いた。(清談社 福田晃広)

孤独のリスクは1日たばこ15本喫煙や
アルコール依存症に匹敵

日本のオジサンは世界一孤独です。
OECDの調査では、「友人や同僚もしくはほかの人々と時間を過ごすことのない人」の割合は、日本人男性が21ヵ国中で最多という結果が出ています(写真はイメージです)

 そもそも孤独とは、物理的孤立を意味するわけでなく、誰かと一緒にいても、誰ともつながっていない、誰も頼る人がいないといったような精神的な不安感、寂しさを指す。人と人との関係性の希薄化、コミュニケーションの欠落ともいえる。

 日本において孤独のリスクといえば、物理的な孤立による「孤独死」がよく問題視されている。

 しかし、米国・ブリガムヤング大学のジュリアン・ホルトランスタッド教授が30万人以上のデータを対象とした分析調査によれば、「社会的なつながりを持つ人は、持たない人に比べて早期死亡リスクが50%低下する」という。

 同教授は2017年8月に、アメリカ心理学会で孤独の健康影響について発表し、「世界中の多くの国々で、『孤独伝染病』が蔓延している」と警鐘を鳴らしている。

 ここ数年、米国や英国、オーストラリアなどでは「孤独が心身にもたらすさまざまなリスク」が大きな問題となっており、ニューヨークタイムズやフォーチュン、タイムなど有力メディアでもその危険性が頻繁に報道されているという。

「ホルトランスタッド教授によれば、孤独のリスクは、『1日たばこを15本吸うこと』や、『アルコール依存症』に匹敵します。また『運動不足』よりも高く、『肥満』より2倍も高いと結論づけていて、非常に衝撃的なデータといえます」(岡本氏、以下同)

 医学的な研究としても、孤独な人はそうでない人よりも冠動脈性の心疾患リスクが29%も上がり、心臓発作のリスクも32%上昇、アルツハイマーになるリスクは2.1倍とされるなど、さまざまなリスクが指摘されている。

コミュニケーションが苦手な
日本のオジサン

 孤独というものに対して、強い危機感がある諸外国に比べて、日本では孤独死を除けば、それほどネガティブなイメージは持たれていないかもしれない。

 しかし、少子高齢化が進んでいる日本は、35年には全世帯に占める「1人暮らし」の割合が、推計で37.5%ほどになると予測されており、“孤独大国”と言えるのだ。

 生涯未婚率も、30年には男性29.5%(女性は22.5%)にまで上昇し、男性の約3人に1人が生涯独身という時代を迎えようとしている。

 05年のOECDの調査でも「友人や同僚もしくはほかの人々と時間を過ごすことのない人」の割合は、日本の男性が16.7%と21ヵ国中で最も高く、平均値の約3倍となっている。アメリカ人男性の約4%と比べれば、数値がずば抜けて高いことがよくわかる。

 特に深刻なのが高齢者の孤独で、日本の調査では、「親しい近所付き合いをしていない」と回答した人は、女性が39.1%だったのに対し、男性は63.9%にまで及んだ。

 それでは、なぜ日本の男性、特に中高年の男性がこれほどまでに孤独に陥っているのだろうか。岡本氏は、「社会的・文化的環境、『コミュニティー』などの外的要因と、男性特有の『コミュニケーション』の問題などの内的要因の2つがある」と指摘する。

「典型的なケースは、会社を定年退職した老後の男性です。バリバリ仕事だけに打ち込んでいた世代なので、会社と家庭にしか自分の居場所がない人が多く、急に人生の目標や生きがいを失ってしまうパターンです。さらに女性に比べて、男性は会話をすることがあまり得意ではない人が多いため、コミュニティーに参加することがおっくうだと感じてしまい、孤独になりやすいと言えるのです」

 17年にイギリスのレガタム研究所が行った調査によれば、家族以外のネットワークや、ボランティア、地域活動への参加などといった、社会や地域における人々の信頼関係や結びつきを表す「ソーシャルキャピタル」(社会関係資本)の充実度は世界149ヵ国中、101位で多くの途上国よりも低いレベルだったことがわかっている。

孤独になりたくなければ
30代から居場所探しを始めるべき

 では、孤独を避けるためにはどのような対策が有用なのか。孤独対策先進国といえるイギリスでは、「Men's Shed」(男の小屋)というDIYを目的とした草の根のコミュニティーが爆発的に広がっているという。

 参加者がそれぞれ、テーブルや椅子などの自分の作りたいものを作りながら、時には共同作業をすることによって自然と会話が生まれていく。こうした場への参加が孤独対策につながっているようだ。

 一方、日本では福祉サービスのほとんどが公的なもので、NGOの活動なども限定的だ。そのため、「Men's Shed」のようなコミュニティーも少なく、一人ひとりの細かいニーズには対応できていないのが現状だ。

 岡本氏は、コミュニティーをつくるといった諸外国の取り組みを参考にした上で、会社勤めをしている30代、40代のうちから、社外の人や地域との接点を持ち、自分の居場所を見つけることが大事だという。

「日本の会社文化では上位下達的なコミュニケーションが主流なので、退職後の肩書きなしでの人付き合いが、うまくできない人が多い。会話が苦手なら、自分の好きな趣味などを通じてつながる方法もあります。単に行きつけの飲み屋を見つけるだけでも、孤独感を解消することができると思います」

 近頃の「働き方改革」や、AI時代を迎えるにあたり、人間の労働時間は減っていくことが予想され、余暇の時間をどう過ごすのかは、以前にも増して重要になってくる。

 日本では、「孤独を楽しむ」「孤独と向き合え」という精神論が幅広く支持されてきた。さらに、男たるもの武士のように誇り高く「孤高」であるべきという美学も、特に中高年男性には根強い。このように、孤独は決して悪いことではないという考え方が、日本を孤独大国にしていると岡本氏は指摘する。

「人間は1人で生きてはいけない」。そのことに退職後気付いても遅いのだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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