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「ミニ保険」激震!一業者の粉飾決算から不安が業界全体に波及

2018年05月16日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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糖尿病患者向けの保険を提供するミニ保険業者の役員の内紛と粉飾決算が明るみに出た。その混乱は業界全体への底知れぬ不安となって波及しそうだ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)

「ミニ保険」とも呼ばれる少額短期保険業界
「仮想通貨の次は少短か」。エクセルエイドの検査に入っている関東財務局からは、そんなため息が聞こえてきそうだ Photo by Masaki Nakamura

「孤独死保険」「痴漢冤罪保険」「婚礼参列者傷害保険」──。こうしたユニークな保険商品を数多く提供している少額短期保険業界。「ミニ保険」とも呼ばれる少短は、多様化する消費者のニーズをつかみ規模を急拡大中だが、4月18日、業界に激震が走った。

 糖尿病患者向けの医療保険などを販売するエクセルエイド少額短期保険が緊急の記者会見を開き、「保険金の一部に簿外処理があった」と明らかにしたのだ。

 さらに衝撃だったのは、同発表の1週間後、エクセルエイドの臨時株主総会が開かれ、決算の粉飾を公表した高島武彦社長(当時)が解任されたことだった。

 一部の社員が高島氏に同調して一斉に辞めるなど経営は大混乱。それを受けて、監督当局の関東財務局が臨株の翌日から検査に入っており、目下経営陣などへのヒアリングを続けている。

 一体何があったのか。高島氏側の主張はこうだ。

 2013年9月から14年1月にかけて、創業者で現会長の和田敏文氏が厳しい財務状況を踏まえ、娘婿であり当時副社長だった吉村信博氏に、自腹で保険金を支払うように強要。結果、吉村氏は112件合計1150万円の保険金を個人で支払った。

 会社のシステムを通さない簿外処理のため、決算書類上は1150万円の保険金を支払っていないことになっているという。

 耳を疑うような内容だが、その直後となる14年4月に吉村氏は社長に昇格。しかし、その1年後にはなぜか平取締役に“降格”しており、代わって高島氏が社長に就任している。

 それから3年もの間、一連の不正をひた隠しに隠していたことになるが、高島氏はなぜ今になって公表に踏み切ったのか。関係者の一人は「和田氏と高島氏は、経営方針などをめぐってかなり対立していた」と声を潜める。

 そもそもエクセルエイドは、アリコジャパン(現メットライフ生命)出身の和田氏が創業した会社だ。和田氏は妻と娘の持ち分を含めると約35%の株式を握る大株主でもあるため、高島氏がその意向に逆らい続けるのは難しい。

 対立が深刻化する中で、高島氏が「解任を覚悟の上で、公表に踏み切ったのでは」と関係者は推測するが、一方の和田氏側は記者会見などで不正の強要や関与について、一切否定しているというのが現状だ。

 今後財務局の検査が進めば、不正の有無や内紛によって迷走した経営の実態が徐々に明らかになってくるはずだが、今回の事態は残念ながら一業者の経営の混乱では片付けられそうにない。

金融庁が規制強化の可能性も

 何より懸念されるのが、「契約して本当に大丈夫だろうか……」という底知れぬ不安が、業界全体に波及することだ。

 そもそも少短は、冒頭で紹介したように、大手の保険会社が入り込まないような隙間を狙った商品が多い。

 対象とする顧客層を自ら絞り込む中で、狙った層にしっかりとアプローチするためのマーケティング戦略と募集体制を確立しないと、保有契約数が伸びていかず、大数の法則を利かせにくいことで収益がなかなか好転しないという状況に陥りやすい。

 実際にエクセルエイドの決算を見ると、16年度まで最終赤字が続いている状態だ。事業会社の売上高に当たる収入保険料は約2億3000万円だが、赤字が継続していることで、累積損失は約6億5000万円にも上っている。

 少短のそうした厳しい経営実態があらためて浮き彫りになったことで、加速するはずだった業界の成長にブレーキがかかりかねないわけだ。

 さらに痛手なのは、少短業界への規制緩和が、今回の事態で消滅しそうなことだ。

 業界はかねて、本則で定められている保険金額の上限引き上げを模索していたが、所管する金融庁は「玉石混交で内部管理に不安がある会社が少なくない。全ての少短が恩恵を受けるような本則の見直しは、到底考えられない」(総務企画局幹部)とのスタンスを貫いてきた経緯がある。

 そうした中で、楽天をはじめ大手企業が相次いで少短業界に参入する動きがあり、本則の見直しに向けて業界としての発言力が増すという期待に胸を膨らませていたところ、内紛や粉飾決算が取り沙汰されるような業者が出てきてしまったわけだ。

 今後もし、エクセルエイドに行政処分が下されるようなことになれば、規制緩和どころか行政による監督強化によって、業界への締め付けが厳しくなる可能性すらありそうだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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